地上波放送から10年以上… 隠れた「ジブリ」の名作3選「美麗すぎ」「エモい」
マグミクス / 2024年3月15日 21時10分
■映画ではなく「スペシャルアニメ」として放送された名作
2024年3月11日、2023年7月に公開された宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』が「アカデミー賞長編アニメーション賞」に選ばれたことで、再び「スタジオジブリ」に注目が集まりました。ジブリ映画といえば日本テレビ系列の「金曜ロードショー」で数々の作品が放送されており、話題作の『君たちはどう生きるか』に対しても「早く放送されないかな」「改めて観たい」との声があがっています。
「金曜ロードショー」ではジブリ作品をまんべんなく放送している印象ですが、実は名作にもかかわらず約10年も配信されていない作品も見受けられます。今回は「再放送を熱望するジブリの名作」を振り返りましょう。
●『海がきこえる』
1993年5月5日に日本テレビ系で放映されたTVスペシャルアニメ『海がきこえる』は、『めぞん一刻 完結篇』『きまぐれオレンジロード あの日に帰りたい』などを手がけた望月智充さんが監督を務めました。ジブリ作品としては初めて外部の演出家が手掛けた作品で、氷室冴子さんが手がけた同名の青春小説を原作にしています。
東京の大学に進学した青年、杜崎拓(もりさき たく)は、駅で高校時代に気になっていた同級生の武藤里伽子(むとう りかこ)らしき人物を見かけ、そこから彼女と過ごした高校時代のことを思い出します。
高校時代、親友が才色兼備な里伽子にホレており、拓は里伽子と距離を置いていました。しかし、高3のハワイへの修学旅行でお金を貸したことを機に拓と里伽子の距離が
縮まっていくのです。
ジブリの青春作品といえば『耳をすませば』が有名ですが、2011年7月以降、「金曜ロードショー」で放送されていない『海がきこえる』も隠れた名作としてファンの間で人気を集めています。
ジブリでは珍しいファンタジー要素の含まれない作品で、「ジブリ作品らしくないノスタルジックな絵と音楽も相まって、青春特有のほろ苦い雰囲気を際立たせている」「古い作品かもしれないけど、Z世代にも通ずる青春がある」といった意見があがっていました。
子供たちも一緒に楽しめるジブリのイメージとは少し異なりますが、青春作品としての完成度は高く、なかでも懐かしさが込み上がるようなセンチメンタルな気分を堪能したい人にとって最適な作品ではないでしょうか。
■アニメ映画界の巨匠が最後に制作した2作
『ホーホケキョ となりの山田くん』のワンシーン (C)1999 Hisaichi Ishii/Isao Takahata/Studio Ghibli, NHD
●『ホーホケキョ となりの山田くん』
高畑監督による『ホーホケキョ となりの山田くん』は1999年に公開されたジブリ作品で、「金曜ロードショー」では2000年に放送されて以降、地上波放送はありません。
同作はいしいひさいち先生によるマンガ『となりのやまだ君』を原作にしており、山田家の日常をオムニバス形式で構成している作品です。夫婦に息子、娘、そして姑に1匹の犬という至って普通な一家が登場するなかで、平凡だけどシニカルでブラックなユーモアが散りばめており、さらに忙しなく生きる現代人の心の重荷がすっと軽くなるような言葉もたくさん出てきます。
個人的に記憶に強く残っているのは、小学校の先生が習字の見本で「適当」という文字を書いて「適当! 適当にね」と言い放つ場面です。映画館で視聴した当時は小学生でしたが、いま改めて見ると、当時よりも胸に響く印象があります。
実際に、ファンからは「高畑監督の理想である『生きていく支えとなるアニメ』を体現した力作」「年を重ねたからこそ分かることが多く、普通に泣いてしまった」などの意見があげられていました。
優しいタッチで描かれる登場人物と、心にじんわり染み渡る山田家の魅力を、再びお茶の間で家族と観たいものです。
●『かぐや姫の物語』
『かぐや姫の物語』に登場するかぐや姫 (C)2013 Isao Takahata, Riko Sakaguchi/Studio Ghibli, NDHDMTK
『となりの山田くん』から10年以上も間が空いてから制作された高畑監督作品『かぐや姫の物語』は、彼のアニメ映画監督人生のなかで最後の作品となりました。本作は2018年5月の「金曜ロードショー」での放送が最後のため約6年間、放送されていません。
平安時代に誕生したとされる『竹取物語』を原作にした同作は、「なぜ地球に生まれて月に帰っていったのか?」という「かぐや姫」の謎を描いています。晩年の作品のためか、登場するキャラや風景の絵のタッチは、これまでの高畑作品なかでも特に力強く、視聴後には「ジブリ史上最大の野心作」といわれている理由が分かるでしょう。
ちなみに、今も同作の公式サイトは残っており、そこの「監督の言葉」では「このような物語に、いわゆる今日性があるかどうか、じつのところ、私にはわかりません。しかし少なくとも、このアニメーション映画が見るに値するものとなることは断言できます。なぜなら、ここに結集してくれたスタッフの才能と力量、その成し遂げた表現、それらは明らかに今日のひとつの到達点を示しているからです」と述べていました。
高畑監督のラスト作品なだけあって、ネット上では「『となりの山田くん』から続く、水彩日本画の表現のレベルがさらに上がっていた。そして、何よりも演出が素晴らしい」「正直、当時観たときは良さが分からなかったけど、改めて観たときは大人になったのか、気付いたら号泣してた」「高畑作品として一生語り継がれるべき」など感動の声が多くあがっています。
「金曜ロードショー」で再度放送されるかは分かりませんが、アニメーション映画に人生を捧げた巨匠の晩作なので、観ておいて損はないのではないでしょうか。
(LUIS FIELD)
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