『ライディーン』のデザインは「常識外れ」だった? マジンガーZほか従来ロボットアニメとの決定的な違い
マグミクス / 2024年2月22日 7時10分
■斬新だった左右非対称デザイン でもアニメ制作現場は大変?
今からおよそ60年前、日本初の本格的連続TVアニメーションがスタートしました。その最初の作品は「ロボット」アニメでした。
若い方でも名前くらいはご存じでしょう。『鉄腕アトム』『鉄人28号』『エイトマン』。いずれもロボットものであるこの3作が、日本で制作され、初めて放送された本格的TVアニメシリーズです。当時は第二次世界大戦からの復興が軌道に乗り、日本全土が明るい未来像を目指して突き進んでいった時代でもあります。そんな世相が作り出したのが「ロボット」という「夢」だったのでしょう(それに続くようにさまざまなアニメが放送されていきます)。
『アトム』から9年、アニメや特撮番組内でも登場し続けていたロボットを全面に押し出して作られたのが、男の子たちを虜(とりこ)にした『マジンガーZ』です。
さらに『グレートマジンガー』『ゲッターロボ』『ゲッターロボG』『UFOロボ グレンダイザー』『大空魔竜ガイキング』……これらはみな東映アニメーションの作品ですが、この他にも、ほんの数年の間にさまざまな制作会社から、たくさんのロボットアニメーションが作られます。
さて、ご存じの方は、ちょっとマジンガーZのデザインを思い出してみて下さい。他にも、当時のアニメロボットでご存じのものがあれば思い浮かべて下さい。
体の真ん中から分けて、左右対称のものが多くないですか? 鉄人28号、マジンガーZ、ゲッターロボ、ボルテスV、あのガンダムだって盾を持たなければ左右対称です。なぜでしょう?
答えは簡単。左右どちらから写しても同じ……つまり、反転でも大丈夫だからです。
アニメーションというのは、たくさんの原画、動画という絵を描き、それに色を付けて作られているのはご存じだと思います。詳しいことは省きますが、同じロボットが右を向いた画面と左を向いた画面が必要なとき左右が同じであれば、片方の絵を裏返し、反転して使うことが可能になるのです。膨大なアニメ制作作業のなか、少しでも作業を減らすのは、とても大切なことですから。
「ちょっと待て! じゃあ、お前が担当していた『ザブングル』や『ザンボット』はどうなんだ!」
そうなんです。版権もとは違いますが、後の日本サンライズに繋がってゆく「創映社」「サンライズスタジオ」が下請け現場として制作した『勇者ライディーン』(1975年)からして実は左右非対称。右腕と左腕に付いている武具が違うのです。そのため腕が画面に入る場合は、業界で「裏トレス」と呼ぶ反転が使えず、現場からモンクが出ることもあったそうです。
それでも、日本サンライズ初作品の『無敵超人ザンボット3』は額に三日月があります。『太陽の牙ダグラム』は、片側にアンテナ、大砲。『戦闘メカ ザブングル』は左胸に丸いパーツ(企画当初の保安官バッチの名残り)、『装甲騎兵ボトムズ』に至っては、アンテナが片方なだけでなく、代名詞のような顔のレンズは3つで全部違うというデザインです。
たしかに『ボトムズ』くらいになれば、TVアニメーションに対する状況はかなり変わってきていますが、『ライディーン』や『ザンボット』の時代に、よく左右非対称のデザインが許されたものですよね。
当然、現場のスケジュールや予算を管理する側はいい顔はしません。それでも『マジンガーZ』のような大人気作品を向こうに回してのロボットアニメへの参入です。リスクを恐れるよりも既存の常識を覆し、作品としての充実で、後発の不利を補ったのが当時のサンライズだったのです。
「左右非対称でもやれるんだ!」と言うサンライズ第1世代制作の心意気、こんなところから感じていただければ幸いです。
【著者プロフィール】
風間洋(河原よしえ)
1975年よりアニメ制作会社サンライズ(現・バンダイナムコフィルムワークス)の『勇者ライディーン』(東北新社)制作スタジオに学生バイトで所属。卒業後、正規スタッフとして『無敵超人ザンボット3』等の設定助手、『最強ロボ ダイオージャ』『戦闘メカ ザブングル』『聖戦士ダンバイン』『巨神ゴーグ』等の文芸設定制作、『重戦機エルガイム』では「河原よしえ」名で脚本参加。『機甲戦記ドラグナー』『魔神英雄伝ワタル』『鎧伝 サムライトルーパー』等々の企画開発等に携わる。1989年より著述家として独立。同社作品のノベライズ、オリジナル小説、脚本、ムック関係やコラム等も手掛けている。
(風間洋(河原よしえ))
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