1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. IT
  4. ゲーム

「パクリ」はどこからが問題になる? ゲーム業界における「創作の自由性」と「知的財産」のあり方

マグミクス / 2024年1月31日 7時10分

「パクリ」はどこからが問題になる? ゲーム業界における「創作の自由性」と「知的財産」のあり方

■「パクリ疑惑」は、提訴に発展する場合も

 先日、『パルワールド』というゲームがリリースされ、1週間足らずで売り上げ本数が800万本を突破しました。直近でも稀に見るほどの好スタートを切り、本作をプレイするユーザーの声をオンライン上の至るところで見かけます。

 これだけ多くの人の目に触れると、当然さまざまな意見が飛び交います。そのなかには、既存の作品と類似していると指摘し、「パクリなのでは?」と述べる人もいました。

 いわゆる「パクリ疑惑」について指摘する声が上がるのは、さほど珍しい話ではありません。カテゴリーを問わず創作にはつきものの問題で、マンガや小説といった娯楽に留まらず、建造物にロゴといった意匠などにも及びます。

 ゲームの「パクリ疑惑」が話題となりやすいのは、触れる人が多い人気カテゴリーなのも理由のひとつですが、没入感が高いため、他作品との類似性を感じ取りやすい面もあるのでしょう。

 パクリといっても人によって受け取り方が変わりますが、盗用や限度を超えた模倣は大きな問題になります。一方で、似ていると感じる人が多くても、問題にならないケースも存在します。

●「パクリ疑惑」が一線を超えると「提訴」へ
 どこからが「パクリ」で問題となるのか。境界線の見極めは難しく、基準は同じでも、ケースによって判断すべきポイントが変化することもあります。その線引きに最終的な判断を下すのは、司法の役目です。

 権利の上で問題となる(可能性がある)場合、知的財産を持つ権利者が提訴し、被告側と争い裁判を通して決着をつけます。また、提訴された段階、もしくは審議の途中で和解することもありますが、いずれにせよ問題の解消を迎えます。

 一例ですが、知的財産権に関わる訴訟としては、『PUBG: BATTLEGROUNDS』との類似性が多いとして『荒野行動』が疑問視されたり、『白猫プロジェクト』の操作システムが任天堂の特許に抵触している恐れがあるとして、それぞれ大きく注目されました。

「パクリ疑惑」が権利関係にまで及ぶと権利者が判断し、関係者と司法がそれを詳(つまび)らかにする。こうした状況に進展した場合、消費者を含めた第三者は静観し、判決や和解の結果を待つばかりです。

 事情は個々で異なりますし、和解の内容が明かされないケースもありますが、司法が下す判決や和解での決着は「パクリ疑惑」についてある種の答えが出るため、消費者にとって最も分かりやすい展開とも言えるでしょう。

■権利問題だけでは済まない、ユーザーの心理

初代『モンスターハンター』から続くこのシリーズは、総販売本数が9500万本に。新たなジャンルを切り開くとともに、今も最前線で活躍する(カプコン)

●「ジャンル」は比較的問題になりにくい
 権利関係に関わる「パクリ疑惑」は、その真偽も含め、示談や提訴によって決着がつきます。ですが、そうした「法的な判断と結論」には至らない、いわゆる「グレーゾーン」な問題も少なからずあります。

 ユーザーレベルの話題でよく上がるのは、ゲーム性の模倣です。例えば、ハンティングアクションの祖と言われている『モンスターハンター』がヒットすると、ゲーム開始直後からボス級の敵と対峙し、広大なフィールドを行き交いながら戦うようなゲームがいくつも登場しました。これを指して、一部のユーザーが「パクリでは?」と指摘することもあります。

 ですがゲーム業界では、作品の構造などが細かく類似していない限り、システムやジャンルが似通っていても、問題視するよりは許容される場合がほとんど。というのも、素晴らしい作品の魅力を理解し、その要素を昇華させた新たな作品が登場することで、そのジャンルが発展してきたためです。

 例えば、「死ぬと貯めていた経験値兼通貨を全て失うが、次のプレイに限り回収できる可能性がある」というデスペナルティは、今や多くの作品に採用されており、この点だけを抜き出して「パクリだ」と指摘する人はほとんどいません。

 このほかにも、『ポケモン』の大ヒットに影響され、モンスターを仲間にするゲームがいくつも後に続きましたが、その要素に独自の魅力を備えたものだけが評価されました。この自然淘汰こそが、安易な模倣と昇華した作品の違いでしょう。

 ちなみに『ポケモン』も、「モンスターを仲間にするゲーム」の元祖ではありません。『ポケモン』もまた、その要素を昇華して進化させたからこそ、ヒット作となったのです。

●受け手の感情にも影響し、敏感になりがちな「デザイン」の類似
 ジャンルやシステムは(程度こそあれ)許容されやすい一方、ユーザー同士でも意見が分かれるのが「デザインの模倣」です。デザインも模倣を通して磨かれる側面はありますが、キャラクターにグラフィック、UIなどのデザインで独自性を出すには、努力やセンスが欠かせません。しかし、視覚的なものは比較的真似をしやすいので、質を求めないのであれば、本来ならば苦労する過程を「パクリ」である程度簡略化できます。

 デザイン性は、クリエイター個人、もしくは開発チームが築き上げたもの。時間と労力をかけて切磋琢磨したそれは、個人やその作品の「個性」と言い換えてもいいほどです。だからこそ、ただ模倣しただけに見える安易なデザインを目の当たりにした時、許容できずに「パクリでは?」と感じてしまいがちです。

 安易な模倣によるデザインは、受け手の感情をマイナス方向に傾けやすく、ストレートに「不愉快」「カンに触る」といった感情を呼び起こします。プレイ体験にも大きく影響するため、模倣に敏感になるのも無理のない話です。同時に、感情・感覚の話になるので、線引きがことさら難しくなります。

* * *

 何でもかんでも「パクリ」と断じるのは、創作の自由性にも影響しかねません。誰かが生み出したゲームシステムが「ジャンル」となって定着することもあり、それが共有の財産として扱われる場合もあります。

 かといって、どんなものであっても認め、異論を全て否定するのも行き過ぎでしょう。ゲーム性であれデザインであれ、安易な模倣はやはり問題です。線引きが難しいからこそ、一度立ち止まって考える行為は受け手としても心がけておきたいもの。

 意見の異なる相手をねじ伏せるのではなく、「なぜ自分がそう感じるのか」を言語化し、「意見が違う人はどんな考えなのか」と聞く耳を持ち、何が問題なのかと意見を交換することが、「安易なパクリ」を生み出しにくくする土壌となることでしょう。もちろん、その時に暴言を吐いたり、誹謗中傷をするのは論外です。

(臥待)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください