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両マジンガーと戦った敵幹部「ゴーゴン大公」はなぜ作品をまたぎレギュラー化したの?

マグミクス / 2024年3月17日 6時10分

両マジンガーと戦った敵幹部「ゴーゴン大公」はなぜ作品をまたぎレギュラー化したの?

■敵幹部の中でも別格の存在だった「ゴーゴン大公」

 本日3月17日は、1974年に『マジンガーZ』第68話「地獄の用心棒 ゴーゴン大公」が放映された日です。今年で50年が経ちました。このエピソードから登場した敵幹部「ゴーゴン大公」によって、本作の物語はより激しさを増すことになります。

 それまでの『マジンガーZ』の敵幹部には、夫婦のミイラを組み合わせて誕生させた「あしゅら男爵」や、首が分離して行動可能な「ブロッケン伯爵」がいました。ちなみに敵組織「地下帝国」のリーダーである「Dr.ヘル」は、マッドサイエンティストですが普通の人間です。

 ちなみに誕生の逸話として、あしゅら男爵は本来なら別のキャラクターとして描かれたものを、それぞれが半分しかなかったことから着想を得、あらためて男女半分ずつのデザインとしたといいます。ブロッケン伯爵はあしゅら男爵が縦割れだったことから、逆に横割れになったそうです。

 これに対して、人間と虎というまったく別なものを組み合わせる方向になったのがゴーゴン大公でした。ここで秀逸なのはケンタウロスのような人獣合成でありながら、各々の首が残っている点でしょう。この後に登場する「ピグマン子爵」は、この延長線上の発想だったのかもしれません。

 さらに頭がふたつある点は、続編となる『グレートマジンガー』の敵「戦闘獣」を思わせるものでした。そう考えると「ミケーネ帝国(後述)」のデザイン的には、人間大のゴーゴン大公も統一性のあるデザインだったといえるかもしれません。

 またゴーゴン大公はこれまでの幹部とは違い、『グレートマジンガー』の敵「闇の帝王」が率いる「ミケーネ帝国」の先遣隊という出自で、Dr.ヘルの協力者という立場でした。それゆえに威厳のあるスタンスは崩さず、あしゅら男爵やブロッケン伯爵のようにコメディチックな演出もほとんどありません。そうした点では強者というイメージがあるキャラクターでした。

 この「本来の敵とはまったく別な組織の一員」という第三勢力は、当時としては珍しいものだったと思います。さらにこの第三勢力が、続編ではメインの敵になるというパターンは、同一作品ならば前例はあっても、別番組となるとそう多くはありません。

 これが可能だった理由については、『マジンガーZ』の後番組が早い段階で企画されながらも、人気が高くて放送延長を繰り返したことが要因だったと思われます。つまり次回作の敵の概要が定まっているわけですから、早い段階で前番組に登場させることは容易だったのでしょう。

 またゴーゴン大公が特異的な存在だったといえるのは、前述したように「第三勢力が続編でメインの敵になる」というパターンは他作品にも見られるものの、先行作品における登場が数話程度だったことに対して、半年近く前から暗躍している点にあります。そういった点で、当時としては画期的な敵だったといえるでしょう。

 そして、このゴーゴン大公のインパクトは、マジンガーZの新しい敵となる「妖機械獣」の登場にもありました。

■新たな脅威「妖機械獣」からの「最終強化」

第68話「地獄の用心棒 ゴーゴン大公」を収録。東映ビデオ「マジンガーZ VOL.6」

 妖機械獣とは、ゴーゴン配下の機械獣のことです。Dr.ヘルの機械獣以上の性能を持っているといわれていますが、明確な違いは定義されていません。後に登場する戦闘獣との関係も不明です。

 特徴として、ギリシア神話などからモチーフと名前を得、続いての機械獣ではアルファベットだった部分がギリシア文字になっていました。その後の数字にはローマ数字を使っているものもあり、アラビア数字との違いは不明ですが特別感があります。

 奇しくも敵がギリシア神話モチーフという点で、同時期に放送開始した特撮作品『仮面ライダーX』との共通点がありました。そのため筆者と同世代の人のなかには、これら番組がきっかけでギリシア神話に興味を持つこともあったかもしれません。

 前述したように、これまでの機械獣以上の戦闘力を持った妖機械獣は、作品中でかなりの戦果をあげました。「ホバーパイルダー」を破壊してマジンガーZを出撃不能にした「グシオスβIII」、主人公サイドのメカ「アフロダイA」を破壊した「ハルピアπ7」などです。

 この妖機械獣に対抗するためにも、マジンガーZは最後のパワーアップを敢行しました。新たなコクピットとなる「ジェットパイルダー」、耳の突起部分から照射する「冷凍ビーム」、強力なトドメ技となる「大車輪ロケットパンチ」、ジェットスクランダーに初めて搭載された武器「サザンクロスナイフ」です。

 そういう意味ではゴーゴン大公と妖機械獣の登場が、本作のラスト2クールを大きく盛り上げた要因だったといえるでしょう。そして次回作となる『グレートマジンガー』への大きな足掛かりとなりました。

 そして最後に特筆するべきは、ゴーゴン大公が続編でも変わらぬ活躍を長期間、見せたことです。この「作品をまたいでレギュラーとして登場する敵キャラクター」はそれほど多くなく、数えるほどしかいません。

 よく並び評されるのは、『電子戦隊デンジマン』と『太陽戦隊サンバルカン』に登場の「ヘドリアン女王」、『機動戦士Zガンダム』と『機動戦士ガンダムZZ』に登場の「ハマーン・カーン」、『Yes!プリキュア5』と『Yes!プリキュア5GoGo!』に登場の「ブンビー」などでしょうか。

 さらに、同時期に似たような役回りの敵キャラクターとして、『イナズマン』と『イナズマンF』に登場した「ウデスパー」もいます。登場期間は短いのですがインパクトのあった敵役でした。

『マジンガーZ』の終盤を盛り上げ、その熱気を続編『グレートマジンガー』へとつなげたゴーゴン大公は、もっと評価されてもいい敵役ではないでしょうか。少なくとも、「マジンガー」シリーズを構築した立役者といってもいいかもしれません。

(加々美利治)

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