「こんなのいたっけ?」ジオン公国軍のMS開発史において外せない「変わり種ザク」3選
マグミクス / 2024年2月17日 6時10分
■ザク開発史に外せない「高機動型ザク」
アニメ『機動戦士ガンダム』に登場する、ジオン公国軍の代表的なモビルスーツ(以下、MS)である「ザクII(MS-06)」は、その後に開発されるさまざまなMSのベースとなりました。同国軍のMS開発史において大切な通過点になったMSもあり、たとえば「高機動型ザク」は、「ガンダム」よりも性能が上回るといわれている「ゲルググ」誕生の足がかりになっています。
その「高機動型ザク」は、「一年戦争」の最序盤に繰り広げられた「一週間戦争」および「ルウム戦役」において、大打撃を与えたはずの地球連邦宇宙軍に未だ行動する余力が残っていたことから、宇宙用MSの強化が必要と判断したジオン公国軍において開発された機体です。
機体強度や出力の強化、突出した空間戦闘能力を有しており、「シャア専用ザク」に当てはまる「ザクII S型」以上の高性能を実現しました。ちなみに上述した、量産され代表的MSといわれた「ザクII」はF型というタイプで、S型は「F型の総合性能向上型」といわれています。
「高機動型ザク」はその手始めに試作機として、F型をベースにした「高機動型ザク・プロトタイプ(MS-06RP)」が開発されました。各種テストをクリアし、その結果などを踏まえ、やがて初期生産型「高機動型ザク R型(MS-06R-1)」が22機、ロールアウトします。
こうして実戦投入されたR型は、戦闘能力について評判は悪くなかったものの、F型からの大幅な設計変更によって整備や補給に混乱が発生し、また大推力化の影響により短時間で燃料が切れ扱いきれないパイロットが続出し、すぐに改良されることになりました。
その後に「推進剤不足」「スラスターの歩留まりの悪さ」というR-1型の問題点を解消した「R-1A型(MS-06R-1A)」や、性能向上に主眼を置いたR型系列の発展機「R-2型(MS-06R-2)」などが開発されます。そのR-1A型はおなじみ「黒い三連星」が「ドム」の前に使用していたもので、またR-2型はエース「ジョニー・ライデン」少佐の専用機で知られるタイプです。
いずれも生産は少数にとどまり、R-2型は上述のようにエース機として配備されたほか、1機が「ゲルググ」の試作機として活用されました。
「高機動型ザク」誕生の経緯を振り返ると、MS開発の一筋縄ではいかない苦労がうかがえます。
■ザクの系譜を受け継いで誕生したさまざまなMS
BANDAI SPIRITS「ROBOT魂 <SIDE MS> MS-06M(MSM-01)ザク・マリンタイプ(レッドドルフィン隊所属機) ver. A.N.I.M.E.」 (C)創通・サンライズ
「ザク」シリーズの変わり種といえば、「ザク・マリンタイプ(MS-06M/MSM-01)」を思い浮かべる人もいるでしょう。水中でも活動できるMSとしては「ズゴック(MSM-07)」「ゴッグ(MSM-03)」などが知られ、そしてそれらの始祖といえるのがこの「ザク・マリンタイプ(水中用ザク、水中型ザクとも)」です。水中専用機でありながら、見た目は「ザクII」に似たビジュアルをしています。
地球侵攻を開始したジオン公国軍の課題は、地表の7割を占める海を攻略することで、「ザク・マリンタイプ」はそのために開発されました。プロトタイプは初期に5機、最終的に7機が生産されたものの、実戦での戦果はありません。しかし、その後の水陸両用MSの開発に活かされました。
このほか変わり種として、「これって本当にザクなの?」と思わされてしまう見た目の、偵察機である「ザク・フリッパー(MS-06E-3)」が挙げられるでしょう。
「ザク・フリッパー」が開発される前は、「ザク強行偵察型(MS-06E)」が運用されていたものの、地球連邦軍の攻撃をかいくぐることが困難になったため、さらなる機動性を備えた偵察機が必要になりました。そこで開発されたのがこの「ザク・フリッパー」で、頭部に3連式一体型のカメラ、背部ユニットには6本の「ブームセンサー」を持つ「複合探知システム」が搭載されています。このブームセンサーが可動する様から、「フリッパー(flipper=ヒレ)」の愛称で呼ばれるようになったそうです。
偵察機としてグレードアップした「ザク・フリッパー」は「ア・バオア・クー攻防戦における地球連邦軍レビル艦隊の強行偵察」を成功させ、同機が関与した最大の功績といわれています。どうしても強いMSに注目してしまいがちですが、「ザク・フリッパー」の存在価値を知れば、戦争において情報収集がいかに重要なのか理解できるでしょう。
* * *
「変わり種ザク」を振り返ると、「そんな機体もあった」「知らなかった」など、思うところは人によって違いがあろう一方で、MSの開発を通じて「試行錯誤」「弱点の攻略」「情報収集」の大切さを感じられるのではないでしょうか。『機動戦士ガンダム』は人生においての「教科書」といってもいいかもしれません。
(LUIS FIELD)
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