放送開始からもう20年? 『ふたりはプリキュア』後、シリーズ化までの試練とは
マグミクス / 2024年2月1日 7時10分
![放送開始からもう20年? 『ふたりはプリキュア』後、シリーズ化までの試練とは](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_209626_0-small.jpg)
■思わぬトラブルがプリキュア誕生のきっかけだった
本日2月1日はTVアニメ『ふたりはプリキュア』が、20年前の2004年に放送開始した日です。現在まで続く「プリキュアシリーズ」の第1作である本作が、いかにして現在のようなコンテンツにまで大きくなっていったかを振り返ってみましょう。
本作は前番組『明日のナージャ』の不振から急遽、制作が決まった作品でした。『明日のナージャ』は、本来なら2年目を予定して製作されていたのです。しかし、思った以上に関連商品のセールスが不振だったことで、『明日のナージャ』は1年目で終了が決まり、その穴埋めとなる別の作品が必要となりました。
この窮地を任されたのが、後に「プリキュアの父」と呼ばれることになる鷲尾天さんです。しかし、報道関係から転職した鷲尾さんにとって、女児向け作品は未知の領域でした。ところが、この状況で鷲尾さんは失敗を恐れず、あえて自分の得意分野を生かして作品に取り込む決意をしたそうです。
その結果、アクション重視のバトルものの要素、刑事ドラマによくあるバディものの要素を女児向けアニメに組み合わせました。その結果、「女の子だって暴れたい」というキャッチコピーの本作『ふたりはプリキュア』が生まれたというわけです。
最悪、半年で打ち切られることも念頭に入れて2クールで終了できるプロットでスタートした本作でしたが、その危惧は杞憂に終わりました。なぜなら関連玩具の売り上げが早い段階から好調で、その勢いはこの時間枠で好評を得ていた前々作『おジャ魔女どれみ』を超える勢いだったからです。
結果的に本作の収益は、100億円を超えました。一般的に女児玩具は「50億円売れれば大成功」と言われていましたから、それをダブルスコアで上回る好成績だったわけです。
こうして本来は穴埋め番組として企画された本作でしたが、これだけの高評価を得たことで2年目へのシーズンに突入することになりました。続けて製作された第2作『ふたりはプリキュアMaxHeart』は前作を超える人気を得て、123億円の売り上げ成績を記録することになります。
こうなると次回作も期待されるわけですが、ここでの出来事が大きくその後の展開に影響を与えることになりました。それはプリキュアがシリーズとなって、現在のような一大コンテンツになるためには必要な「通過儀礼」だったのかもしれません。
■偶然が必然となった奇跡的展開がシリーズ化を支えた
3代目『ふたりはプリキュアSplash☆Star』DVD-BOX vol.1(ポニーキャニオン)
シリーズ3作目『ふたりはプリキュア Splash Star』(以下、『SS』)でも特筆する点は、プリキュアの名前を冠しながらも、キャラクターを一新したことです。これには、内部からも反対意見がありました。女児向け作品では異例だったからです。
これには大きな理由がありました。鷲尾さんと一緒にプリキュアを支えてきた、シリーズディレクター・西尾大介さんの降板が決まっていたのです。2年の激務で疲労困憊していたからでした。鷲尾さんとしては西尾さんが降板するのに、従来のキャラクターを使うわけにはいかないという気持ちがあったそうです。
しかし、このことが結果的にプリキュアを一大コンテンツにまで推し進めた要因となりました。「レギュラー交代」という、シリーズの延長化にもっとも必要な要素が生まれたからです。
それは女児向け作品でシリーズ化した『美少女戦士セーラームーン』や、『おジャ魔女どれみ』でも成し遂げられなかったことでした。ともに世代交代を念頭に妹分キャラを出して、ソフトランディングも視野に入れていましたが、結果的に見送っています。
これには同じく東映アニメーションで制作した『ドラゴンボールZ』が、孫悟飯への世代交代に失敗したことの影響があるかもしれません。先代主人公の影がちらつく続編は、どうしても扱いが難しくなるものです。
そう考えると、キャラクターを一新してシリーズを存続させたのは、大英断だったと言えるかもしれません。思えば、同じニチアサ枠の仮面ライダーシリーズやスーパー戦隊シリーズも、そうやってシリーズを存続していったことが分かります。
もっとも、それは歴史を振り返ってみてのことです。当時の『SS』は販売実績が60億円にまで落ち込み、2年予定の作品となるはずが1年で終了という崖っぷちに追い詰められてしまいました。
そこで4年目はプリキュア以外の作品という展開が考えられましたが、2年目の中止が急きょ決まったことで、次回作のためのスタッフを招集する余裕がなかったそうです。そして、『SS』のスタッフがそのままスライド、時間的な余裕がないことからノウハウを流用できるプリキュアの新作が奇跡的に決まりました。
こうして第4作『Yes!プリキュア5』の企画がスタートします。ここでグループのプリキュア、イケメン男性の登場、恋愛要素など、これまでになかった要素を加えることで、新たなシリーズを構築しました。
この試みが見事成功し、販売実績は105億とV字回復します。この人気を受けて、シリーズはレギュラーを変更しない第5作『Yes!プリキュア5GoGo!』へと変わりました。この作品も105億のセールスとなって、プリキュアのシリーズ化に貢献します。
しかし、結果的にレギュラー総入れ替えで世代交代したはずのプリキュアは、もとの形に退化したと言えるでしょう。これには鷲尾さんも危惧を抱いたそうです。そのため、自身は『5GoGo』を最後にし、他の方にプリキュアシリーズを任せる決断をしました。
その結果、『5』の第3期も検討されましたが、まったく新作のプリキュアを企画することが決まったそうです。こうして第6作『フレッシュプリキュア!』からは、2期に続くことなく1年で完結する今の方向性に定まりました。
この結果、「プリキュア」は女児向けシリーズとしては20年以上にわたる異例のロングランとなり、一大コンテンツとして不動の地位を築くに至ります。これからも末永く続くシリーズになっていくことでしょう。
(加々美利治)
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