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駅伝シーズンに読み返したい『奈緒子』 「タスキ」が日本人の心を揺さぶる?

マグミクス / 2020年1月2日 7時10分

駅伝シーズンに読み返したい『奈緒子』 「タスキ」が日本人の心を揺さぶる?

■『いだてん』の金栗四三が提唱した、箱根駅伝

 お正月の風物詩のひとつに、「駅伝」が挙げられます。なかでも例年1月2日、3日に日本テレビ系で全国中継される「箱根駅伝」こと「東京箱根間往復大学駅伝競走」は100年の歴史を誇り、大変な人気があります。2019年は東海大学が総合初優勝を遂げ、青山学院大学の5連覇を阻止。往路30.7%、復路32.1%(ともにビデオリサーチ調べ、関東地区)と高視聴率を記録しています。

 もともと駅伝は、NHK大河ドラマ『いだてん』で有名になった日本初のマラソンランナー・金栗四三が1912年のストックホルム五輪で惨敗し、将来のマラソンランナーたちを育成するために提唱したことが始まりでした。箱根駅伝でも最優秀選手には、金栗四三杯が贈られることになっています。

 それにしても日本人は駅伝が大好きです。各走者がチームのために献身的に走り、次の走者に「タスキ」をつなぐ瞬間に、ドラマ性を感じてしまうようです。2019年の「新語・流行語大賞」にラグビー日本代表チームのスローガンだった「ONE TEAM」が選ばれたように、多くの日本人は駅伝の代表選手たちがひたむきにチームプレーに徹する姿に、日本人ならではの国民性を感じてしまうのかもしれません。

■9年間連載が続いた陸上マンガの金字塔

 そんな学生駅伝を題材にしたのが、坂田信弘原作、中原裕作画の人気マンガ『奈緒子』でした。「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)にて、1994年から2003年まで連載が続いた、ロングランヒット作として知られています。

 タイトルは「奈緒子」ですが、物語の主人公は「日本海の疾風」と呼ばれる天才ランナー・壱岐雄介です。波切島で生まれ育った雄介は、幼い頃に漁師だった父親を事故で失うという悲劇に遭遇しますが、父親譲りの健脚ぶりで将来を有望視されるスプリンターへと成長するのでした。

 物語ががぜん盛り上がるのは、中学に入学した雄介が長距離に転向し、初めて参加する「全国中学校駅伝大会」です。アンカーに選ばれた雄介までタスキを繋ごうと、陸上部の先輩たちは懸命に走り抜きます。同じ区間を走るライバルとの心理的な駆け引きも、ディテールたっぷりに描かれています。チームみんなの想いを背負った雄介は、途中で何度も心が折れそうになりながらも、ゴールに向かって突き進むのでした。

 ずば抜けた力を持つ雄介がチーム全体を引っ張り、また雄介もチームのみんなに支えられることで潜在能力をより発揮することになります。自分ひとりではないから、最後まで走り切ることができる。「駅伝」という競技の魅力を『奈緒子』は存分に伝えてくれます。

■陸上経験者・綾野剛の見事なピッチ。映画版『奈緒子』

映画『奈緒子』DVD(日活)

 2008年には上野樹里、三浦春馬、笑福亭鶴瓶らのキャストによって、実写映画『奈緒子』として劇場公開されています。波切島の誇る天才ランナー・雄介(三浦春馬)と、雄介の父親の事故死に関わった東京の女子高生・奈緒子(上野樹里)との葛藤と和解を軸にした青春ドラマでした。原作では雄介の中学時代のエピソードが、映画では高校生になってからのものにアレンジされています。

 映画版『奈緒子』のいちばんの見どころは、やはり駅伝シーンです。全国大会出場を目指す雄介たちの前に、ライバル校のエース・黒田(綾野剛)が立ちはだかります。黒田役の綾野剛はまだブレイク前でしたが、中学・高校時代は地元の岐阜県では屈指の中距離ランナーとして鳴らしていただけに、素晴らしい走りを見せてくれます。綾野剛が安定したピッチで走ることによって、三浦春馬のがむしゃらぶりを際立たせています。

 上野樹里はコメディドラマ『のだめカンタービレ』(フジテレビ系)で大人気を博した直後ですが、『奈緒子』ではナイーブな女子高生役を好演。新人時代に出演した実話系映画『チルソクの夏』(2004年)でも陸上選手を演じており、なかなかの走りっぷりを見せています。美しい走りは、観ている人の心まで高揚させてしまうようです。

■マラソンへと続く「タスキ」に込めた想い

『奈緒子 新たなる疾風』第1巻(小学館)

 原作コミックは2001年からタイトルを『奈緒子 新たなる疾風』と変え、雄介は駅伝からマラソンへと転向することになります。高校生ながら健介は、オリンピック代表の選考会を兼ねた「東京国際マラソン」に初出場。42.195kmというこれまで体験したことのない長距離に苦戦を強いられますが、駅伝で一緒に汗を流したチームメイトやゴールで待つ奈緒子たちのことを想い、百戦錬磨の国内外のランナーたちを相手にデッドヒートを繰り広げるのでした。

 東京国際マラソンで激走した雄介は、2004年のアテネ五輪の男子マラソン代表に選ばれ、世界的ランナーへとはばたいていきます。五輪へのジャンピングボードとして駅伝を提唱した金栗四三の長年の夢を、駅伝出身の雄介が見事に叶えることになります。

「東京オリンピック2020」の男子マラソンに出場が内定している中村匠吾選手(駒澤大学卒)と服部勇馬選手(東洋大学卒)、2時間5分50秒というマラソン日本記録保持者である大迫傑選手(早稲田大学卒)も、やはり学生駅伝で活躍しています。今回の箱根駅伝からも、将来の五輪ランナーが頭角をあらわすことになるかもしれません。出場校20校のそれぞれのシンボルカラーが施された「タスキ」は、どんなドラマを生み出すのでしょうか。

(長野辰次)

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