「あと少しで18禁」「上映禁止?」 衝撃しかない「R指定」アニメ映画たち
マグミクス / 2024年4月3日 21時25分
■ブラックユーモアにも程がある? 納得の「R15指定」作品
アニメなのに、子供は絶対に観てはいけない……。世のなかには、さまざまな事情によって「R15指定」に区分されてしまった作品が存在します。もしかしたら子供はおろか、大人でさえ観るのに勇気が必要かもしれません。今回は、そんなアニメ映画の数々を振り返ります。
●最低で最高な問題作『サウスパーク 無修正映画版』
1997年より放送されているアメリカのアニメ『サウスパーク』は、架空の街サウスパークを舞台に、主人公の少年4人がドタバタ劇を繰り広げるブラックコメディです。
丸みを帯びた可愛らしいキャラクターデザインからは想像もつきませんが、その内容は下ネタや暴力描写、人種差別、放送禁止用語、果ては実在する著名人への名指し攻撃などのオンパレードとなっています。痛烈な社会風刺をこれでもかというほど盛り込み、あらゆる方面に喧嘩を売った「全方位攻撃型」のアニメといっても過言ではないでしょう。
そんな問題作の劇場版『サウスパーク 無修正映画版』(1999年)は、文字通り「ピー音」やボカシが一切ありません。にもかかわらず社会風刺やブラックジョークが満載で、国によっては上映禁止になってしまったところもあります。
カナダの下ネタ漫才コンビ「テレンス&フィリップ」に子供たちがハマったことをきっかけに、PTA主導でアメリカvsカナダの戦争が起きてしまうという内容で、さらに地獄に落ちた後にサタンを愛人にしたサダム・フセイン(当時存命)が地上制服を狙うという危機も描かれました。ストーリーだけでなく、強烈な人体破壊描写や衝撃的な「ウィノナ・ライダーの○○」などの下品なネタも満載です。それでもネット上のレビューは高評価をマークしており、「最低で最高の作品」などと評する声が相次いでいます。
●「R18指定」一歩手前だった『TATSUMI マンガに革命を起こした男』
劇画誕生に重要な役割を果たした第一人者である漫画家、辰巳ヨシヒロ先生の半自伝的作品などをもとに制作されたアニメ映画『TATSUMI マンガに革命を起こした男』(2014年)は、危うく「R18指定」になりかけた作品です。
96分にわたる本編には、「地獄/HELL」を始めとした強烈な短編5作が収録されており、そのなかのひとつ「グッドバイ/GOOD-BYE」は、米兵相手に娼婦をしているマリコを主人公に据えたエピソードでした。その内容があまりにも大人すぎるゆえに、レイティング審査に抵触してしまい、泣く泣く本編に修正を入れてR15指定に留めたといいます。
全体的に人間の心理を抉るような描写が多い同作は国内外で高い評価を得ており、俳優の斎藤工さんや漫画家のちばてつや先生も絶賛のコメントを寄せていました。
●すべてのタブーが詰まった禁断のアニメ映画『地下幻燈劇画 少女椿』
1992年制作の『地下幻燈劇画 少女椿』は、漫画家の丸尾末広先生によるカルトマンガ『少女椿』が原作で、奇形、内臓露出、動物殺傷、児童虐待、強姦、エログロなど、さまざまなタブーを集約した世界観で知られています。アニメ映画版は『ドラえもん』や『めぞん一刻』の原画、動画も担当したアニメーターの原田浩さんが、絵津久秋名義で演出、台本、作画、監督など何役もこなし4年の歳月をかけて作られました。
物語は母親の死により、主人公のみどりちゃんが見世物小屋へ引き取られるところから始まるのですが、そこで待ち受けていたのは芸人仲間から虐められるツラい日々でした。生きた鶏を食べるよう強要されたり、大事にしていた子犬たちを無惨に殺されたり、とにかく陰鬱で悪趣味な展開が満載です。
過激な内容に加えて、紙吹雪やスモークなどを使う「仕掛け上映」が何度も行われており、配給担当の密閉映劇霧生館の公式サイトによれば、過去に東京下井草御たけ神社境内や、東京板橋区の某マンション地下室など、映画館ですらない場所でもたびたび上映されています。また、一般的な映画館で上映する際には、映倫通過版のフィルムを使用し、なおかつR15指定をつけて上映されました。
国内外で何度も上映され好評を得るも、1999年にスペインの「サンセバスチャン ホラー&ファンタジー映画祭」参加後に成田税関でマスターフィルムが没収され、製作会社に書類が届いて「国内輸入禁止、上映禁止」扱いとなるなど、さまざまな逸話も込みで伝説のアニメ映画となっています。
おぞましくも耽美的な世界観が高い評価を受けており、ネット上には「グロテスクなのに美しさを感じてしまう不思議」「あの時代のグランギニョル的ないかがわしさはいつ見てもぞくぞくする」「なかなか見れない分、見れた時の喜びはすごい」と根強い支持を受けています。
(ハララ書房)
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