救い無さすぎじゃね? 世紀末に観る者の心をエグりまくった90年代トラウマアニメ3選
マグミクス / 2024年3月26日 20時10分
■正面から戦争を見据えるとこうなる
1995年に『新世紀エヴァンゲリオン』が大ヒットを飛ばして以降、多くのクリエイターが個性を発揮し多くのチャレンジングなアニメが制作されました。それらの中でも特にキツイ描写で視聴者にトラウマを植え付けた3作品を見ていきましょう。
●『serial experiments lain』
1998年に放送された『serial experiments lain』は、高度なネットワーク社会で「リアルワールド」と「ワイヤード(ネット)」の境界が徐々に曖昧になっていくストーリーが描かれました。
主人公の「岩倉玲音(いわくられいん)」は14歳の内向的な女の子です。彼女の普通の生活は、自殺した同級生からメールが届いた日から徐々に何かが変化し始めます。次々と発生する奇怪な事件、正反対の性格をしたもうひとりの自分の目撃情報、リアルワールドとワイヤードの境界をさまようなか、玲音は徐々に自分を理解できなくなっていきます。やがて明かされるさまざまな謎と共に、玲音は破滅へと向かっていくのでした。
まだインターネット黎明期の作品であるにも関わらず、現代のネットが抱えるデマや誹謗中傷といった問題を取り扱っており、人間という存在がネットワークに繋がった際のシミュレーションとしても高い先見性を備えた作品です。デジタルとアナログを融合した不思議な質感を持つアニメである点も見逃せないポイントです。
■閉鎖空間におけるトラウマ必至の群像劇!
「EMOTION the Best 無限のリヴァイアス DVD-BOX」(バンダイナムコフィルムワークス) (C)サンライズ
●『無限のリヴァイアス』
1999年から2000年にかけて放送された『無限のリヴァイアス』も、陰惨な描写に定評があります。
航宙資格取得のために航宙士養成所「リーベ・デルタ」を訪れた主人公の「相葉昴治」は、テロリストの襲撃を受け、弟や幼馴染たち487名の少年少女と共に、隠されていた外洋型航宙可潜艦「リヴァイアス」に乗り込み宇宙へと飛び出す羽目に陥ります。大人たちは全員殉職し、極限状態にある艦内では、艦の指揮権や物資の配給を巡って、少年少女同士が陰惨な争いを繰り広げるようになりました。
謎の敵からの襲撃を受けるなどさらに状況が混迷を極めるなか、ついには昴治の友人である「和泉こずえ」が集団暴行される事件まで起こりパニックは頂点に達します。恐怖に支配されながらも逃避行を続ける「リヴァイアス」でしたが、最強の敵「灰のゲシュペンスト」との戦いの最中、昴治の命を賭した行動により物語は終焉を迎えます。極限状態の少年少女たちが閉鎖空間で生き抜くなか、物語の進行と共に移り変わる人の心を描いた群像劇として極めて高いレベルの作品です。
「今、そこにいる僕 VOL.1」(パイオニアLDC) (C)1999 丙tarty・AIC/ジェネオン ユニバーサル エンタテインメント
●『今、そこにいる僕』
1999年から2000年にかけて放送された『今、そこにいる僕』は、TVアニメ『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』などを手掛けギャグが得意とされていた大地丙太郎監督が、ギャグを封印し戦争の残酷さに正面から取り組んだ作品です。『装甲騎兵ボトムズ』など多くの作品を手掛けた高橋良輔氏が特別協力という形でクレジットされているだけではなく、一流クリエイターたちが数多く参加しており、クオリティの高さが陰惨さを際立たせているのが大きな特徴です。
おそらく昭和の後期と思われる時代、とある田舎の港町に住んでいたごく普通の中学生の少年「シュウ」は、不思議な色の瞳を持つ少女「ララ・ルゥ」に出会います。仲良くなったふたりでしたが、突然目の前に異様な機械が現れ、50億年後の未来へと飛ばされてしまうのでした。
「狂王ハムド」が支配する「空中移動要塞ヘリウッド」へと送り込まれたシュウは、そこで荒廃しきった世界を目の当たりにします。また、ララ・ルゥと間違えて連れてこられた、シュウと同時代の少女「サラ」は、人違いだとわかると少年兵たちの慰安婦として使われていました。シュウもさまざまな苦境や困難な目に遭い続ける中で兵士として徴兵されてしまい、戦場の現実を目の当たりにします。
虐殺や暴行をはじめとする陰惨な描写が続く本作は、最後まで誰も報われることなく幕を閉じます。ハムドというひとりの異常者のために運命を捻じ曲げられ苦しみ抜く人々が、命がけで踊る狂騒曲のような作品といえばよいのでしょうか。メンタルが弱っているときに観るのは、あまりお勧めできません。
(早川清一朗)
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