再アニメ化『ダイの大冒険』に大人が興奮する理由 必ず話題になる「ポップ」の存在
マグミクス / 2019年12月29日 17時10分
■『ダイの大冒険』再アニメ化 ついにその日がやって来た!
1989年から1996年にかけて「週刊少年ジャンプ」で連載された『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』は、大人気ゲーム『ドラゴンクエスト』をモチーフとしたオリジナルの世界観を作り上げました。次々と登場する魅力的なキャラクターと、手に汗握る展開の連続で人気作品となり、単行本4700万部を売り上げるヒット作に。2020年秋に2度目となる新作アニメの放送が発表されると、ネット上では歓喜の声が湧き上がりました。ライターの早川清一朗さんが、同作の魅力について語ります。
* * *
2020年秋、勇者が帰ってくる。
2度目のアニメ化発表のキービジュアルが、コミック版『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』(以下、ダイの大冒険)のラストシーンを元にしていることに気付いたとき、筆者は感動に震えました。
「ああ、これは安心できる。分かっている人が作っている」
昔、『ダイの大冒険』に夢中になった少年少女たちが、新たな冒険の扉を開こうとしているのだ、そう確信できたのです。
『ダイの大冒険』は1989年から1996年にかけて「週刊少年ジャンプ」で連載されていた、監修・堀井雄二氏、原作・三条陸氏、作画・稲田浩司氏によるバトルファンタジーマンガです。ゲーム『ドラゴンクエスト』をモチーフとした世界での主人公ダイとその仲間たちの戦いと友情を描き、多くの読者をとりこにしました。本作オリジナルの設定も多数存在し、その一部、獣王クロコダインの「獣王会心撃」やダイとその師匠のアバンが使用する「アバンストラッシュ」などの技がゲーム側に逆輸入され、往年のファンを喜ばせています。当時、傘でアバンストラッシュを真似している子供、多かったなあ……。
『ダイの大冒険』のアニメ化は、最初に書いたように2度目となります。一度目は1991年から1992年にかけて全46話が放送されましたが、ダイの父親である竜騎将バランを撃退したところで終了しました。本来は数クール分延長される予定だったそうで、当時大変残念に思ったことを覚えています。それだけに、今回のアニメ化発表には感慨深いものがあります。
ただ残念なことに、当時ダイ役を演じた声優の藤田淑子さんとバラン役を演じた石塚運昇さんは同じ2018年に亡くなっています。他にも、魔軍司令ハドラーや偽勇者一味のまぞっほを演じた青野武さんは2012年、大魔王バーンを演じた内海賢二さんは2013年に他界しました。30年近く経過しているとはいえ寂しいものです。新たな声優たちが、キャラクターにどのような命を吹き込んでくれるのか、期待して待とうと思います。
■「ポップ」が必ず語られる理由
さて、『ダイの大冒険』と言えば、必ず話題になるのがダイの親友、魔法使いのポップです。登場したばかりの頃は、それなりの魔法は使いこなせるものの根性がなく詰めが甘く、厳しい修行は嫌がってモンスターにおびえ、ピンチとなればすぐ逃げだすという典型的な「ダメな」キャラクターでした。
脚本担当の三条陸氏によると、ジャンプの編集者からも「こいつはさっさと殺そう」と言われていたのを必死で止めていたそうです。それがさまざまな人との出会い、数々の戦いを経てメドローア(極大消滅呪文)を身に付け、最後は自ら大魔道士を名乗れるほどの実力者へと成長を遂げました。
大魔法バーンとの戦いの際にもヒュンケルやクロコダインら歴戦の勇士たちから切り札として期待を一身に集め、最終決戦では自ら盾となって「天地魔闘の構え」を受けきる姿に序盤の情けない姿などみじんも感じられません。
作中には竜騎将バランと王女ソアラの息子であるダイ、勇者パーティの娘であるマァム、パプニカ王国の王女であるレオナなど、優れた血筋のキャラクターたちが大勢登場し、活躍します。そんななか、村の武器屋の息子でしかないポップが勇気と知恵を振り絞って戦い抜く姿に、当時の読者たちは強い共感を覚えていたのです。
また『ダイの大冒険』ではポップ以外にも一般人+αくらいのキャラクターが、それぞれできることをできる限りやり抜こうと奮闘します。特に筆者の印象に残っているのが、偽勇者パーティの魔法使い「まぞっほ」です。
クロコダインの襲撃を受けて逃げ出したポップの前に現れたまぞっほは、火事場泥棒をしているところを咎められるも意にも介さずに仲間にならないか誘います。「おれは勇者アバンの弟子なんだぞ!」と叫んだポップに「仲間を見捨てるような者でも務まるのかね? かの有名なアバンの使徒というのは……」と言い放った後の叱咤激励は、ポップが生まれ変わるために必要な、最初の一撃だったのでしょう。
さらに最後の最後、全てのキャラクターが全ての力を振り絞り、もう打つ手がないという絶望的な状況で仲間と共に再登場を果たした時、筆者は唖然としながらも震えるほどの感動を覚えました。
強くなりすぎたポップにはもうなれない。でも、まぞっほなら、誰でもなれる。必要な時が来たら、なけなしの勇気を振り絞ればいい。それをまぞっほが教えてくれた気がします。
もし、その時が来たら……。
君よ立て! 君よ行くのだ!
(C)三条陸、稲田浩司/集英社・ダイの大冒険製作委員会 (C)SQUARE ENIX LTD.All Rights Reserved.
(早川清一朗)
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