ファミコン・スーファミ時代 ソフトが「発売と同時に割引き」されていた謎
マグミクス / 2024年2月8日 21時50分
■ファミコンやスーファミのカセットは「割引されるのが当たり前」だった
現代のゲームソフトは、発売時の価格は定価で、時間が経つとセール価格となるのが一般的です。しかしファミコンやスーパーファミコンが主流だった時代では、カセットの値段は発売と同時に2割か3割引きで販売される光景が当たり前のように見られました。なぜ、当時は割引されていたのでしょうか。理由は簡単で、販売競争が極めて厳しかったためです。
いまゲームソフトを購入するなら、配信かAmazonなどのネット通販、あとは大型の電器店が主だった選択肢となりますが、ファミコンやスーパーファミコンの時代は違いました。当時はインターネットがないため、配信もネット通販もありません。代わりに街には無数のファミコンショップが点在し、「ハローマック」などの玩具チェーンや個人経営の玩具店もまだまだ健在だった時代です。
デパートやディスカウントストアのおもちゃ売り場でも、当然カセットが販売されていましたし、書店でも扱っている店がありました。もたもたすれば中古カセットが出回ってしまうので、新品は少しでも早く売りさばかなければなりません。売れ残りを抱えれば損を承知で大幅に値下げをしてワゴンセールなどで処分する羽目になります。発売と当時に割引販売を強化する方向に行くのは、自然な成り行きでした。
問題は、この割引分はどこが損をする形になっていたのかという点です。損をするのは最も立場が弱いポジションに決まっています。そう、お客さんに直接販売する小売り店が被っていたのです。
スーパーファミコン時代のカセット1本当たりの取り分は、諸説ありますがおおよそ、流通経路や権利元など関係者の間で製造(委託費)が10%、ロイヤリティ(権利元報酬)が20%、ソフトメーカーの取り分が25%、問屋と小売店のマージンが45%程度となっていました。
問屋と小売りのマージンが45%とありますが、問屋には1次と2次があり、1次が10%、2次が5%を確保したとすると、小売りには30%しか残りません。つまり店頭での3割引きは、小売店の利益を吐き出す形で行われていたのです。
■利益を確保するための複雑なやり取りとは?
スーパーファミコン用ソフトはファミコンに比べ高額なものが多い(マグミクス編集部撮影)
こういった計算にはなりますが、実際にはもっと複雑なやり取りや交渉が行われていました。商売人である小売りが、利益のない商売をするわけがありません。
一例を挙げれば、大手家電量販店では、大量に入荷する代わりにより安価に卸してもらい、利益を確保していました。とはいえ、もしカセットの人気を見誤れば、数か月後にはワゴンセールの常連と化してしまいます。当時はカセットの製造に時間がかかるため、事前に販売予測を立てる必要もありました。
メーカー側でも数量の調整は難しい問題で、作りすぎて長期間にわたり低価格で店頭に並び続けたり、逆に人気が出たのに製造ができず、店頭価格が高騰したりといった例もありました。スーパーファミコン用ソフトの『第3次スーパーロボット大戦』や『かまいたちの夜』などの事例が該当するでしょう。
ゲームの情報は雑誌や、「週刊少年ジャンプ」などで得るしかなかった時代だったので、担当者の交渉力を原動力とした、博打のような商売が行われていたのではないでしょうか。
当然、交渉力のない街の玩具店などでは、卸価格も高価になるため、割引き販売は難しくなります。最近でも当時の定価のまま、古いカセットを置いている店をまれに見かけます。単純に、割引できるだけのマージンがなかったのが理由となるでしょう。
結果として、大手の小売り店がカセットの販売で優位を占めるようになったため、ファミコンショップでは新品も扱いながら、利益は中古で確保する形式が確立されていきます。小規模家電店や街の玩具店、書店などは利益を確保できなくなり、撤退を余儀なくされました。
時は流れ、いまではメーカーが運営するオンラインストアをはじめとする、Webで値引き情報が手に入るようになりました。日々膨大なタイトルが提供され続ける状況で「あ、あのタイトルがいま値引きされているのか」と知ることができるのは非常に便利です。しかし、新聞の折込チラシをチェックしたり、ファミコンショップに出かけたりして、とぼしいお小遣いで必死になって面白いゲームを求め続けた時代が、ふと懐かしくなるのも事実ではないでしょうか。
(早川清一朗)
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