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『シン・ウルトラマン』と『エヴァ』まるごと楽しむ基礎知識。三部作はどこに向かう?

マグミクス / 2020年1月5日 14時10分

『シン・ウルトラマン』と『エヴァ』まるごと楽しむ基礎知識。三部作はどこに向かう?

■成田亨デザインへの原点回帰

 ウルトラマンといえば、1966年に『ウルトラマン 空想特撮シリーズ』(TBS系)が放映されて以来、日本が誇るスーパーヒーローとして絶大な人気があります。2021年には庵野秀明(企画・脚本)&樋口真嗣(監督)コンビによる『シン・ウルトラマン』の劇場公開が予定されています。『シン・ゴジラ』(2016年)を大ヒットさせたコンビだけに、とても楽しみです。

 2019年12月14日には、『シン・ウルトラマン』に登場するウルトラマンのビジュアルが初めて公開され、注目を集めました。メタリックシルバーと赤のカラーリングは従来のイメージどおりですが、かなりのスレンダー体型です。しかも、ウルトラマンの胸についていたカラータイマーがありません。

 初代ウルトラマンをデザインした美術担当の成田亨氏は、もともとはカラータイマーのないウルトラマンをイメージしていたそうです。ドラマを盛り上げるためのギミックとして、制作段階になってからカラータイマーは後付けされたのでした。成田氏はカラータイマーを嫌っていたといわれています。

『シン・ウルトラマン』に登場するウルトラマンは、成田氏が1983年に描いた絵画「真実と正義と美の化身」をコンセプトにした、とてもシンプルな造形となっています。カラータイマーのほかにも、眼の部分の覗き穴、スーツ着脱用ファスナーに伴う背びれもついていません。『シン・ゴジラ』のゴジラと同様に、これまでの着ぐるみではない、CG表現による新しいウルトラマンとして動く姿を見せることになりそうです。

■半世紀におよぶ、ウルトラマンの謎

 カラータイマー、眼の覗き穴、背中のファスナーが消えたことで、ファンの脳裏によぎるのは、あの問題です。そうです、「ウルトラマンのシルバー&レッドの外見はスーツを着た姿なのか、それとも素肌なのか」という問題です。世に言う「ウルトラマン着衣問題」です。もしスーツなら、中には別の姿の宇宙人が入っているのか。素肌ならば、ウルトラマンはいつも素っ裸で怪獣や凶悪宇宙人たちと戦っていたのか。そんな素朴な疑問がファンの間にはありました。

 この「ウルトラマン着衣問題」には、まだ明快な答えは出されていません。2010年に発行された『空想科学読本9』(メディアファクトリー)の「ウルトラマンは裸か?」の項で、著者の柳田理科雄氏は「ウルトラの人たちは、体の赤い部分が服で、銀色の部分が地肌なのではないか?」という自説を述べています。

 それによると、ウルトラマンの腰の赤い部分はパンツということになるようです。パンツ一丁に近い裸で、宇宙を守っているそうです。ですが、これは柳田氏の推測であり、正解とは言い難いものです。

■かつてウルトラマンを演じた男

 これは個人的な見解なのですが、ウルトラマンやゾフィーたちが暮らす「光の国」は地球人類よりも遥かに科学が進歩しており、生命体としても究極(ウルトラ)に進化した人間(マン)なので、地球人類のような衣服や裸といった概念を超越した文明を持っているのではないでしょうか。

 記念すべき『ウルトラマン』の第1話「ウルトラ作戦第1号」では、事故で亡くなった科学特捜隊のハヤタ隊員(黒部進)のためにウルトラマンは自分の命を与えることで一心同体となり、宇宙怪獣ベムラーを倒すことになります。とてもスピリチュアルな存在として、ウルトラマンは登場していたわけです。幽霊が裸では現れないように、ウルトラマンが裸かどうかは、私たち人間の意識の問題なのかもしれません。

 その点を、『シン・ウルトラマン』の脚本を手掛ける庵野氏がどのように意味づけているのかも気になるところです。1960年生まれの庵野氏は短編映画『帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令』(1983年)を自主制作し、みずからウルトラマンを演じていただけに、大変なこだわりがあるはずです。ディテールもしっかり考証した『シン・ウルトラマン』が誕生するに違いありません。

■『シン』三部作の完結

『シン・ウルトラマン』のビジュアルをはじめ、円谷プロが2020年以降に公開を予定している作品群

 大ヒット作『シン・ゴジラ』では、庵野氏はゴジラを「人間の8倍もの遺伝子情報を持つ完全生命体」として描いています。また、2020年6月27日(土)にはシリーズ完結編となる『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が公開されます。これに『シン・ウルトラマン』が加わることで、『シン』三部作的な意味合いを持つことも予測されます。

「エヴァンゲリオン」シリーズでは人間の内面的な進化を、『シン・ゴジラ』では生物・生命の科学的進化について言及した庵野氏だけに、地球外生命体とのコンタクトを描く『シン・ウルトラマン』では、どこまでイマジネーションの高みに達するのかも期待されます。

 ウルトラマンになる男を斎藤工が演じるほか、長澤まさみ、西島秀俊らが出演。撮影自体はすでに終わっているそうですが、物語の内容はまだ明かされていません。

 フランスの人気アイドル歌手シルヴィ・バルタンにちなんで命名された人気No.1の宇宙人・バルタン星人は登場するのか。ハヤタ隊員がベータカプセルと間違ってカレーライス用のスプーンで変身しようとした爆笑エピソードや、科学特捜隊の紅一点・フジ隊員(桜井浩子)が巨大化して街を破壊する姿に子ども心にドキドキさせられた名シーンは再現されるのか。元プロレスラー・前田日明氏が体を鍛えるきっかけとなった最強の宇宙怪獣・ゼットンが、やはりウルトラマンを倒すことになるのか。ファンの期待は今から膨らむ一方です。

 未来に明るい希望を持つことができた、高度経済成長期の真っただなかに生まれた『ウルトラマン』の放送開始から50余年。東京オリンピック後の2021年に公開される『シン・ウルトラマン』で、庵野秀明&樋口真嗣コンビは一体どんな新しいヒーロー像を生み出すのでしょうか。『シン・エヴァンゲリオン』の完結とともに目が離せません。

(C)2021「シン・ウルトラマン」製作委員会
(C)円谷プロ (C)Eiichi Shimizu,Tomohiro Shimoguchi (C)ULTRAMAN製作委員会
(C)円谷プロ
(C)円谷プロ・東映アニメーション
(C)円谷プロ (C)かいじゅうのすみかVRアドベンチャー製作委員会(円谷プロ/TBS/ティフォン)

(長野辰次)

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