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アニメ『空挺ドラゴンズ』の吉平監督語る、「“ドラゴンの定義” 徹底議論した」

マグミクス / 2020年1月29日 19時10分

アニメ『空挺ドラゴンズ』の吉平監督語る、「“ドラゴンの定義” 徹底議論した」

■「生きものを殺して食べて生きていくこと」は重要なテーマ

 アニメ『空挺ドラゴンズ』が2020年1月8日(水)からフジテレビで放送を開始、Netflixでも1月9日(木)から全話配信が始まっています。同作品の世界観で大きな特徴となるのは、地上の人びとにとって脅威・災害であると同時に、薬や油、そして食用にと、“宝の山”でもある龍<ドラゴン>の存在です。

 捕龍船を操り、空を駆けて龍を狩り、旅をする「龍(おろち)捕り」の一艇、“クィン・ザザ号”とそのクルーたちの物語を映像化した同作で監督を務めた吉平”Tady”直弘氏に、原作者・桑原太矩さんの要望やこだわり、アニメ化に際して大切にした部分などについて語ってもらいました。

* * *

ーーアニメ化に際して、原作者の桑原太矩先生から要望はありましたか?

吉平”Tady”直弘監督(以下敬称略) これは僕らの制作スタイルでもあるのですが、アニメ版だからといって自由気ままな改変をするわけではなく、まず原作者の桑原さんの思いや考え、コンセプトを引き出して、その後は一緒に議論を重ねながらアニメを作っていきました。脚本会議にも出ていただいて、お互いにアイディアを出し合い、作品を練り上げていくような形で製作していきました。

 マンガのコマ割りだけでは表現できなかった部分や、さまざまな設定の理由など、かなり細部まで深く掘り下げて話していたと思います。

ーー桑原先生のこだわりを感じたシーンはありましたか。

吉平 現実世界の「捕鯨」に似た描写が作中にありますが、桑原先生からは、「生きているものを殺して、それを食べて自分の命の糧として人生にしていくのが重要なテーマだ」というお話を聞きました。アニメだからといって解体の描写や血の描写に対して安易に引き算を行わず、むしろ深淵に潜っていこうという思いで作品作りに取りかかりました。本作では、原作と同じようにカジュアルなパッケージのなかに命に関する深いメッセージ性も込めています。

ーー作品世界の空気感を作るために重視したことは何でしょうか?

吉平 SFでもそうですが、架空の世界を描くことは難しいといつも感じています。いくらでも嘘をついていい都合の良い世界観は、現実感や感情移入する手だてを失ってしまいがちです。本作の第1話では、龍が当たり前にいる世界の自然文化をはじめ、道具の数々や市民の感情など龍を取り巻く環境についても描いています。龍が存在する文化やその歴史までしっかりと描いていかなければ、リアリティーのあるファンタジーが成立しません。

■ドラゴンは「敵」ではなく、未知の「自然の驚異」

インタビューに応える、吉平"Tady"直弘監督(マグミクス編集部撮影)

ーードラゴンについてのイメージはどのように形作っていったのでしょうか。

吉平 「ドラゴンとは何か」を定義しないと、この作品は成立しません。今作での定義としては、ドラゴンは人がまだ知り得ない自然の驚異のひとつです。自分たちの世界にに存在している生物の一種でもあるけれど、生態についてまるで分かっていない。だから龍は人から恐れられるのです。一方、「ドラゴン=人類の敵」ではありません。人間と共生できると思っている人もいます。

 デザインの過程でも、生まれてから成育とともに身体が特徴的に発達してこういう成体になっていく、歯がこういう形だから何を食べる、外敵から身を守るために表皮が硬く発達する個体もいるのではないか……といったさまざまな議論を重ねながら、龍の生態、行動パターンに深く関わるデザインとして仕上げていきました。

ーー戦闘シーンでこだわったところはありますか?

吉平 ドラゴンを「悪者として駆逐される害獣」のような扱いにしないことです。ドラゴンはその世界に当たり前にいる生物であり、時として生きていく上での障害になるのが人間ということです。

 龍には龍なりの行動方針があり、それが人間側の都合と衝突するときに命と命をぶつけ合うような戦いになります。派手なアクションで悪役の龍を倒す話ではなく、生物としての苦しそうなうめき声や、人が命を奪う罪悪感のような要素も含めて、互いに命がけの真剣な行動である……そうした考えをストーリーラインに入れてアクションを描いています。

作中にはさまざまなデザインや生態のドラゴンが登場。生々しい「狩り」の描写も……アニメ『空挺ドラゴンズ』第1話より

ーー作品の見どころを挙げるとすると、どんなところでしょうか?

吉平 見どころのひとつは、たくさんのキャラクターに豪華声優さんがキャスティングされているところです。さまざまなな価値観を持った幅広い世代のキャラクターがそれぞれ個性豊かに動き回る、楽しそうなクィン・ザザの船の世界。そんな楽しい仲間に囲まれている輪の中に入りたいと思っていただけたらうれしいです。

 本作は殺伐としていたり、小難しいような作品ではなく、いつでも誰でも楽しく見られる作品を目指しています。船員のなかに自分の好きなキャラクターを見つけていただき、一緒にいるつもりで楽しんで見てもらえたらと思います。

※アニメ『空挺ドラゴンズ』は、フジテレビ「+Ultra」枠にて、毎週水曜日24:55放送。1月9日(木)より、Netflixで全話一挙配信されています。

(C)桑原太矩・講談社/空挺ドラゴンズ製作委員会

(マグミクス編集部)

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