ピンクの正体は男? 初期スーパー戦隊を支えた「女形スーツアクター」の伝統とは
マグミクス / 2024年3月20日 6時10分
![ピンクの正体は男? 初期スーパー戦隊を支えた「女形スーツアクター」の伝統とは](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_219618_0-small.jpg)
■スーパー戦隊初期にはスーツアクトレスはほとんどいなかった
1975年『秘密戦隊ゴレンジャー』に登場したモモレンジャーは、はじめて男性と対等に戦う画期的なキャラクターでした。女性メンバーはスーパー戦隊シリーズに欠かせない存在になりますが、シリーズ当初の変身後のスーツアクトの多くは女形スーツアクター、つまり男性によって演じられていました。
『ゴレンジャー』のスーツアクトは当初、1971年からの『仮面ライダー』シリーズと同じく大野剣友会が担当し、モモレンジャーは清田真妃さんが演じています。しかし、途中でJAC(ジャパンアクションクラブ)に交替となり、そこから男性が担当するようになりました。
女性でアクションができたとしても、男性より身長が低いので、当時の大きい仮面とバランスが悪く、体型も細身なので強く見えないのも理由としてあげられます。
1979年『バトルフィーバーJ』のミスアメリカのスーツアクトはモモレンジャーことペギー松山を演じていた小牧りさ(現、リサ)さんや、小野寺えい子さんが演じましたが、1980年『電子戦隊デンジマン』からは、のちにアクション監督になる竹田道弘さんがデンジピンクを担当しました。
最初は女役をイヤイヤしていた竹田さんでしたが、プロデューサーの吉川進さんから「中途半端だねぇ」と言われてから一念発起し、スナックに通って夜のお姉さんたちの仕草を研究、女性よりも女性らしい形を追求していったそうです。
やがて、真田広之さんなどJACクラブに所属する俳優の名が知られるようになると、JACにも女性が加入するようになります。そして『大戦隊ゴーグルファイブ』の後半からは竹田さんに代わって、志村忍さんがゴーグルピンクを担当しました。
しかし、女性がピンクのスーツを着るだけでは、女性らしく見えないことが浮き彫りになります。当然ですが、女性は普段から女性なので、あえて女性らしい仕草など意識しません。
志村さんはゴーグルピンクの桃園ミキ役である大川めぐみさんの女性らしい演技や、竹田さんの女らしい形を出せずに苦心しました。スーツに詰め物をして、体の曲線を強調して工夫したそうです。
■「女性より女性らしく」の理想を求めて女形スーツアクターの技術は発展した
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そして、1984年『超電子バイオマン』になると、女性戦士がピンクとイエローのふたりになります。
竹田さんに加え、それまで怪人や戦闘員のスーツに入っていた辻井啓伺さんがイエローのスーツアクターに抜擢されたものの、第1話の試写を見たときに、どう見てもマッチョ体型で女性に見えなかったため、体を鍛えるのをやめて、できるだけ細く見えるように努力したといいます。
また、鈴木美潮さん著『スーツアクターの矜持』(集英社インターナショナル)によると、『バイオマン』のピンクファイブ/桂木ひかる役の牧野美千子さんは、竹田さんのピンクを「柳のようにしなやかで動きにも丸みがある。首の傾げ方、頷き方なんて最高に可愛くて瑞々しい」と絶賛し、竹田さんに寄せてひかるの役を作ったそうです。
竹田さんによって女形スーツアクターのポジションが確立し、以後、蜂須賀祐一さんらによって受け継がれていきます。
21世紀になって仮面が小さくなったスーパー戦隊では、女性キャラはスーツアクトレスが演じるケースが多くなり、それとともに女性キャラだからといって、女らしい仕草にこだわることも少なくなりました。
2005年『魔法戦隊マジレンジャー』のマジブルーを皮切りに、数々の戦隊の女性戦士のスーツアクトを担当した野川瑞穂さんは、2015年の「リアルライブ」のインタビューで「キャラクターの性格には合わせますが、『女の子だから』と言って可愛く演じるのではなく、女性の私でしかできない『リアル』な戦う女の子を心掛けています」と語っています。
約50年の歴史を持つ戦隊シリーズでは、女性戦士に求められるポジションや演技も、時代によって変わっていったことがうかがえます。
(LUIS FIELD)
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