若者の「タイパ志向」に2次元アイドル作品はどう挑むのか 『シャニマス』プロデューサーが明かす戦略
マグミクス / 2024年1月17日 11時30分
■「二次元アイドル」コンテンツを展開するうえで重要なこと
アイドルをはじめとする「推し活」市場が勢いを増しています。矢野経済研究所の調査によると、2021年度の「推し活」市場のトップは「アニメ」が2650億円にのぼり、「アイドル」が1500億円と続いています。
アニメ・ゲームをはじめとするエンタメ業界でも、2次元アイドルコンテンツと呼ばれる「アニメ」と「アイドル」の2要素をかけ合わせた作品が人気です。ゲーム企業を中心に、エンタメ企業各社でこうした2次元アイドル作品を有する動きもあります。
例えば、バンダイナムコグループであれば「アイドルマスター(アイマス)」シリーズや「ラブライブ!」シリーズ。ブシロードグループであれば「BanG Dream!」シリーズ。Cygamesであれば「ウマ娘 プリティーダービー」。セガであれば「プロジェクトセカイ」といった具合です。
『アイドルマスター シャイニーカラーズ(シャニマス)』5周年キービジュアル
こうした2次元アイドル作品の多くはゲームやアニメを中心に展開しています。さらに数多く登場するキャラクターを演じる声優たちによる音楽ライブを積極的に展開することで作品のストーリー展開と楽曲展開を同時に繰り広げ、収益の最大化を図っています。
しかし、競争も激しく、なかには解散してしまったり、事実上サービス・活動を休止してしまったりしている作品もあります。まさに「2次元アイドル戦国時代」とも言えるなか、「アイドルマスター シャイニーカラーズ(シャニマス)」のプロデューサーはどのように見ているのでしょうか。
左から『シャイニーカラーズ』プロデューサーの高山祐介さん、アニメ『アイドルマスター シャイニーカラーズ』プロデューサーの池田ななこさん
アイマスシリーズのスマートフォン向けゲームアプリ最新作『アイドルマスター シャイニーカラーズ Song for Prism(シャニソン)』のプロデューサーを務める高山祐介さんは、2次元アイドル作品を展開するうえで考えねばならない点をこう挙げます。
「2次元アイドル作品をあまり知らない人からすると、どの作品のキャラクターを並べても区別がつきにくいと思います。特定の作品を知っている人でも同様ですから、作品のコンセプトとキャラクターのシルエットで見た人に端的に数秒で印象づけなければなりません」
『アイドルマスター シャイニーカラーズ Song for Prism』
「数あるアイドルコンテンツのなかで、『シャニマス』を見た人にどうやって理解してもらえるか。そしてゲームとアニメなどが連動してファンの人に楽しんでもらい、多くの人にオススメできるような雰囲気を作らないとなりません」(高山さん)
そこで、高山さんは『シャニマス』ならではの特徴をこう挙げます。
「『シャニマス』の特徴として、ふたりから5人のアイドルたちによる固定ユニット制を採用している点です。これにより、ユニット内のアイドル同士の人間関係や、プロデューサー(作品内におけるプレイヤーの呼称)とのドラマをよく描いています。18年にリリースしたenza対応ゲーム『アイドルマスター シャイニーカラーズ』では特にシナリオに力を入れています。シナリオを読むことでアイドルの愛着が増していき、ゲーム体験も没入できる点に注力しています」
高山祐介プロデューサー
『シャニマス』は18年4月からブラウザやアプリで展開されている同名のゲームが元となっています。登場するアイドルの数は28人(24年1月時点)と他の「アイドルマスター(以下アイマス)」シリーズ作品より少なく、その分プレイヤーである「プロデューサー」との人間模様が濃く描かれています。
ゲーム中の明確な目標のひとつとして、「W.I.N.G.(ウィング)」という新人アイドルの祭典での優勝があります。他の「アイマス」シリーズのゲーム作品でも、アイドルたちと二人三脚で目標に向かう姿が描かれていますが、『シャニマス』ではゲームシステムとストーリー、両面から優勝に突き進むアイドルたちと「プロデューサー」とのドラマを熱く描いています。
『アイドルマスター シャイニーカラーズ』
また、『シャニマス』では等身大のアイドルを描く狙いがあり、年齢やパーソナルな設定など、二次元アイドルとしてのキャッチ―さと現実にいるかもしれないというリアリティラインの中間に位置するのではないかと考えています。
■タイパ志向にどう挑む?
『アイドルマスター シャイニーカラーズ Song for Prism』
『シャニマス』では現在5周年を迎えており、新作ゲームのリリースと、TVアニメ化が進んでいます。
ゲームでは、2023年11月14日に『アイドルマスター シャイニーカラーズ Song for Prism』がリリースされました。この作品は「育成シミュレーション&リズムゲーム」として、アイドルたちと触れ合いながらの育成ゲームと、『シャニマス』初の音ゲー要素が特徴です。
アニメでは、24年4月からアニメ『アイドルマスター シャイニーカラーズ』のTV放送を予定しています。これに先立ち、全国の映画館で2023年10月末から3部作に分けて劇場先行上映を実施しています。これまで第1章と第2章の公開が終了しており、24年1月5日から25日まで第3章が先行上映されます。
アニメ『アイドルマスター シャイニーカラーズ』
アニメとゲームの違いについて、『シャニマス』のアニメ(『シャニアニ』)を担当するプロデューサーの池田ななこさんはこう話します。
「アニメとゲームのつくり方は似ているようでかなり違います。ゲームシナリオの場合、アイドルの細かい動きなど、多くの部分をプロデューサーさんが補う要素がありますが、アニメではその大部分を映像で補完して描く形になります。このアニメで補う部分が『何か違う』とプロデューサーの皆さんに思われないよう注意して演出しています」
池田ななこプロデューサー
そして池田さんは、『シャニアニ』の演出の魅力についてこう解説します。
「今作は3DCGアニメーションで制作しているのですが、アイドルの目の虹彩を三重に描いていたり、劇伴は、フィルムスコアリングという特殊な作り方をしています。『シャニアニ』は、静と動で分けると『静』の作品になると思います。『静』の作品は全部見たうえでその雰囲気や細かい描写が判断されるものなので、細かい部分のこだわりを皆さんに感じていただけたら嬉しいですね」
アニメ『アイドルマスター シャイニーカラーズ』第3章
『シャニアニ』ではTV放送に先立ち、先行劇場上映をしています。その狙いを池田さんが明かします。
「劇場で見ていただくことで、視聴者は非日常体験ができます。今の時代、スマホを長時間使わずに、暗い空間の大音量大画面でそこだけに集中する体験はなかなかできません。これがTVや配信だとSNSの確認や他の作業を並行する視聴者も少なくありません。こういった日常から離れた環境で『シャニアニ』を体験して欲しい狙いから先行劇場上映しています」
アニメ視聴と同時に複数の作業をこなすように、効率良くコンテンツを吸収しようとするユーザーの動きは「タイムパフォーマンス(タイパ)志向」とも呼ばれ、若者を中心に増えてきていると言われています。高山さんによると、「タイパ志向」はゲームにも現れていると打ち明けます。
「ゲームをプレイしている方の中でも『タイパ志向』は根付いてきていると思います。ですから開発側としても、例えばユーザーが辿(たど)り着きたい画面にすぐ到達できるようにしたり、イベント冒頭のストーリー部分など、今は興味ない部分はスキップできて早くゲームをプレイできるようにしたりなどの工夫をしています」
『アイドルマスター シャイニーカラーズ Song for Prism』
そして高山さんは、「タイパ志向」の背景についてこう話します。
「『タイパ志向』は、大量にコンテンツが世の中にあふれるなかで、短い時間で好きか嫌いかの判断をしていかないと、自分の好きなものに辿(たど)り着けないことが背景にあると考えています。ですので我々としても、数秒間で端的に心を掴むキャッチフレーズや、埋もれないビジュアルをゲーム開発するうえで重視しています」
最後に、ユーザーに「してはならないこと」についてどう捉えているのでしょうか。
「ゲームは基本無料でプレイできるのですが、お金を払ってプレイして下さる方も多くいらっしゃいます。プロデューサーさんの信頼が何よりですので、こういった方々を裏切る行為はしてはならないですね。他にもマンガやアニメなど、媒体によってアイドルが違わないよう、整合性を取りやすくする描写も大事にしています」(高山さん)
2次元アイドル作品は、いかにファンの期待を裏切らないかが大事だと言えます。これに加え、「タイパ志向」にいかに順応し、工夫して作品をより好きになってもらうか。他の2次元アイドル作品に限らず、SNSやYouTubeなど競合が絶えずいるだけに、その苦労がうかがえます。
THE IDOLM@STER& (C)Bandai Namco Entertainment Inc.
(C)Bandai Namco Entertainment Inc.
(河嶌太郎)
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