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巨大ロボット登場はなぜ第5話から? 逆境をチャンスに変えた『バトルフィーバーJ』

マグミクス / 2024年3月29日 7時10分

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■巨大ロボットのルーツは『スパイダーマン』

 スーパー戦隊の新番組がスタートすると、どんな巨大ロボットが登場するのか楽しみになる方は多いのではないでしょうか。『爆上戦隊ブンブンジャー』の「ブンブンジャーロボ」は、ブンブントレーラー、ブンブンオフロード、ブンブンワゴンの3台が「バクアゲ合体」するシーンがダイナミックです。

 巨大ロボットは、昭和から平成初期まではシリーズ第1作目と言われた『バトルフィーバーJ』から登場しています。番組は1979年放送で、今年45周年を迎えました。

 ロボットの名は「バトルフィーバーロボ」です。第1話でババ~ン!と登場して、視聴者のハートをガツーンとわしづかみ!……かと思いきや、なんと登場は第5話からでした。なぜこんな中途半端な登場だったのでしょう。今回はその謎に迫ります。

 スーパー戦隊シリーズの定番といえる巨大ロボットには、意外なルーツがあります。きっかけは、東映の日本版特撮『スパイダーマン』でした。等身大のスパイダーマンが全長60mのロボット「レオパルドン」に乗り込んで操縦するという斬新な設定が大好評で、関連グッズの売上げも上々となります。放送は78年5月~79年3月まででした。

 この「巨大ロボット登場のギミックを受け継ごう」と動いたのが、79年2月スタートの『バトルフィーバーJ』です。「戦隊」は前作『ジャッカー電撃隊』が不調で打ち切りとなったため、空白の半年間があっての出直しの新番組でした。復活を賭けた目玉として、巨大ロボットの登場を決定します。

 ただ、スタッフは時間に追われていました。製作が決定したのは78年10月です。4か月後の2月に番組はスタートします。当時、特撮ドラマの新番組は、通常8か月前には始動していたので、なんと4か月もタイトスケジュールです。

 作業は超急ピッチで進めましたが、どうしても巨大ロボットが第1話に間に合わないことが早い段階で決定してしまいます。これにはいくつかの理由がありました。

■「秘密兵器?いつ完成するんですか」「近々とだけ言っておこう」

「バトルフィーバーロボ」についても書かれている『カラー版 超合金の男 -村上克司伝-』(小野塚謙太・著/アスキー新書)

「ロボットデザインが遅れたこと」もその一因です。デザイナーは、数多くのヒーローロボットのデザインを手がけた重鎮、村上克司さんが担当しています。「多忙で急な発注だから遅れたのだろう」と思われそうですが、その裏側で村上さんのプロ魂がうなっていました。

 村上さんは、『スパイダーマン』の「等身大ヒーロー+巨大ロボ」という図式を単純に継承するのではなく、オリジナリティを出したいという想いから、巨大ロボットをさらに大きな飛行母艦に格納するというアイデアを打ち出します。そして完成したのが、万能戦闘母艦「バトルシャーク」と巨大ロボット「バトルフィーバーロボ」でした。

 特に、ロボットの着ぐるみは作成に時間がかかります。加えて、特撮監督である矢島信男さんのスケジュールの都合などがあって、どうしても第1話から戦闘シーンを撮影するのは不可能だったのです。

 番組の目玉が第1話から勝負できないとは、痛い船出です。しかし、番組はそれを逆手に取り、「ロボットは建設中」というフックを入れました。実は第1話で、基地で建設中の「バトルフィーバーロボ」の姿が数秒だけ差し込まれています。このときのセリフは……

「ひえ~でっかいねぇ、なんですかこれは?」
「エゴス(※敵組織)と戦うための、バトルフィーバーの秘密兵器だ」
「秘密兵器? で、いつ完成するんですか」
「近々とだけ言っておこう」

 この他、第3話では「バトルフィーバーロボ」の設計図が盗まれるなど、毎回ロボットの伏線を張って子供たちのワクワク感をあおりました。

 そして、第5話「ロボット大空中戦」の放送を迎えます。戦闘母艦「バトルシャーク」とエゴス戦闘機の空中戦が派手に展開され、いよいよ巨大ロボット「バトルフィーバーロボ」登場! 「キターー!」という叫び声が聞こえてきそうなお披露目です。

「バトルフィーバーロボ」は戦国武将の甲冑に、下半身は西洋の鎧をイメージしたデザインで、にらみを利かせたような顔はインパクトを与えるため意識的に子供たちが見て「怖い」と思うようにしたそうです。「バトルフィーバーロボ」は、初戦で悪魔ロボ「バッファローロボット」と大激闘を演じました。

 また、ロボット登場が遅れた分、巨大ロボの戦闘シーンはじっくりと創ることができたそうで、演出も高評価をうけました。のちに、この第5話は、79年「東映まんがまつり」内でブローアップされて劇場公開になっています。

「バトルフィーバーロボ」は瞬く間に大人気となり、超合金をはじめとする番組の関連グッズは大ヒットします。そして、スーパー戦隊はシリーズ化され、必ず巨大ロボットが登場するという黄金の方程式が確立されていくのです。

『バトルフィーバーJ』は勝負を賭けた巨大ロボット登場が後手に回ったものの、逆境をチャンスに変え好転させました。巨大ロボットが戦わない4話までがなければ、45年後の今もなかったかもしれません。

(石原久稔)

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