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トラブル生じやすい「原作改変」問題 アニメ業界で起こっている「大きな変化」とは?

マグミクス / 2024年2月1日 21時10分

トラブル生じやすい「原作改変」問題 アニメ業界で起こっている「大きな変化」とは?

■アニメ化で「原作改変」は当たり前だった?

 2024年1月29日、『セクシー田中さん』ドラマ化の際の脚本トラブルの果てに、原作者である芦原妃名子先生が亡くなりました。あってはならない出来事でした。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

 小説やマンガを原作とした映像作品が作られる時に、たびたび「原作改変」が議論になりますが、「アニメ化」に限っていえば、かつては大幅に原作の内容が改変されるのが当たり前でした。しかし15年ほど前から、「原作に忠実なアニメ」が増えてきています。当時、現場の片隅にいた筆者の視点から、何があったのかを書いてみたいと思います。

 原作を映像化する際に、内容が改変されることは珍しくありません。大きな理由としては媒体ごとに表現技法が異なる点があります。小説はテキストと挿絵、マンガは絵とセリフと擬音で構成されているのに対し、映像はセリフと映像で作られているからです。

 なお、それぞれが得意とするジャンルは異なっており、一例を挙げると10万人の大軍を表現するとき、小説なら「10万の大軍が編成された」でいいのですが、これをマンガの絵にするのはとてつもない手間がかかります。アニメで表現するのは不可能に近いといえるでしょう。映画であればエキストラや衣装などを集める、あるいは3DCGで描くという手段がありますが、いずれも大規模なプロジェクトとなります。簡単な話ではありません。

 また、物理的な理由のほかに、監督や脚本家は基本的にクリエイターであり、自分が作りたい物語を持っているものです。しかし近年はオリジナルの企画が通りにくく、メディアミックスによる原作作品の映像化がメインとなっています。そこで「原作つき」で企画を通し、監督や脚本家が原作サイドの意向と異なる改変を行う事例は、ドラマだけでなくアニメでも当たり前のように行われてきました。

 アニメ化の際に要望を無視された複数の原作者から話を聞いたことがありますが、みな一様に「アニメは一度も見たことがない」「アニメ化作家と呼ばれたくない」と、静かな怒りをため込んでいました。自分の子供のような作品を他人に勝手にいじられるのですから、たまったものではないのでしょう。

■アニメはなぜ「原作重視」の流れになったのか?

アニメ『鬼滅の刃』は、原作の内容に忠実であると同時に、アニメならではの魅力も上乗せされ、大多数の支持を集めている。画像は2024年2月2日に公開される『ワールドツアー上映「鬼滅の刃」絆の奇跡、そして柱稽古へ』 (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 そんな時代もありましたが、近年のアニメは「原作重視」の流れが強くなっています。いつこの流れが始まったのかといえば、おおよそ2000年代後半となります。それ以前にも『マスター・キートン』や『蟲師』、『ブラックラグーン』など原作を重視する作品は存在していましたが、大きな流れとはなりませんでした。

 流れを作り出した作品は、OAD(コミック限定版ディスク)として製作された『魔法先生ネギま!』です。赤松健先生原作の『魔法先生ネギま!』は2回のTVアニメ化を果たしましたが、どちらも原作とは異なる展開で、ファンからは原作そのままの「ネギま!」が見たいという要望がたびたび出てきていました。

 原作そのままでやりたいと考えた際に、困るのが脚本家選びです。脚本家がクリエイティビティを発揮しようとして原作を改変し、〆切ギリギリまで提出を拒むようなことがあれば、思ったようには作れません。そこで選ばれたのが書籍の編集者でした。文章の扱いに慣れた編集者に脚本の作り方を学ばせ、脚本家として起用したのです。原作をもとに脚本を作るのは脚本家ではなく「脚色家」という職業になり、アメリカでは別の職業として考えられていますが、日本では特に分化されてはいません。

 このやり方は成功をおさめ、その後、『化物語』や『ソードアートオンライン』といった作品もほぼ同じやり方を踏襲し、大ヒットを連発しました。こうして「原作に忠実なアニメ」は需要も成功率も高いことが認識され、その後多くの作品が原作を重視した作りになっていったのです。

 もちろんトラブルが発生することはあり、原作者がアニメスタッフをないがしろにした結果、紆余曲折の果てにアニメの企画がなくなった……という事例も耳にしています。それでも筆者のゲーム仲間の作家さんたちが近年アニメ化を果たした際には、「文句のつけようもない脚本を出していただいた」「監督とはいつも映画の話をしてる」と、原作サイドと制作サイドが良好な関係を築いている話を聞いています。

 クリエイターとして、お互いに対するリスペクトを忘れない。それだけで、トラブルの大半は回避できるのではないでしょうか。

(早川清一朗)

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