「品切れです」「入荷未定」初代ファミコンの思い出は宝物。家にやって来た日の喜び
マグミクス / 2019年12月22日 16時40分
■どこに行っても売っていなかった「ファミコン」
1983年に任天堂から発売された「ファミコン」こと「ファミリーコンピュータ」は、日本国内で1935万台、世界全体では6000万台以上を売り上げ、家庭用ゲーム機の代名詞となりました。子供時代、ファミコンに熱中したライターの早川清一朗さんが、当時の記憶を語ります。
* * *
「売り切れちゃったんですよ」
「次いつ入荷するか分からないんです」
「入荷してもすぐ売れちゃうんです」
母親と一緒に「ファミコン」を探しているときに、おもちゃ屋さんの店員に言われたのは、大体この3つだったような気がします。
「ファミコン」は、当時の家庭用ゲーム機としては破格の高性能と1万4800円という手ごろな価格、カセットを入れ替えるだけで多くのタイトルを遊べる多様性などさまざまな理由から爆発的な人気となりました。
筆者が初めて「ファミコン」に触れたのは、おそらく1984年。小学生時代の友達の家でした。確かタイトルは『ベースボール』だったと思います。当時の筆者にとって、ゲームはデパートのゲームコーナーや駄菓子店でプレイするものでした。家のTVでさまざまなゲームをプレイできるというのは衝撃的な出来事だったのです。
「ファミコン」を体験した筆者は、それからというもの、ひたすら母親におねだりを続けました。TVで「ファミコン」のCMが流れるたびに「買って買って!」と言い続け、ついに根負けした母親と一緒におもちゃ屋さんに向かった筆者が手に入れたのは……。
SEGAの家庭用ゲーム機「SG-1000II」でした。
本当に、どこに行っても「ファミコン」は品切れだったのです。疲れ切った筆者と母親は、「ファミコンと似たようなのがありますよ」と言うおもちゃ屋の店員の言葉を聞き「もう、これでいいか」と「SG-1000II」を購入して妥協しました。
これはこれで結構楽しませてもらったのですが、やはり「ファミコン」でないと友達との会話にはついていけません。再び「ファミコン」探しを開始した筆者は新聞のチラシを丹念に調べ続け、ついにある店が「ファミコン」を販売する日を突き止めたのです。
その日の朝、倉庫を転用したと思われる雑貨店のシャッターの前には、大勢の小学生とその保護者が行列を作っていました。筆者も母親と一緒に並び、どうにかこうにか「ファミコン」を買ってもらったときのうれしさは、35年が経った今でもよく覚えています。
■楽しい思い出をありがとう「ファミコン」
カセットのひとつひとつが子供たちの宝物だった(画像:写真AC)
最初に買ってもらったカセットはハドソンの『ナッツ&ミルク』でした。次に『ギャラクシアン』、その次が『ゼビウス』……その後はどういう順番でカセットを買ったのか記憶にありませんが、この3本だけははっきりと覚えています。
いずれのカセットも、滅茶苦茶にやりこみました。やりこみと言っても今のように攻略サイトはありません。それどころかファミコン専門誌もまだ姿を見せておらず、もちろん攻略本も存在しない時期だったので、ただひたすらに遊ぶだけでした。当時の小学生にとってはそれが当たり前で、それで十分だったのです。とはいえ遊びすぎて、いったい何度親に叱られたり、「ファミコン」を隠されたりしたのかは覚えていません。
結局いくつのタイトルを遊んだのか数えたことすらありませんが、最初の頃は先に書いた3本のほかに、友達から借りて『バルーンファイト』や『マリオブラザーズ』、『ロードランナー』をよく遊んでいたのを覚えています。
1980年代後半には「PCエンジン」や「メガドライブ」など高性能な家庭用ゲーム機が発売されましたが、「ファミコン」は家庭用ゲーム機の王者として君臨し続けていました。後継機「スーパーファミコン」が発売された1990年のタイトルを見ても『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』や『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』など名作がずらりと顔をそろえています。
それでも1990年代半ばには卓越した性能を持つゲーム機の登場により、「ファミコン」の時代は終わりを迎えました。筆者が買ってもらった「ファミコン」もすっかり黄ばんでしまい、TVとの接続部の同軸ケーブルも銅線がほとんど残っていない状態でした。最後に遊んだタイトルは『ファイアーエムブレム外伝』と『メタルスレイダーグローリー』のどちらかだったと思います。
あの頃、ただ夢中でゲームをプレイし続けた時間は筆者の宝物です。本当に楽しい思い出をありがとう「ファミコン」。
(早川清一朗)
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