鳥山明さんが「ゲーム業界」に残した功績 『ドラクエ』×『FF』タッグ作も
マグミクス / 2024年3月8日 17時15分
■2大RPGのクリエイターが集結した、スーファミ時代の名作も
『Dr.スランプ』に『ドラゴンボール』と、大ヒット作を立て続けに生み出し、その後も数々の作品を意欲的に世に送り出した漫画家の鳥山明さんが、急性硬膜下血腫で亡くなりました。この訃報は、「ドラゴンボールオフィシャル」公式X(旧:Twitter)で明かされたもので、2024年3月1日に永眠されたとのことです。
鳥山さんが手がけたマンガ作品はもちろんのこと、アニメ化した映像作品も好評を博し、海外でも広く愛されました。マンガ史に残るその功績は、世界中のファンが知るところですが、鳥山さんの活躍は「ゲーム業界」にも及んでいます。
国民的RPG『ドラゴンクエスト』シリーズのキャラクターデザインが特に有名ですが、鳥山さんが関わったゲーム作品は『ドラクエ』だけではありません。さまざまな作品を通してゲーム業界にも貢献した鳥山さんの活躍を3作品から振り返ります。
●夢の競演を実現させた『クロノ・トリガー』(1995年)
ファミコン・スーパーファミコンの時代に、RPGの一大ブームが巻き起こりました。その火付け役とも言える『ドラクエ』シリーズと、後発ながら頭角を現した『ファイナルファンタジー』シリーズが、競い合いながらゲーム業界を大いに盛り上げていきます。
そんなRPG黄金期の最中に生み出されたのが、スーパーファミコンソフト『クロノ・トリガー』です。中世風ファンタジーのRPGが主流だったなか、過去や未来を行き来するタイムトラベルを主軸に、SF要素も盛り込んだ意欲的な作品として大きな注目を集めました。
また本作は、メインキャラクターのデザインを務めた鳥山さんに加え、『ドラクエ』シリーズの中核的存在である堀井雄二さん、『FF』シリーズの生みの親・坂口博信さんも携わっています。
RPG黄金期の2大巨頭を生み出したクリエイター陣が結集し、まったく新しいRPGを作る。夢のような展開は、RPGファンの心を大きく揺さぶりました。ですがそれ以上に驚かされたのが、『クロノ・トリガー』の完成度でした。
シリーズの展開数自体は、『ドラクエ』や『FF』に及ばないものの、スーパーファミコン時代のRPGを語る上で、『クロノ・トリガー』の存在感はこの2シリーズと比べても引けを取りません。
『クロノ・トリガー』のパッケージを見るだけで、当時のプレイ体験が鮮やかに蘇る。そんなファンも多いことでしょう。
■00年代に『FF』坂口博信さんと再びタッグ!
『トバルNo.1』は新規IPながら、鳥山さんのデザインでたちまち目を引いた
●鳥山さんも登場!? 「つかみ」が奥深い『トバルNo.1』(1996年)
アーケードゲームの『ストリートファイターII』をきっかけに、対戦格闘というジャンルが一気に花開きました。その勢いは2D格闘だけに留まらず、『バーチャファイター』や『鉄拳』といった3D格闘にも広がり、それぞれが独自の発展を遂げていきます。
そんな時代に生まれたPlayStationソフト『トバルNo.1』は、『バーチャファイター』や『鉄拳』などに関わったスタッフが集まった「ドリームファクトリー」が開発した3D格闘アクションゲームです。本作もまた、2大巨頭に関わったスタッフが交わる、夢のような作品だったと言えます。
『トバルNo.1』が特に特徴的だった点は、「つかみ」から始まる多彩な駆け引きにあります。掴んだ後にどんな行動に移るか、掴まれた側がいかなる対応を見せるか、戦いの主導権を奪い合うやりとりが熱い作品でした。まや、上段・中段・下段の攻撃が各ボタンに割り振られているなど、3D格闘の初心者でも遊びやすい作りになっています。
鳥山さんの魅力は本作のキャラクターにも存分にこめられており、3D化を前提としたデザインやシルエットながら、一目見ただけで惹かれ、記憶に残るものになっています。また、鳥山さんをモチーフとした「鳥山ロボ」が隠しキャラとして登場する点も見逃せません。
本作の評価を受け、翌年には続編の『トバル2』も発売され、こちらでも鳥山さんがキャラデザを担当しました。
●坂口さんと再び手を組んだ『ブルードラゴン』(2006年)
2005年にマイクロソフトが発売したゲーム機「Xbox 360」は、そのパワフルな性能を活かし、『The Elder Scrolls IV: Oblivion』から『アイドルマスター』まで、幅広いラインナップで攻勢を仕掛けます。
しかし同世代の「PlayStation 3」や「Wii」の活躍もあり、特に日本市場では苦戦を強いられました。そうした状況のなか、鳥山さんがキャラクターデザインを手がけたRPG『ブルードラゴン』が、マイクロソフトから発売されます。
本作には坂口さんも深く関わっており、鳥山さんと共作するのは『クロノ・トリガー』以来。この1点だけでもゲームファンの心を揺さぶりますし、日本人の好みと「鳥山さんデザインのキャラクター」との親和性は言うまでもありません。
日本市場での拡大を狙う施策としても注目を集めた『ブルードラゴン』は、その目論見通り、国内での販売台数の後押しに貢献しました。
また、後に『ブルードラゴン プラス』や『ブルードラゴン 異界の巨獣』(いずれもニンテンドーDS)がリリースされてシリーズ展開したほか、コミカライズやTVアニメ化なども実現。鳥山さんが生み出したデザインは、さまざまな媒体に広がっていきました。
* * *
今回は、鳥山さんが関わったゲーム作品のなかでも、特に注目を集めた3本に絞ってお届けしました。このほかにも、さまざまな作品に関わっており、その影響も計り知れないほどです。
直近では、鳥山さんが短期集中連載したマンガ『SAND LAND』を原作とした、同名のアクションRPGの発売が控えています(2024年4月25日発売予定)。こうした展開が盛り上がるなか、当然の訃報に多くの人が驚き、悲しむ声が広がっています。
マンガやゲームをはじめ、数多くの作品に関わり、世界中に名作を届けたクリエイターに、哀悼の意を表します。
(臥待)
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