エグさに定評ある富野由悠季監督作品「民間人が犠牲になる」トラウマ必至な3つの悲劇
マグミクス / 2024年3月31日 6時10分
■トラウマの代名詞
富野由悠季監督が手掛けた作品では、戦いの中で民間人が犠牲になる描写がしばしば登場し、時には強烈なトラウマとなることがあります。そうしたなかから、特に戦いの残酷さが際立つエピソードを3つ、見ていきましょう。
●「人間爆弾」 『無敵超人ザンボット3』
『無敵超人ザンボット3』の第16話「人間爆弾の恐怖」から第19話「明日への脱出」にかけて登場した「人間爆弾」は、おそらく富野監督作品の中でも最も残虐で、最も多くの子供にトラウマを植え付けた存在といえるでしょう。
謎の宇宙人「ガイゾック」の攻撃から逃れるため疎開しようとした避難民たちが爆発し、大勢が犠牲になる事件が各地で発生するようになっていました。ガイゾックの司令官「キラー・ザ・ブッチャー」は避難民を集めてキャンプに収容し、人間爆弾へと改造を施していたのです。改造された人間はみな背中に星の形の痣があり、爆弾を取り外す手段はありませんでした。爆弾に改造されたことを知った人々は迷惑が掛からないように荒野で爆死することを選び、このとき主人公「神 勝平(じんかっぺい)」の友人である「浜本」も、両親に助けを求めながら爆死しました。
そして18話「アキと勝平」では、勝平のガールフレンドである「アキ」も人間爆弾に改造されたことが判明します。勝平はそうと知らず宇宙船「キングビアル」内の自分の部屋にアキを招き入れていました。やがて部屋を離れた際に、家長の「神兵佐ェ門」から「人間爆弾に改造されていたらどうするのか」と問い詰められた勝平は、急いで部屋に戻ろうとしますが、アキはそのまま爆死してしまい。勝平のアキを呼ぶ声が空しく響くのでした。
最終的には、ある技師が好きな時に起爆できる技術を確立し、自爆してガイゾックの母艦である「バンドック」の外壁に穴を開ける戦果を挙げ一矢を報いてはいますが、あまりにも残虐かつ容赦のないストーリーに当時の子供たちが受けた恐怖と戦慄はかなりのもので、アニメのトラウマを語るときに今でもしばしば「人間爆弾」の名前が挙がるほどのインパクトを残しています。
■容赦の無い突然の死
『伝説巨神イデオン』 (C)サンライズ
●「ミハル・ラトキエ」 『機動戦士ガンダム』
『機動戦士ガンダム』第27話「女スパイ潜入!」から第28話「大西洋、血に染めて」に登場した「ミハル・ラトキエ」は、生活のためにジオン軍のスパイとして雇われていた少女です。地球連邦軍のベルファスト基地のそばで弟と妹を養いながら暮らしていたミハルは、「現地スパイ107号」として基地の情報をジオン軍に提供していました。
ある日、おなじみ「ホワイトベース」がベルファストに入港し、「カイ・シデン」と出会ったことからミハルの運命は大きく変化します。ホワイトベースに潜入し、船内に弟や妹と同世代の子供(カツ、レツ、キッカ)がいることを知り、自らの諜報活動によりホワイトベースの危機を招いたことを悔いたミハルは、自らも何かしなければと思い立ち、カイに頼んで輸送攻撃機「ガンペリー」に同乗したのです。そしてミハルは戦闘の最中、発射システムが故障したミサイルを手動で発射、爆風に吹き飛ばされ大西洋に若い命を散らしました。
●「戦禍に斃れる人々」 『伝説巨神イデオン』
『伝説巨神イデオン』も、多くの民間人が「バッフ・クラン」との戦いの中で命を散らしました。なかでも特に印象深い最期を遂げた人物を挙げるとすれば、「キッチ・キッチン」と「ノバク・アーシュラ」になるでしょうか。
「キッチ・キッチン」は主人公の「コスモ」が「キャラル星」で出会った少女で、バッフ・クランの攻撃で親を失った子供たちと暮らしていました。TV版では第25話「逆襲のイデオン」で、「ダラム・ズバ」の手で射殺されています。劇場版「発動篇」では序盤に爆撃を受けて死亡し、吹き飛んだ首がコスモのヘルメットのバイザーに映り込むという衝撃的なシーンが描かれました。
「ノバク・アーシュラ」はバッフ・クランの襲撃で親を失い、宇宙船「ソロ・シップ」で保護されていた少女です。その最期は、ソロ・シップ内での白兵戦の際に吹き飛んだ敵兵士の死体に気を取られた瞬間に、白兵専用機動メカ「ジョング」の砲撃を受けて頭部を吹き飛ばされるという、あっけなく残酷なものでした。
(早川清一朗)
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