TVシリーズを見ていない人のための『ガンダムSEED』入門 21世紀の「伝説」になる可能性も?
マグミクス / 2024年1月26日 7時10分
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■コンセプトは「21世紀のファーストガンダム」
2006年の発表以降、制作中とアナウンスされていたものの続報がなく、「幻の作品」のような扱いであった劇場版『機動戦士ガンダムSEED』がついに上映されます。正式タイトルは『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』。2024年1月26日(金)に公開が迫り、ガンダムファンがさまざまな話題で盛り上がるなか、放送当時『SEED』を観ていなかった世代、特に『機動戦士ガンダム』以来のファン層や、『SEED』放送時はガンダムに触れていなかった若い層のなかには、一抹の寂しさを覚えている人もいるでしょう。
今回はそうした「リアルタイム世代ではない」人びとに向けて、『ガンダムSEED』の位置づけと魅力を紹介します。
まずは「SEED」シリーズの基盤となるアニメ『機動戦士ガンダムSEED』をおさらいしましょう。同作は2002年10月5日から2003年9月27日にかけて放送された全50話のTVシリーズです。舞台は、遺伝子調整された人類「コーディネイター」と、これまでの人類「ナチュラル」が、「ザフト」と「地球連合軍」それぞれの勢力に分かれて戦いを繰り広げる「C.E.(コズミック・イラ)」という時代。コーディネーターの学生であるキラ・ヤマトが暮らす中立コロニー「ヘリオポリス」にザフトが侵攻したことから、物語が始まります。
同作のコンセプトは福田己津央監督によると「21世紀のファーストガンダム」だそうですが、「戦争に巻き込まれた特殊な力を持つ若者の物語」という側面だけでなく、特に前半は「主人公が暮らすコロニーが攻撃され、みんなで地球まで逃げて砂漠でおじさんキャラクターと出会って……」という風に、物語の展開や要素までもが『機動戦士ガンダム』を踏襲しています。
そのため、『機動戦士ガンダム』世代には見やすく(後半はオリジナリティの強い展開となり、その違いも楽しめます)、若い世代には『ガンダム』のスタンダードを知ることができる内容となっています。
また『機動戦士Zガンダム』と『機動戦士ガンダムZZ』以来、久しぶりのTVシリーズ続編となった『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』では、主人公がキラではなくシン・アスカに変わりますが(その実態については長くなるためここでは置いておきます)、そちらではザクやグフ、ドムといった『機動戦士ガンダム』の敵モビルスーツが登場するという直接的なオマージュもありました。
また『SEED DESTINY』以外にも、OVAやマンガ、小説などで同時代を舞台にした作品が多数展開されることによって世界観に厚みが増していることも、『機動戦士ガンダム』の宇宙世紀と共通している点です。
■メカ、キャラクター、主題歌の「全て」で人気が加熱
劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』メカビジュアル (C)創通・サンライズ
作品内外の展開に加え、『SEED』はモビルスーツという側面でもファンを魅了しました。メインキャラクターの多くがガンダムタイプに搭乗するという形は『機動武闘伝Gガンダム』以降の流れの通りですが、『SEED』では作品人気にプラモデルのクオリティ向上が合わさり、劇場版『機動戦士ガンダム』3部作以来の「第二次ガンプラブーム」と呼ばれるほどの盛り上がりを見せました。
リアルタイム世代には、キャラクター人気の高さも印象に残っているでしょう。のちに『蒼穹のファフナー』や『マジェスティックプリンス』などのシリーズも手がける平井久司さんがデザインし、当時一線級の声優たちが演じたキャラクターは、女性を中心に支持を集め、アニメ雑誌の人気キャラクターランキングでは長く上位にランクインし続けました。
その人気はドラマの中心であり続けたキラと、その親友でありライバルであるアスラン・ザラを筆頭に、イザーク・ジュールやシャニ・アンドラスといったキャラクターにも及びます。
また『ガンダム』に限らず、アニメ史においても『SEED』は重要な作品です。西川貴教さんの「INVOKE -インヴォーク-」をはじめ、1クールごとに主題歌(おもにオープニング)が変更されるという、近年のアニメでは当たり前になった手法を定着させたのは本作です。
なおガンダムシリーズは一般アーティストの主題歌起用を初期から行っていましたが、その代表例であるTM NETWORKの小室哲哉さんが『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の主題歌で西川さんとコラボするというのは粋な計らいです。
こうした要因に加え、2002年の放送当時は一般層にもインターネットが加速度的に普及し、多くの人びとが意見を表出できる場ができたという状況もあり、『SEED』というムーブメントはさらに加熱していったのです。このブームを体感した世代も20年以上の時を経て今ではすっかり大人になりました。そんなタイミングで「幻の続編」が公開されるとなれば、盛り上がるのも必至でしょう。
■名実ともに「21世紀の『機動戦士ガンダム』」となれるか
「SEED」シリーズは、ナチュラルとコーディネーターによる争いの火種が絶えることなく終了していました。『00』や『AGE』などの後続作品に比べるとそれは不自然なほどで、ほかにも人類初のコーディネーターであるジョージ・グレンや、彼が木星から持ち帰った化石(羽クジラ)、そして劇中では(宇宙世紀シリーズにおける「ニュータイプ」ほど)深く掘り下げられていない能力「S.E.E.D.」など、伏線として「美味しい」要素も残されています。
『SEED』本編が意図的に『機動戦士ガンダム』を踏襲しているのは先述した通りです。そして、これまであまり掘り下げられていなかった伏線を昇華しつつ物語を見事に完結できれば、新作は『逆襲のシャア』にあたるような作品となる可能性も……? そうなれば、すでに実績十分の『SEED』が、名実ともに21世紀の新たな『ガンダム』伝説となるかもしれません。
(ショコラ・バニラ)
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