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コンスコンは「本当に無能」だったのか? ガンダム史に残る「伝説の大敗」を考察

マグミクス / 2024年4月17日 6時10分

コンスコンは「本当に無能」だったのか? ガンダム史に残る「伝説の大敗」を考察

■3分もたたないうちに12機のMSが全滅!?

 1979年に放送開始となったTVアニメ『機動戦士ガンダム』は、2024年で放送45周年を迎えます。昭和に生まれた「初代ガンダム」は、令和になった現在も多くのファンから愛され続けています。

 作品の魅力のひとつに挙げられるのが、多彩なキャラクターの存在です。主人公「アムロ・レイ」が所属した地球連邦軍だけでなく、彼らにとって敵陣営にあたるジオン公国軍にも、「シャア・アズナブル」をはじめ、魅力的なキャラクターが多数いました。

 しかし、なかには派手な負けっぷりのせいで、一部ファンから「無能者」呼ばわりされてしまった指揮官もいます。その不名誉な扱いを受けた代表格が、ジオン公国軍の「コンスコン少将」です。

 コンスコンは自身が指揮する艦隊に甚大な被害を出した挙げ句、大した戦果を挙げられませんでしたが、本当に「無能」だったのでしょうか。

 伝説となったコンスコン機動艦隊の大敗は、TVアニメの第33話「コンスコン強襲」のなかで描かれています。傷ついた「ホワイトベース」に対して12機のモビルスーツ(MS)「リック・ドム」を差し向けながら、3分たたずに全滅する場面は、いろんな意味で衝撃でした。この敗因がコンスコンの「無能さ」にあったのかを、あらためて考察します。

●先手をとることに成功したワケ

 コンスコンの機動艦隊は、彼の上司である宇宙攻撃軍司令「ドズル・ザビ」から「ホワイトベース討伐」を命じられて出撃します。チベ級重巡洋艦を旗艦にムサイ級2隻をしたがえ、リック・ドム12機を擁する艦隊でした。

 傷ついたホワイトベースは、中立のスペースコロニー群「サイド6」にあるパルダ・ベイに入港します。コンスコンはその周辺にリック・ドムを潜伏させ、情報収集にあたらせていました。このコンスコンの指示が功を奏し、ホワイトベースの動きをいち早くキャッチすることに成功します。

 サイド6を出たホワイトベースの位置を特定し、先手をとることができたのは、このコンスコンの策がハマったおかげでした。

●戦闘描写から見えてくるもの

 浮きドックへと修理に向かうホワイトベースに、コンスコンは12機のリック・ドムを差し向けます。一方、後手に回ったホワイトベース隊が出した戦力は「ガンダム」「ガンキャノン」、2機の「Gファイター」の計4機でした。コンスコンは3倍の数の戦力を惜しみなく投入したことから、ホワイトベース隊を決して侮っていなかったことが分かります。

 しかもアニメの映像では、リック・ドムの編隊は互いに交差するような動きでホワイトベース隊を撹乱しようとしており、練度の高さがうかがえます。それに次々と僚機が撃墜されても怯むことなく、戦場から逃げようとしませんでした。

 それでも、たった3分で12機が全滅したのは、相手が悪かったとしか言いようがありません。とくにアムロはこの戦いで9機のリック・ドムを撃墜しており、まさに鬼神のごとき活躍ぶりでした。

 リック・ドムは、「ザクII」の性能を上回る新型MSでしたが、どちらかというと対艦攻撃を得意とします。「これがゲルググであれば……」とも思いますが、ニュータイプとして覚醒しつつあったアムロが相手では、おそらく高性能を謳われる「ゲルググ」だとしても厳しかったでしょう。

■名将から信頼を得ていた描写も

仲間が次々倒されても「リック・ドム」のパイロットは勇敢に戦った 画像は「MG 1/100 リック・ドム」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

●コンスコンが犯したミス

 コンスコンにとっては、浮きドックとホワイトベースがコンスコン艦隊の直線上にあったことも不運でした。砲撃が当たって壊れた浮きドックの残骸が、たまたまホワイトベースを守る遮蔽物になってしまい、先手をとったにもかかわらずトドメを刺せなかったのです。

 奇襲をかけ、数の面で優位に立ちながら、何の戦果もあげられなかったコンスコン艦隊。指揮官としては完全にお手上げ状態で、「全滅? 12機のリック・ドムが全滅…? 3分もたたずにか?」「傷ついた戦艦1隻にリック・ドムが12機も……バケモノか」と、放心状態でボヤきたくなるのも当然です。

 このとき椅子に崩れ落ちた彼の姿は情けなく映り、それが無能な指揮官というイメージをより印象づけてしまったことでしょう。

 そしてコンスコン艦隊は、サイド6を離脱するホワイトベースを再び待ち伏せし、今度は6機のリック・ドムで攻撃を仕掛けます。一度ガンダムにコテンパンにやられながら、前回を下回る戦力で挑んでしまったのは、明らかに指揮官として冷静さを欠いており、敗北するのも必然でした。

 もしかすると、初戦は憎きシャアの来援で救われるかたちとなったので、彼のプライドは傷つけられたでしょうから、そのことが影響したのかもしれません。

●宇宙攻撃軍総司令官の腹心としての評価

 ドズル・ザビにとって、ホワイトベースを倒すことは弟「ガルマ」の仇討ちであり、憎いシャアの無能さを証明することにつながります。本来であればコンスコンに任せず、自ら艦隊を率いて出撃したかったはずです。しかし、連邦軍の宇宙拠点「ルナツー」に集結しつつある同軍艦隊の動きも無視できず、腹心のコンスコンにホワイトベース討伐を託しました。

 この決断からも、ドズルがコンスコンを信頼していたことがうかがえます。劇中でも、「ソロモン要塞」を出立するコンスコンの艦隊を、ドズル自らが敬礼して見送るシーンが描かれていたのが印象的でした。

 そしてコンスコンの階級は「少将」であり、これはザビ家の長女で、突撃機動軍を束ねる「キシリア・ザビ」と同じ階級です。ドズルから信頼され、特務を命じられたコンスコンであれば、大型戦艦であるグワジン級に乗艦しても不思議ではないのですが、チベ級が旗艦だったのは中立のコロニーをムダに刺激しない意図が隠されていたのかもしれません。

 ともあれ、ザビ家の人間でもないコンスコンが本当に無能者だったら、いかに世渡り上手でも、将官まで昇進するのは難しいはずで、劇中には描かれていない功績があったのは間違いないでしょう。

 そのあたりを加味して考えると、サイド6周辺の戦いにおいては、コンスコンが無能だったというより「覚醒したアムロとガンダムが凄すぎた」と捉えるのが正しいのかもしれませんね。

(大那イブキ)

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