漫画家の「負の感情」が大爆発? 衝撃展開3選 「旅行が最悪で…」「抗議された腹いせ」
マグミクス / 2024年2月4日 18時10分
■学園コメディの最終回がワケあって「皆殺しエンド」に!?
「怒り」や「恨み」といった感情はマイナスなイメージを持たれがちですが、クリエイターにとっては、ときに信じられないほどのエネルギーを与えてくれる起爆剤にもなり得ます。今回は人気漫画家たちが負の感情から生み出した、ショッキングな展開の数々を振り返りましょう。
●『ハレンチ学園』
レジェンド漫画家である永井豪先生の負の感情が爆発した作品といえば、1968年から1972年にかけて発表された出世作『ハレンチ学園』でした。同作は奇妙な教師たちが集まった「聖ハレンチ学園」を舞台に繰り広げられるギャグマンガで、「マンガ史に残る問題作」ともいわれており、さまざまな逸話に事欠きません。
当時の少年マンガとしてはお色気描写が多く、作中に「モーレツごっこ」として登場したスカートめくりが全国の小中学校で大流行を巻き起こしました。そのほかにも過激な描写が多かったことから、全国のPTAや教育委員会から編集部に多くの抗議が寄せられ、しまいには「少年ジャンプ」不買運動が起きたといわれています。
やがて永井先生は自ら打ち切りを決め、『ハレンチ学園』第一部のクライマックスとして描いたのが、ハレンチ学園vs大日本教育センターによる全面戦争、通称「ハレンチ大戦争」でした。あまりにも破廉恥なハレンチ学園の風紀に怒った大日本教育センターの関係者が学園への全面戦争を仕掛け、イキドマリやアユちゃんなどの主要キャラクターたちを次々に殺害していくのです。
そしてラストはハレンチ学園の生徒や教師が皆殺しにされ、学園が崩壊して幕を下ろします。当初はちょっとエッチな学園コメディだっただけに、陰惨な結末には多くの読者が衝撃を受けたのではないでしょうか。『ハレンチ学園』の結末は今もなお語り草となっており、「楽しくエッチな学園コメディとして読んできて、最後は皆殺しエンドで終わる展開はホント衝撃的だった」「ハレンチ大戦争でアユちゃんがグバッとなったシーンは今でも鮮明に覚えてる」といった声があがっています。
●『HELLSING』
よろしい、ならば戦争だ――。 画像は『HELLSING』1巻(少年画報社)
漫画家である平野耕太先生の名を世に知らしめた代表作といえば、やはり『HELLSING』が挙げられるのではないでしょうか。20世紀イギリスを舞台に、吸血鬼と吸血鬼ハンターの戦いを描いたダークファンタジー巨編です。
同作の最終盤では、イギリスの首都であるロンドンが戦場となり、火の海に包まれます。時計塔ビッグ・ベンや巨大観覧車ロンドン・アイ、かの有名なバッキンガム宮殿も、軒並み戦火に巻き込まれることとなりました。
実は作中でロンドンを火の海にした背景には、作者の平野先生がロンドン旅行で体験した苦い思い出が大きく関係しているといわれています。現在は閉鎖されているものの、過去に平野先生の公式ブログには、そのときの恨みつらみが書き記されていました。
もともとイギリスが舞台の作品ということで、観光を兼ねたロケハン旅行のはずだったそうなのですが、ホテルの従業員から差別的な扱いを受けたり、食事が不味かったりしたことでフラストレーションが溜まり、途中から「どの建物をどんなふうに破壊したらスッキリするか」という視点で街並みを見るようになってしまったのだそうです。
ロンドンを戦火に巻き込んだ最終決戦といえば、同作でも一、二を争う見どころのひとつでしょう。その名シーンが、実はマイナスな感情から生まれていたとは驚きですね。
怒涛の最終回に唖然とした読者も多いはず! 画像は「ゴールデンボーイ D-3」DVD(ケイエスエス)
●『GOLDEN BOY』
『GOLDEN BOY』は、1992年から1997年にかけて「スーパージャンプ」にて連載されていた江川達也先生の代表作のひとつです。同作のストーリーは、主人公の大江錦太郎が大学を中退し、机の上では学べない真の「お勉強」を行うため、日本全国を自転車で旅をするというものでした。彼は旅先で出会った人びとを救うために奮闘していきます。
のちに『GOLDEN BOY さすらいのお勉強野郎』というタイトルでOVA化されるほどの人気作だった同作ですが、その終わり方は打ち切りとしか思えないものでした。作中の伏線がほとんど未回収のまま終わったうえ、最終回では「続きを 続きを この続きを描きたいっ!!」「誰だ 一体誰が邪魔をしてるんだっ」などと、打ち切りを宣告された作者の代弁とも思えるセリフを主人公が叫ぶのです。
ちなみに打ち切りの原因については、作中キャラクターが原子力発電所の是非など政治的な問題に触れる発言をしていたことが理由であるとする説や、単純に人気が低迷していたためとする説などがあり、はっきりしたことは分かっていません。作者の執念が主人公に乗り移るという、ある意味で非常に恐ろしい展開でした。
のちに、その執念が実ったのか、2010年から「ビジネスジャンプ」で『GOLDEN BOY II ~さすらいのお勉強野郎 芸能界大暴れ編~』という続編が連載されています。
作者の強い感情が透けて見えるシーンは、ときに読者の心に大きなインパクトを残すものです。「怒り」「恨み」といった感情すら、優れたクリエイターにとっては大きな糧(かて)となるのかもしれません。
(ハララ書房)
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