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『北斗の拳』修羅の国で明かされた漢たちの血脈を整理 なぜ「血」は必要とされたのか

マグミクス / 2024年2月20日 7時10分

『北斗の拳』修羅の国で明かされた漢たちの血脈を整理 なぜ「血」は必要とされたのか

■「あのラオウに兄がいた」という衝撃の展開

『北斗の拳』にて、「天帝編」の後に始まった「修羅の国編」では、北斗神拳の真実と継承者の血脈が新たなテーマになりました。気になるのは複雑に絡み合った北斗の漢(おとこ)たちの関係性です。以下、強大な力を秘めた拳法の「継承」と「血脈」について考えてみました。

●「北斗神拳を生み出した方」の北斗宗家の血は特別

 一子相伝の暗殺拳である北斗神拳には、原型となる拳法があります。それが「北斗宗家の拳」です。2000年前、北斗宗家は男児に恵まれず、その血を引くのは「オウカ」と「シュメ」の姉妹のみでした。しかし皮肉なことに、ふたりは同じ日にふたりの男児を産み落とします。それが「リュウオウ」と「シュケン」です。

 北斗宗家の高僧たちは、ふたりの男児を同等に育てるとふたりの覇者による乱世を招くと危惧し、なんと生まれたばかりのリュウオウとシュケンを降天台に置き去り、飢えた狼に晒すこととしました。生き残った赤子を継承者にするためです。

 この試練を告げられた夜、シュメは降天台に行きシュケンだけを連れ去りました。病で余命僅かだったシュメは、我が子だけでも生きていて欲しかったのです。置き去りにされた姉オウカの息子リュウオウは狼に襲われますが、この動きを知った高僧たちによって守られました。

 シュメが我が子を思う気持ちを知ったオウカは高僧たちに「伝承者を妹の息子であるシュケンに譲る」と命をかけた願いを告げ、崖から身を投じました。こうしてシュケンはシュメとオウカというふたりの母の深い愛を背負って北斗宗家を継承し、北斗神拳を生み出したのです。その北斗神拳創始者シュケンの血を引くのが、「ケンシロウ」とその実兄である「ヒョウ」です。

ケンシロウの実兄であるヒョウもご覧のとおり、それが修羅の国。第179話「もどりこぬ愛!!の巻」より

 身を投げたオウカの息子であるリュウオウの、その後については語られていません。しかし「母に捨てられしリュウオウの子孫は愛を失い愛に彷徨しよう 誰かが愛を説かねばならぬ それが北斗神拳伝承者の宿命と知れ」という言葉がケンシロウに伝わっており、作中では間接的に「カイオウ」がリュウオウの血を継ぐものであると示唆されています。つまりカイオウの実弟である「ラオウ」や「トキ」もまた、本来的には決して北斗神拳伝承者に選ばれることのないリュウオウの子孫なのです。

 元をたどれば、リュウオウとその子孫もシュケンと同じ北斗の血族ですが、北斗七星に仕え、北斗七星のために死す惑星としての役割を担う格下の立場に置かれています。いくら実力があっても従者であり、屑星に過ぎないとまでいわれるほどです。この血の宿命による歪みが、カイオウを憎悪の塊へと育ててしまいました。

■血の設定が必要な理由は「ラオウ」のせいだ…?

北斗宗家の血に反応し「魔闘気」が噴出するカイオウ。第183話「伝説の血脈!!の巻」より

●なぜこんな「血」の設定が必要だったのか

 メタ的な観点から血の設定を見ると、その原因はあまりにも大きなラオウの存在感にあると思われます。天帝編のラスボスである「ファルコ」は、天帝を人質に取られて戦いを強いられていたため、明らかにラオウよりもスケールの小さなライバルでした。天帝編はケンシロウよりも「バット」や「リン」「アイン」に存在感があり、彼らのためのエピソードだったようにも思えます。

 修羅の国編では再びケンシロウが主人公になるものの、死闘を繰り広げる相手がラオウよりも格下では物語が陳腐化してしまいます。そこで登場したのがラオウによく似た実兄、北斗宗家(北斗神拳伝承者)の血を憎悪するカイオウです。

「世紀末覇者」を自称するラオウに対し、カイオウは「新世紀創造主」を名乗り、黒王号を思わせる巨馬に騎乗します。カイオウは愛を否定し、血に刻まれた悪と憎悪をパワーの源とする「北斗琉拳」をもって、北斗神拳に対抗します。

 オウカはリュウオウがいたにも関わらず、妹の息子シュケンを継承者に指名してその身を投げました。カイオウの母もまた、北斗宗家の血を引くヒョウやケンシロウを助けるため火災の中に飛び込み、命を落としました。リュウオウの血統では母を失う苦しみ、愛を失う苦しみが繰り返されるのです。この苦しみに対抗するため、愛を否定し悪と憎悪の力で残酷な世界に立ち向かうのがカイオウです。愛を失う苦しみから愛の無価値を証明しようとしたサウザーと似ていますね。

やらかした感がどうしても拭えない、修羅の国編キーパーソンのひとり、ジュウケイ。第180話「死風さかまく!の巻」より

●ラオウには勝てないカイオウ

 相手が北斗宗家(シュケン)の血を引くケンシロウだったから、血に潜む憎悪パワーで戦えたカイオウですが、実弟ラオウには勝てそうにありません。リュウオウの血統だからというだけでなく、いつも一緒にいて、母を失った時、埋葬した時にも苦しみを共有したからです。

 カイオウはラオウに対し、ギリシャ哲学でいうところの血縁の情愛「ストルゲー」を抱いています。家族愛や兄弟愛は、男女間の性愛である「エロス」や友人愛の「フィリア」よりも原初的な愛のあり方だと言われています。つまりカイオウは本質的に、北斗琉拳の力の源である「憎悪」を、ラオウに対しては意図しない限り抱けないのです。

 血の設定により、カイオウは強さのインフレを避け、ラオウの格を一切落とすことなく、ケンシロウにとって強大な敵であることに成功しました。時間軸を過去に遡ることによって設定されたシュケンとリュウオウにまつわるエピソードは大成功したといえるでしょう。

 そういえば、原作では幼少期の「ジャギ」について全く語られていません。ジャギは修羅の国出身ではないようですし、北斗宗家とも関係なさそうです。もしジャギが一般人だったとしたら、北斗神拳の修行に耐えられる最強クラスの素質を持っていたと思われますが、最初から継承者レースで勝つ見込みはなかったのかも。

* * *

 2024年2月20日(火)、『北斗の拳』40周年を記念しコアミックスより刊行が開始されたコミックス『新装版』の、第13巻と第14巻が発売されました。毎月20日に2冊ずつ発売される予定で、各巻の収録話は10年前に刊行された「究極版」と同じです。

 またコアミックスのマンガ配信サイト「WEBゼノン編集部」の『金曜ドラマ 北斗の拳』にて、その刊行にあわせ、羅将「ハン」との決着、そして修羅の国における「ラオウ伝説」と北斗三兄弟の過去が語られる第176話「ラオウ伝説走る!の巻」と第177話「燃えさかる宿命!の巻」を、2024年2月20日(火)0時から同年3月4日(月)23時59分までの期間、無料で公開しています。

(C)武論尊・原哲夫/コアミックス 1983

(レトロ@長谷部 耕平)

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