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「意味深」「伏線の補強?」 高評価な『フリーレン』のアニオリ描写 2クール目でさらに深みが

マグミクス / 2024年3月29日 21時25分

「意味深」「伏線の補強?」 高評価な『フリーレン』のアニオリ描写 2クール目でさらに深みが

■“ラントを威嚇する猫”が示唆するものとは?

 原作にはないアニメオリジナルの描写、いわゆる「アニオリ描写」は、かねてよりファンの間で議論の的にされてきました。そんななか、原作ストーリーの流れを崩さず、なおかつ物語を深めるアニオリ描写が評価されている作品が『葬送のフリーレン』です。

 現在放送中の第2クールは、主に「一級魔法使い試験編」のエピソードが展開されており、フリーレンとフェルンが「一級魔法使い」の資格を得るための試験に挑戦します。一気に主要な登場人物が増えるエピソードで、クセの強い魔法使いたちのキャラクター性も見どころのひとつといえるでしょう。

 そしてアニメ第22話では、一級魔法使い試験の第1次試験と第2次試験の間を繋ぐ、いわゆる日常回のようなエピソードが描かれました。この回では第1次試験を突破した魔法使いたちの日常が掘り下げられることになり、とくに理知的な眼鏡の魔法使いであるラントにまつわる描写が注目を集めました。

 ほかの合格者と馴れ合わず、ひとりでオイサーストの街を歩いていた際、路地裏で子猫の鳴き声を耳にしたラントは、柄にもなく心配したのか、子猫に一歩近寄ります。しかし親猫はすぐそばにいたようで、猫の親子はすぐさま合流を果たすのでした。

 最後は親猫から威嚇されて終わるのですが、猫の親子を見るラントはどこか人間味のある表情を浮かべており、「意味深な描写」として話題になりました。もともと彼は喜怒哀楽をまったく表に出すことがないうえに、出自やバックボーンについても謎が多く、最近の原作エピソードにてようやく情報が明かされ始めた程度です。原作ファンにとって、興味深いワンシーンだったことは間違いないでしょう。

 また第23話からは第2次試験に突入し、フリーレンを始めとした魔法使いたちが「零落の王墓」と呼ばれるダンジョンの攻略を目指しました。それぞれの魔法使いの特性をコピーした「複製体」が敵として立ちはだかるシーンでは、原作と比べて大幅に改変されたことで戦闘シーンの迫力が増しました。

 例えば宮廷魔法使いのデンケンたちが、中華娘っぽい魔法使いラオフェンの複製体を倒す場面は、原作ではほとんど戦闘描写が省略されるなか、アニメ版では彼らがどのように複製体を倒したのか、はっきり描かれています。特に自身の複製体と戦うラオフェンのアクション作画は白眉(はくび)といえるでしょう。ぬるぬる動く近接戦闘シーンに、視聴者からは「スタッフのなかに絶対ラオフェン好きな人いるでしょ」といった声すら上がっていました。

■原作エピソードから発展したと思われるアニオリ描写も

画像は『葬送のフリーレン』第23話場面カット (C)山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

 そして2クール目でとりわけ注目を集めたアニオリ描写といえば、第24話のワンシーンを挙げるべきでしょう。この回ではフリーレンとフェルン、そして試験官の魔法使いであるゼンゼの3人が、ダンジョン内を進んでいく途中に「隠し部屋」を発見します。

 ダンジョン探索が大好きなフリーレンは、珍しい魔導書が眠っている可能性にウキウキしながら廊下を調べ、隠し部屋に通じる道を開きます。その先には、「統一王朝期」と呼ばれる時代に描かれたと思われる貴重な壁画が眠っていました。

 フリーレンにとっては惹かれない発見でしたが、フェルンが「壮観ですね」と目を輝かせる様子を見ると、思わず笑顔をこぼします。お目当てのものがなくても、仲間が喜ぶ姿を見て自分もうれしくなる……そんなダンジョン探索の醍醐味を描いたエピソードといえるでしょう。原作ではフリーレンのお宝探しにフェルンが呆れるだけで終わっていたため、まさに「深み」が増す絶妙なアニオリ描写です。

 また内容としては、アニメの第4話「魂の眠る地」で描かれた新年祭のエピソードとも通じる部分があります。この話では早起きして日の出を見ても感動しなかったフリーレンが、フェルンの笑顔に触発され、心を動かされる描写がありました。隠し部屋での出来事同様に、ゼロから作り出された話ではなく、原作エピソードから発展した描写だからこそ「良改変」と原作ファンからも高い支持を受けているのでしょう。

 さらに、この隠し部屋については、今後描かれる物語の伏線になっているのではないか……と考察する原作ファンも多いようです。作中では「統一帝国」や「統一王朝期」といったワードが小出しにされていますが、この時代がどのような時代だったのか、まだまだ全貌は明かされていません。

 そんないかにも重要そうな壁画が、原作では描かれていないエピソードに登場したのです。「零落の王墓」が統一王朝期の迷宮であることは原作でも説明されているので、そのことを補強する狙いだったのかもしれませんが、伏線として解釈するのも面白そうです。

 またアニオリとは少し違いますが、原作のおまけカットで描かれた小ネタをアニメ本編に組み込む演出も評価されています。原作単行本では第54話と第55話の間に、長髪のゼンゼが「髪の手入れ? 地獄だよ」と吐露する小ネタが挿入されているのですが、アニメではこのひと言が自然な形で会話に組み込まれていました。

 このように、TVアニメ『葬送のフリーレン』は原作の魅力を歪めることなく、むしろ増幅させる形で再構築されています。アニメオリジナルのシーンがどのような意図で追加されているのかを推測するのも、またひとつの楽しみ方かもしれません。

(ハララ書房)

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