えっ…「不適切」過ぎません? 昭和の「ヤバいアニメ3選」 お色気、暴力、スポ根が満載
マグミクス / 2024年3月18日 7時10分
■視聴率20%! 抗議殺到! 伝説のお色気アニメ
阿部サダヲさん主演、宮藤官九郎さん脚本のドラマ『不適切にもほどがある!』が人気を博しています。昭和の時代から令和へとタイムスリップしてきた中年男性が主人公の物語で、ドラマのなかには今から見ると明らかに「不適切」な昭和の文化や考え方が次々と登場します。
昭和の時代には、お茶の間で流れたテレビアニメにも、今から見ると驚くほど「不適切」な表現や設定がたくさんありました。そんな作品を3つご紹介したいと思います。
●『まいっちんぐマチコ先生』
「不適切」といえば、真っ先に思い浮かぶのが、お色気ギャグアニメの『まいっちんぐマチコ先生』です。1981年からテレビ東京系列で放送されていました。グラマラスな肢体を惜しげもなく晒し、教え子のケン太たちから常に「ボインタッチ」をはじめとするセクハラを受け続けても「いや~ん、まいっちんぐ!」とポーズを決めるマチコ先生の姿が、昭和の小学生男子を直撃しました。
同作品は視聴率が20%を超える大人気アニメになり(布川郁司『クリィミーマミはなぜステッキで変身するのか?』)、「まいっちんぐ」は「チョメチョメ」や「ニャンニャン」と並ぶ昭和のお色気フレーズとして市民権を得ることになります。
原作者のえびはら武司先生は、藤子・F・不二雄先生のアシスタント時代、まわりのアシスタントが品行方正なマンガを描いているのを見て「お色気マンガを描いてやろう」と考え、うっかりノーパンで学校に来てしまった先生が主役の短編『マチコ先生のパンティー』を執筆します。それが学研の人に高い評価を得て『マチコ先生』の連載が始まったそうです。
「ボインタッチ」は『ハレンチ学園』の「スカートめくり」に対抗して編み出されたもの。マチコ先生のモデルは当時人気だったアグネス・ラム、宮崎美子、大場久美子でした(『昭和50年男』vol.15)。
全裸でのシャワーシーンは当たり前(OPに含まれている)、マチコ先生の服はしょっちゅうはぎ取られ、のぞきや「ボインタッチ」は教え子だけでなく同僚の教師や校長も一緒になって行っていました。とはいえ、全体のムードはカラッと明るく、教え子たちがマチコ先生の窮地を助けるエピソードや、人情もののエピソードも少なくありません。
正月や改編期には特別番組を放送するほどの人気でしたが、いくら昭和でも『マチコ先生』の性表現は看過されませんでした。「『まいっちんぐマチコ先生』に抗議する会」が発足するなど抗議運動が広がっていき、放映中止と原作マンガ回収を要求する署名運動、さらに原作マンガの版元である学研の学習誌の不買運動に発展します。
当時の資料によると、抗議の主眼は『マチコ先生』が男性にとって都合のいい女性像を描いていること、女性を性的な対象としてしか見なしていないことにあったようです。しかし、抗議によってアニメが打ち切られることはなく、『マチコ先生』は結局足かけ3年にわたって全95話が放送されました。
■「何から何までアウト」な女子バレー監督
アニメ『アタッカーYOU!』の主題歌「青春プレリュード」(ビクター/廃盤)
●『アパッチ野球軍』
『アパッチ野球軍』は1971年からNET(現・テレビ朝日)系列で放映された野球アニメです。「おれたちゃ裸がユニフォーム」というパンチの効いた主題歌を記憶している人も多いでしょう。『番頭はんと丁稚どん』や『どてらい男』などで知られる脚本家、花登筺による原作をもとに、花登自身が脚本を手がけました(梅谷卓司と共同)。
元甲子園のスター選手だった堂島剛が四国の片田舎にある猪猿村にやってきて、私塾で野球を教えるという物語です。ダムを建設中の村は一種の無法地帯であり、「アパッチ村」と呼ばれて恐れられていました。
第1話から衝撃のシーンがあります。堂島が村にやってきたところ、巨漢の男と人相の悪い男が校長の孫娘、千恵子を襲っていたのです。服を引き裂かれ、男たちに抑え込まれている千恵子を間一髪で堂島が救出しますが、とても子ども向けアニメの描写とは思えません。しかも、男たちは悪役ではなく、私塾の教え子で後にチームメイトになるのです。千恵子も男たちをあっさり許しました。この村では日常茶飯事なのでしょうか。
生徒たちだけでなく、ダムをめぐって大人たちも殺気立っている村では、ケンカや嫌がらせにナイフ、斧、ダイナマイトなどが次々と飛び出します。物騒すぎる村ですが、堂島は体を張って教え子たちを受け止め、ルールから野球を教えていきます。野球道具の購入費用を使い込まれてしまったため、ろくにバットもグローブも揃わないなか、堂島が素手の生徒たちに強烈なノックを打ち込む場面など、もはや「ケツバット」どころではない厳しさです。
村長選挙をめぐる大人たちのダークな思惑を乗り越え、一致団結した「アパッチ野球軍」の面々は血まみれの猛特訓を積み重ねながら少しずつ成長し、強豪QL学園との練習試合にも勝利します(最後は大飛球をバックスクリーンによじ登ってキャッチしてアウト。野球の通常ルールならホームラン)。最終回(第26話)では、メンバーたちの成長を見届けた堂島は惜しまれつつ村を去ろうとしますが、去り際に塾長が「土産じゃ」と孫娘の千恵子を差し出し、ふたりは四国を去っていきました。
昭和の野蛮さとデリカシーのない描写が全編にわたって続くので、限定生産のDVDボックスが一度発売されたきりですが、荒々しい作画と社会派でもある骨太な物語は一見の価値があります。ぜひとも多くの人に観てもらいたい作品です。
●『アタッカーYOU!』
1984年のロサンゼルス五輪にあわせて制作された『アタッカーYOU!』は、バレーボール選手として活躍する中学生の少女を描いた少女向けスポーツアニメです。テレビ東京系列で全58話が放映されました。少女向けにもかかわらずサービス(?)シーンが多く、第1話から主人公・優がトップレスになる場面があります。ほかにもシャワーシーンや風呂のシーンが何度となく登場しました。
当時の風潮を反映して、指導者がやたらと暴力的なのも特徴です。バレーボール部のスパルタ監督・大門は常に竹刀を携帯し、女子部員に体が吹き飛ぶほどの平手打ちをくらわせます。とあるエピソードでは、エースにもかかわらず手首を骨折した優に激昂した大門監督が平手打ちを浴びせた上、なんとユニフォームを無理やり剥ぎ取ってしまいました。止めに入る女子部員たちを薙ぎ払い、「お前たちは女じゃない。女だと思っているから試合に勝てないんだ」と怒声を浴びせて去っていく大門監督。エースの自覚に目覚めた優は上半身ブラだけの姿で、骨折した反対の手を使ってスパイクの練習を再開するのでした。
優は中学卒業後、実業団チームに所属して全日本代表入りを目指しますが、大門監督は親友でライバルの奈美が所属するチームの監督として立ちはだかります。試合前、優との再会を喜ぼうとした奈美の首元に竹刀をあてて恫喝。「ちきしょう、暴力監督め」と怒りを燃やす優の回想に出てきたのは、監督が奈美を平手打ちし、ユニフォームを引き裂いて下着姿にする場面でした。どうやらこのような暴力が日常的に行われていたようです。良い面も描かれていましたが、現代の目で見ると何から何までアウトな監督だと思います。
本作は、日本ではそれほど人気がでませんでしたが、イタリアやフランスで爆発的なヒットとなり、イタリアでは続編『NEWアタッカーYOU 金メダルへの道』が制作されました。イタリア女子代表チームで主将を務めたクリスティーナ・キリケッラも本作がきっかけでバレーボールを始めたそうです。なお、本作のヒットがイタリアのプロバレーボールリーグ創設のきっかけになったと言われていますが、真相はさだかではありません。
どの作品も、子ども向けにゴールデンタイムに放送されたり、夕方に再放送されていたりしたのが信じられないほど「不適切」な描写が続出していました。令和の現在、地上波放送はとてもかなわないと思われますが、お断りの字幕などを入れた上で作品を観る手段は用意されてほしいものです。
(大山くまお)
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