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劇場版『ガンダムSEED』公開へ 「宇宙世紀以外は認めない」問題を考える

マグミクス / 2024年1月25日 6時10分

劇場版『ガンダムSEED』公開へ 「宇宙世紀以外は認めない」問題を考える

■ガンダムファンを二分する「認めない」問題

 1979年にテレビ朝日系で放映が始まったSFアニメ『機動戦士ガンダム』は、国内外の多くのファンに愛され続けています。アニメファンだけでなく、ガンプラマニア、ゲーマー、コスプレイヤーなどガンダム愛好家は多岐に及び、もはや「ガンダム」はひとつの文化、産業だと言えるでしょう。

 放映開始から45年という長い歴史があるため、富野由悠季監督が生み出したシリーズ第1作『機動戦士ガンダム』、通称ファーストガンダムを「聖典」のように敬う熱烈なファースト信者もいれば、富野監督以降の『ガンダム』をリアルタイムで観て育った世代もいます。

 2002年~2003年にTBS系で放映された『機動戦士ガンダムSEED』は、「新世紀のファーストガンダム」を謳った意欲作でした。富野監督は制作にはタッチしておらず、『機動戦士ガンダム』や劇場アニメ『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988年)などで使われた「宇宙世紀」ではなく、「コズミック・イラ」という異なる紀元が採用されています。

 2024年1月26日(金)から、福田己津央監督による劇場アニメ『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が公開されます。また、BS12の「日曜アニメ劇場」では『機動戦士ガンダムSEED スペシャルエディション』が連続放映されるなど、『SEED』が再注目を集めています。しかし、富野監督が生み出した世界観であることを示した「宇宙世紀」ではない作品は『ガンダム』とは認めない、という辛辣な声を挙げるファースト信者や富野監督の熱烈なファンもいるようです。

 ガンダムファンを二分する、「宇宙世紀」以外の作品はガンダムとして認めない問題について考えてみたいと思います。

■キャラデザが衝撃的だった『SEED』

 幅広いファン層に支持されている『ガンダム』ですが、一大勢力となっているのは、やはりファーストガンダムと富野監督が生み出した世界観「宇宙世紀」を舞台にした作品群に魅了された世代です。

 戦場のリアルさ、戦争に巻き込まれていく少年少女たちの葛藤を繊細に描く富野監督の演出は画期的でしたし、富野監督作品ではない『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』などの「宇宙世紀」を舞台にしたスピンオフ作品にも、ガンダムの世界が広がっていく面白さがありました。ガンダムとともに人生を過ごしてきた世代でもあります。「認めたくないものだな」など、シャアの名言がつい口から出てしまうのも、この世代の特徴でしょう。

 一方、21世紀初のガンダムシリーズとなった『SEED』は、ファーストガンダムを視聴していない若い世代や女性層をターゲットにした企画でした。『無限のリヴァイアス』(テレビ東京系)などで知られる平井久司氏が、キャラクターデザインを担当しています。タレント・モデルのMattさんをテレビで初めて見たときは衝撃を覚えましたが、『SEED』の主人公であるキラ・ヤマトやアスラン・ザラの目の大きさもインパクトが大でした。ランバ・ラルやドズル・ザビなど、味のあるオッサンたちが活躍したファーストガンダムのキャラクターたちとは大きく異なります。

 ファースト信者は、『SEED』のビジュアル面にまず抵抗を感じたようです。

■「ファーストガンダム」を意図的に踏襲した物語展開

続編の『SEED DESTINY』では、戦乱のなかで家族を失った少年、シン・アスカの視点で物語が展開する。2月4日にBS12で放映予定の『機動戦士ガンダムSEED DESTINY スペシャルエディション 砕かれた世界 HDリマスター』より (C)創通・サンライズ

 新しいファン層の開拓を前提に企画された『SEED』ですが、内容もライトかというと決してそうではありません。遺伝子操作で生まれてきた「コーディネイター」と従来の人類である「ナチュラル」との間で抗争が激化。中立国で平和に暮らしていたキラたちも、戦争に巻き込まれてしまいます。

 物語設定は、意図的にファーストガンダムを踏襲した形となっており、ファーストガンダムと同様に悲惨な戦いが繰り広げられます。キラの仲間たちは次々と戦火の犠牲となり、キラは幼なじみのアスラン・ザラとも戦うことになります。

 島国である日本で暮らしていると、人種問題などに直面する機会がなかなかありませんが、『SEED』では同じ人間同士が「ナチュラル」か「コーディネイター」かで憎み合い、報復の連鎖が続くことになります。人種問題、民族紛争を分かりやすく取り入れた物語となっています。2001年9月11日に起きた「NY同時多発テロ」をはじめとする、混迷する世界情勢に向き合った作品でもありました。

 さらに2004年~2005年にTBS系で放映された続編『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』では、『SEED』の主人公・キラと敵対するザフト軍に所属するシン・アスカが新しい主人公となり、シンの視点から物語が進んでいきます。対立する双方の立場から戦争を描いた構成は、評価すべきところでしょう。

 ただ、『SEED』の初期設定だけを聞くとファーストガンダムを安易にトレースしたように感じられるため、その点も反感を買いやすかったようです。

■富野監督の「SEEDは嫌いです」発言

 富野監督作品や「宇宙世紀」という世界観を愛するファンが、「宇宙世紀以外の作品はガンダムとは認めない」と主張する要因のひとつに、富野監督の「はっきり言います。SEEDは嫌いです」という発言があります。しかし、富野監督は自身の作品に対する評価も厳しく、ファーストガンダムの続編『機動戦士Zガンダム』(テレビ朝日系)は劇場版三部作としてつくり直しています。富野監督の言葉は、そのまま鵜呑みすることはできません。本当に嫌いだったら、完全に無視するのが人間です。

 もちろん、新しいキャラクターと別の世界観の物語をつくるのなら、「ガンダム」と名乗らずにオリジナル作品として制作すればいいじゃないかという声もあるわけですが、それはクリエイター側の問題というよりも、「ガンダム」という名前から離れられない制作会社「サンライズ」側の事情があるようです。「ガンダム」という名前が、あまりにも大きくなり過ぎたのかもしれません。

 ファーストガンダムをはじめとする「宇宙世紀」では、ニュータイプとオールドタイプとの闘いが描かれました。同じように『SEED』では、コーディネイターとナチュラルとが終わりなき抗争を続けています。ガンダムのファンが「宇宙世紀」の支持派とそうでない派とに分断されている状況も、皮肉めいたものを感じてしまいます。

 どうすれば人類は争いをやめることができるのかが、『SEED』の大きなテーマとなっています。劇場版『SEED』が、どんな回答を用意しているのか気になるところです。

(長野辰次)

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