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『ゴールデンカムイ』杉元、鶴見には実名モデルがいた? 強烈キャラ達の「元ネタ」とは

マグミクス / 2024年2月17日 21時10分

『ゴールデンカムイ』杉元、鶴見には実名モデルがいた? 強烈キャラ達の「元ネタ」とは

■ロシア兵2000人から狙い撃ちされたが無傷

 実写映画『ゴールデンカムイ』が絶賛上映中です。主人公は、何度も致命傷を負いながらも生き続ける「不死身の杉元」こと「杉元佐一」ですが、これが原作者・野田サトル先生の曾祖父の実名であることをご存じでしょうか。しかも、対立する「鶴見篤四郎(中尉)」も、知人の祖先がモデルなのだそうです。

 この事実は、野田先生自身がブログでつづり、また「ゴールデンカムイ 公式ファンブック 探求者たちの記録」(集英社)にも掲載されています。内容をご紹介します。

 まず、「杉元佐一」とはどんな人物だったのでしょうか? 野田先生は新連載の題材を探していたとき、父に曽祖父のことを聞いたそうです。

 曽祖父の杉元佐一さんは、作中にもある「第七師団」の歩兵27連隊乗馬隊に所属していました。日露戦争に出兵し、あの二百三高地での激戦にも参加したそうです。

 そして、実際に「不死身」の異名を取るようなエピソードが残されています。あるとき、約500人の大隊が約2000人のロシア兵に包囲されました。絶体絶命の状況に、上官は、この包囲網を突破して援軍を呼ぶ任務をふたりの兵士に命じます。そのひとりが杉元さんでした。

 ふたりは馬に乗り、ロシア兵の包囲網を全力疾走します。鉄砲の弾は何発も身体をかすめますが、奇跡的に人馬とも無傷で突破し、4000人の援軍を呼ぶことに成功します。ロシア兵は撤退し、大隊は死者を出さずに済みました。

 杉元さんは、その功績が認められて金鵄(きんし)勲章を賜ります。第2次大戦中に60代で病死するまで、多額の年金をもらっていたそうです。「血みどろの戦争を生き抜き、500名の命を救い、名誉とマネーを掴んだという話に胸が熱くなる」と野田先生は語っています。野田先生は曾祖父と主人公の関係について、「名前を借りただけに過ぎない」「自分の曽祖父を描いているつもりは一切無い。全くの別人と考えている」とも言っていますが、上記の生還劇は「不死身の杉元」の所以のひとつともいえるエピソードです。

※ここから先の記事は実写版『ゴールデンカムイ』で描かれていない、ネタバレとなるエピソードを含みます。

■鶴見中尉のモデルは謎だらけ

鶴見中尉がパッケージのアニメ『ゴールデンカムイ』DVD2巻(NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン)

 一方、敵の「鶴見篤四郎(中尉)」のモデルは、「長谷川篤四郎」という人物だそうです。野田先生の父の友人の曽祖父で、杉元さんと同じ時代を生きた人物ですが、おそらく「スパイではないか?」とされています。

 彼は明治37年の戦争のさなか、20代前半で除隊し、札幌で写真店を開業します。そして明治40年に中国国境に近いロシアのグラデコワという小さな町に移って、写真店を営んだそうです。

 グラデコワを含め、他に4軒の写真店を開きますが、まだ20代の青年にそんな資金力があったとは思えず、さらに、どうして大都市でもない小さな国境の町に出店したのか? 大きな謎が残ります。また、なぜかロシア語がペラペラとも語られていました。おそらく彼は写真店経営者の裏の顔があり、軍とつながっていた可能性が高そうです。

 長谷川さんは昭和30年(1955年)に72才で亡くなりますが、これらのことは遺品に残された履歴書を頼りに遺族が調査して分かったことで、家族すら知らない事実ばかりでした。「ファンブック」を読むと、この人だけで何か1作品できそうなくらいミステリアスな人物です。

 そして作中の鶴見中尉は若い頃、「長谷川幸一」という偽名で写真屋になりすまし、極東ロシアのウラジオストクでスパイ活動をしていました。このあたりの物語は、長谷川さんが「本当にスパイだったら……」という想像で描かれたのかもしれません。

 以上、「杉元佐一と鶴見篤四郎にはモデルがいる」という話をしましたが、ファンからは、物語を創る上でさらに参考にした人物がいるのでは? とささやかれています。

●杉元佐一は「不死身の分隊長・舩坂弘(1920~2006)」?

 帝国陸軍兵士「舩坂弘」氏は、太平洋戦争中のアンガウル島で、全身に数十か所の傷を負いながら戦い続けました。米軍の捕虜となるも、脱走を試みたり、飛行場を爆破しようとしたりと、勇猛果敢な男でした。

 酷い外傷から死体置場に放置されても蘇生するなど逸話が多く「不死身の分隊長」と言われることとなります。余談ですが「大盛堂書店」を開いた人物で、自叙伝も出版されています。2023年に毎日新聞がこの舩坂氏と杉元の関係について集英社に取材したところ、主人公・杉元佐一はさまざまな要素を盛り込んで造形したキャラクターで、舩坂氏だけがモデルではないという旨の返事があったそうです。

●鶴見篤四郎は、「須見新一郎(1892~1977)と鶴見数馬(1860~1926)」?

 こちらもふたりとも軍人です。須見新一郎大佐は帝国陸軍大佐で第七師団に所属し、あのノモンハン事件(1939年)ではソ連軍と交戦しています。 須見大佐はこの時、上官の作戦に異議を唱えつつ従っていました。これは、作中で鶴見が二百三高地突撃に反対しながら従事したエピソードと似ています。

 鶴見数馬氏は、明治期の陸軍大佐でした。作中の鶴見と同様、二百三高地や奉天会戦に参加するなど、戦歴はかなり似ています。

 前述の知人の曽祖父の話に加えて、経歴と名字は鶴見大佐、エピソードは須見大佐を参考にキャラクターを作り上げているのかもしれません。

●その他の登場人物にもモデルがいる?

『ゴールデンカムイ』は、その他の登場人物にも実在のモデルがいる?と言われています。

 野田先生の談から確定した例をあげると、「脱獄王 白石由竹」のモデルは昭和期に網走刑務所からも脱獄し脱獄王と呼ばれた「白鳥由栄」です。こちらは映画評論家の町山智浩さんとの対談で、モデルであることが言及されました。

 そのほか、ネット上で「この人がモデルではないか」と言われている例を箇条書きすると

・「牛山辰馬」=伝説の柔道家、プロレスラーの木村政彦の師匠、東条英機暗殺計画にも加わった柔道家「牛島辰熊」?

・「尾形百之助」=アメリカ海兵隊の狙撃手で、ベトナム戦争にて公式記録で93名を狙撃した「カルロス・ノーマン・ハスコック2世」?

・「二瓶鉄造」=大正時代の「三毛別ひぐま事件」にて、人食い熊を射止めた名人漁師「山本兵吉」(小説「熊嵐」の銀オヤジ)?

 などが挙げられます。これらは公式なものではなく、コアなファンたちが考察した見解です。強烈なキャラたちを実際に生身の俳優が演じるようになった『ゴールデンカムイ』は、その「モデル(?)」たちについて調べてから読み返すと、より面白さが増すかもしれません。

※本文の一部を修正しました。(2024年2月22日 15:27)

(石原久稔)

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