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『Zガンダム』の革命的メカデザイン 「その後」を一変させた3つの「スタンダード」

マグミクス / 2024年2月9日 6時10分

『Zガンダム』の革命的メカデザイン 「その後」を一変させた3つの「スタンダード」

■明らかに『ガンダム』より洗練されたメカニック

 映画『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』の上映から3年後の1985年、「一年戦争」終結後の『ガンダム』ユニバースを受け継ぐ『機動戦士Zガンダム』のTV放送が開始されました。

『機動戦士Zガンダム』では『機動戦士ガンダム』にない新機軸のメカデザインが多数採用されており、その後の『ガンダム』シリーズのメカニックに大きな影響を与えたといえるでしょう。あまりにも革新的だったため、一般化したそのメカデザインについて振り返ります。

●「全天周モニター」と「リニアシート」

「全天周モニター」とは、コクピットの壁全体がモニターになっており、機体の周囲の様子が映し出されるシステムです。そのコクピットの中心にアームで固定されている座席が「リニアシート」で、これには操縦桿やコンソール類がまとめられています。

 全天周モニターを起動させた様子は、まるでパイロットが宙に浮いているように見えました。『機動戦士ガンダム』では、どのパイロットも目の前のモニターを見ながら操縦していたので、技術の進歩を思わせるハイテク感のあるメカデザインだといえるでしょう。

 パイロットの周囲に外部の映像が映し出されるアイデアには、コクピット内部からでも周囲の映像を映し出すことができるので芝居の幅が広がる、コクピット内のメカを書き込む必要がないので作画の省力化ができる、パイロットをカメラにおさめながら機体のダメージを反映させることができる(モニターが死ぬ演出)など、多くのメリットがあります。

●「モノコック構造」からの脱却

『マジンガーZ』や『超電磁ロボ コン・バトラーV』など、70年代までのアニメにおける「人型ロボット」の多くは、筒や箱が連結されたような形状をしており、いわゆる「モノコック(外骨格)構造」でした。重量を支える背骨や大腿骨に該当する骨格がなく、外装が装甲と骨格を兼ねていたのです。これはいわゆる「スーパーロボット」の内部構造などの資料で確認できます。大河原邦男氏による最初期の設定においては『ガンダム』も、外装の内側にメカがみっちりつまっています。

■「ムーバル・フレーム」でより緻密なメカニックが実現

モノコック構造のため箱をつなげたような関節の「ガンダム」。「エルガイム」まではこれが当たり前だった。画像はBANDAI SPIRITS「1/60 ガンダム」 (C)創通・サンライズ

 モノコック構造だった『機動戦士ガンダム』に対し『機動戦士Zガンダム』以降の『ガンダム』シリーズでは、永野護氏が考案した「ムーバル・フレーム(ムーバブルフレーム、Movable Frame)」という新しい構造が採用されています。これはロボット内部の骨格を設定し、その上に装甲が施されている様式のメカデザインです。

 これにより『ガンダム』を含むロボットアニメ全体のデザインは大きく変化しました。今では珍しくありませんが、ムーバル・フレームによりロボットアニメにおけるメカの骨格と装甲が分けられ、より人間らしい構造に進化したのです。

 もちろん現在でもモノコック構造のメカはありますが、全体的に関節の処理が複雑化し、本当に動きそうな整合性のあるものへと変わっていきます。この変化はプラモデルなどの立体物にも大きく反映されています。

●アイデアの初出は『重戦機エルガイム』

 後の『ガンダム』シリーズやロボットアニメに大きな影響を与えた全天周モニターとリニアシート、ムーバル・フレームが初登場したのは『機動戦士Zガンダム』ではありません。初出は『機動戦士ガンダム』(1979年)と『機動戦士Zガンダム』(1985年)の間に富野監督が手掛けた『重戦機エルガイム』(1984年)です。

 初めてムーバル・フレームを採用し、矛盾なく正座できる二重関節を実現したのは「エルガイム」、全天周モニターとリニアシートの原型(「スパイラルフロー」)は『エルガイムMk-II』に盛り込まれています。

 サンライズやバンダイが監修を努めるムック本『グレートメカニックG』(双葉社)などの資料によれば、全天周モニターとリニアシートに関しては富野監督がアイデアを出し、『重戦機エルガイム』のデザイナーだった永野護氏が形にしたとされています。

 永野護氏はムーバル・フレームを生み出した『重戦機エルガイム』に続き、『機動戦士Zガンダム』でも「リック・ディアス」や「キュベレイ」「ハンブラビ」など多くのメカデザインを手掛けています。その影響は大きいといえるでしょう。

●優れたデザインが生まれるには時間がかかる

 富野監督は1985年に角川書店から出版されたムック本『重戦機エルガイム 2 ザテレビジョンアニメシリーズ』に掲載された「異星人たちへ」という文章の中で、全54話にも及ぶ『重戦機エルガイム』を若手クリエイターたちの教育に使ったと認めています。

 もしも『機動戦士ガンダム』の直後に『機動戦士Zガンダム』が制作されていたら、これらの革新的メカデザインは存在しなかったかもしれません。『重戦機エルガイム』での蓄積がビッグタイトルである『機動戦士Zガンダム』に盛り込まれたのです。

 リッチな教育環境が人材を育て、優れたデザインを生み出し、後の『ガンダム』ユニバースを豊かにしたといえるのではないでしょうか。

(レトロ@長谷部 耕平)

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