「完成度高っ!」未完の大作の代名詞『ガラスの仮面』40年前のアニメ第1作を振り返る
マグミクス / 2024年4月9日 12時10分
■『ガラスの仮面』初のアニメ化から40年
4月9日は、TVアニメ『ガラスの仮面』(エイケン版、1984年)の放送がスタートしてから40周年に当たります。全22話+総集編1話にて、当時としては珍しく原作に忠実な形でのアニメ化がなされ、主人公の「北島マヤ」が舞台『奇跡の人』の「ヘレン・ケラー」役で助演女優賞を受賞したのち、大河ドラマに出演決定するまでのストーリーが描かれました。
美内すずえ先生による同題の原作マンガは、白泉社のマンガ雑誌「花とゆめ」1976年1号(1975年12月発売)より連載が開始されています。中華料理店の住み込み店員の娘である北島マヤが、往年の大女優「月影千草」に見いだされて役者としての才能を開花、もうひとりの主人公である「姫川亜弓」と自らの存在を賭けて、舞台「紅天女」の主演の座を巡り切磋琢磨していく圧巻のストーリーには、人の心を捕らえて離さない魔力が宿っているようにも思えるものです。
「紫の薔薇の人」こと「速水真澄」とマヤの果たされぬ愛の行方にはどう決着が付くのか、二転三転する状況を気に揉みながら過ごしてきたファンの中には、おそらくもう他界された方もいることでしょう。この大傑作が2024年現在も未だ完結に至っていないのが残念でなりません。
さて、『ガラスの仮面』は過去にスピンオフまで含めて何度もアニメ化されていますが、その最初となるのが上掲の、1984年に放送された作品です。原作付きのアニメは改変されることも多い時代であったなか、かなり原作に忠実な仕上がりとなっており、特にキャラクターデザインについてはスタッフと美内すずえ先生が直接打ち合わせを行ない、キャラクターや世界観を損なわないように配慮がなされていたといいます。
特に月影先生は、原作通り威厳と迫力を損なわない存在感を醸し出していますが、1997年に放送されたTVドラマでも野際陽子さんが「本物にしか見えない」と評判になった月影先生を演じています。美内先生にとって非常に強い思い入れのある重要ポイントなのかもしれません。
そのようなエイケン版『ガラスの仮面』について、当時、視聴していた筆者の脳裏に今もなお強い印象と共に焼き付けられているのが、オープニングアニメーションです。最初に「ガラスのように もろくこわれやすい仮面 人は素顔を隠して それをかぶる」とナレーションが入るところなど、子供時代の筆者は背筋を伸ばすほどの威厳を感じたものです。
■オープニングのマヤは絶えず笑顔だが……
「想い出のアニメライブラリー 第63集 ガラスの仮面 Blu-ray」(ベストフィールド) (C)美内すずえ/エイケン
ナレーションの後に始めるオープニングアニメーションは、黒一色を背景にレオタード姿のマヤが躍動する極めて特徴的なスタイルで、当時としては少々、煽情的なレベルであったように思います。
次々と登場するキャラクターたちがみな一様に自らの意志を秘めた表情をしているなか、ただひとり、マヤのみが笑顔というのも目を引くポイントでした。しかし、この目を見開いたマヤの笑顔はどこか空虚さを感じさせられるものであり、もしかしたら「仮面をかぶって踊っているのではないか」「仮面をかぶっていない時のマヤの顔とはこういうものではないのか」と考えさせられる演出でもあります。
ストーリーとしては前述したように、マヤと月影先生を次々と試練が襲う中、マヤの圧倒的な才能と紫の薔薇の人をはじめとする周囲の支援で切り抜け続けるという、ほぼ原作通りの展開が続きます。舞台「奇跡の人」の演技でマヤが表彰され、月影先生がそれまでのマヤに加えて、亜弓も「紅天女」の主演候補として指名するところで完結しました。総集編はストーリー全体を月影先生の視点から描いており、タイトルは「わたしのマヤ」と、極めて深い意味を感じさせるものとなっています。
その後にマヤを待ち受ける陰謀と凋落、そして再起までを描くまでには至らなかったエイケン版ながら、当時のアニメとしては非常にクオリティが高い作品となりました。
なおTVアニメ『ガラスの仮面』にはその後、2005年から2006年にかけTV放送された「東京ムービー(現トムス・エンタテインメント)版」が存在します。エイケン版とはつながりのない新作として再アニメ化されたもので、原作の41巻までを忠実になぞり、独自解釈で一応の決着がつけられています。
しかし難しいのはわかっていますが、やはり長年の読者としては原作の完結を待ち望んでいるというのが本音ではあります。原作の最新刊である49巻が発売されてから12年が経ちました。二番目の掲載誌だった「別冊花とゆめ」は6年前(2018年)に休刊しましたが、最初の掲載誌だった「花とゆめ」本誌はまだ残っています。「連載再開」の文字を見たいのは、まだ日本中に大勢いらっしゃるはずなのです。
(早川清一朗)
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