「グロいのに」「一応R指定じゃない」 トラウマ級だけどアート性も高いアニメ映画
マグミクス / 2024年4月14日 16時5分
■「ゲキメーション」って何?
毎年何本も作られるアニメ映画のなかには、観客を怖がらせて強烈な体験をさせることが目的の作品もあり、観る人によってはトラウマになる場合もあるでしょう。描写の過激さでレーティングが設けられることもありますが、ギリギリのラインで全年齢が鑑賞可能な作品もあります。今回は近年のアニメーションの技法も独特な、トラウマ級の作品を振り返ります。
●『バイオレンス・ボイジャー』
『バイオレンス・ボイジャー』は、『燃える仏像人間』も手がけた宇治茶監督がほぼひとりで作り上げた、一枚絵や切り絵を動かしたり、クローズアップしながら表現するアニメーション技法「ゲキメーション」を使った作品です。レーティングはPG12指定のため、子供でも「保護者の助言・指導」があれば鑑賞できます。
内容はホラーで、「日本の山間部の村で暮らすアメリカ人の少年ボビー(CV: 悠木碧)と友人のあっくん(CV:高橋茂雄)が、偶然見つけた不気味な施設『バイオレンス・ボイジャー』で怪事件に巻き込まれ、恐ろしいクリーチャーに遭遇する」という内容ですが、どちらかというとブラックユーモアの側面が強いです。
不気味ながらどこか懐かしい絵柄、作中に登場する「液体」だけが実写で表現されている演出、キャストのとぼけた演技などでクスっとしてしまいますが、子供が主人公の作品だと思って油断しているとトラウマ級の展開もあり、最後まで頭がくらくらするような内容となっています。
田口トモロヲさん演じる施設を運営するおじさん「古池」の、一見普通の人だけれどサイコパスな人物描写や、目玉が飛び出して全身の神経がむき出しになったクリーチャーのデザインなど、ホラーとしても強烈な作品として評判を呼びました。
●『マッドゴッド』
『マッドゴッド』は『スター・ウォーズ』シリーズ、『ロボ・コップ』などのハリウッドの名作映画の特殊効果を手掛けた巨匠フィル・ティペット氏が、制作中断もはさみつつ、30年の歳月をかけて完成させたストップモーションアニメです。
荒廃した未来を舞台に、地獄のような地下世界に入り込んだ孤高の「暗殺者」が、朽ち果てた地下壕にうごめく不気味なクリーチャーたちと出くわすなどの「地獄めぐり」を体験し、この世の終わりを目撃するという内容ですが、セリフはなくずっと悪夢のような映像が続きます。グロテスクながらどこかかわいらしい怪物たちや、残酷ながら「ピタゴラスイッチ」も連想してしまう殺人装置など、話以外にもさまざまな見どころが話題になりました。
意外にもPG12指定で済んだ同作ですが、かなり過激な描写も登場します。途中から出てくる「赤ん坊」の造形や泣き声は、特にトラウマになるかもしれません。「キモとグロと狂気が想像と理解の範疇を遥かに越えてきた」「頭おかしいし観ながら自分も頭おかしくなる」と、強烈な映像体験を食らってはまってしまった人も多いようです。
●『オオカミの家』
日本では2023年夏に公開されたストップモーションアニメ映画『オオカミの家』は、レーティングこそ全年齢向けですが、かなり恐ろしい作品です。
チリのピノチェト軍事政権の時代に実在したコミューン「コロニア・ディグニダ」を題材に扱った同作は、子供を支配する集落から脱走して森のなかにあった家で暮らすことにした少女のマリアと、そこで出会った子豚2匹を中心に物語が展開されました。細かいストップモーションアニメによって、全編ワンカットかのように撮られており、74分間全く安心できない不穏な描写が続きます。
マリアが育てる子豚「ペドロ」と「アナ」がどんどん変貌していく姿や、常にマリアを監視する「オオカミ」の存在などが描かれる恐ろしい物語だけでなく、ストップモーションアニメの手法、芸術性が高く評価された作品です。ストーリーが進むとともに、等身大の人形や壁画が作られ破壊されていく様がすべてストップモーションで撮られており、気の遠くなるような手間がかけられています。
ふたり組監督のクリストバル・レオン氏、ホアキン・コシーニャ氏が手掛ける『オオカミの家』は、世界各地の美術館で実寸大の家の部屋のセットが組まれ、等身大の人形や絵画を作って、その過程もエキシビションとして観客に公開するという斬新な制作体制も話題となりました。すべてが変容して安定しない悪夢のような世界観、凄みのある独特の映像で注目を集めています。
(マグミクス編集部)
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