連休にイッキ観したい70年代「テレビまんが」 視聴率争いで観られなかった作品は…?
マグミクス / 2024年4月27日 8時25分
■1970年代の子供たちが味わった究極の選択とは?
まだ家庭用ビデオデッキが普及していなかった1970年代、観たいTV番組が重なった場合、いずれかを選択しなければなりませんでした。親子や兄弟とのチャンネル争いはもちろん、時には自分自身で見たい番組が重なることもあったものです。
観たいジャンルの作品が重なる要因は、だいたいがTV局側の対抗心から来ていました。子供向け番組には子供向け番組をぶつける……そういった思考が根本にあるからです。そのため1970年代の子供たちは、観たくても観られない番組が少なくありませんでした。
幸いなことに、1980年代くらいまでは再放送される番組も多くありました。筆者たち当時の子供は、この再放送でようやく観ることのできる番組がいくつかあったわけです。もっとも再放送は予告編がないことがほとんどで、完全な番組視聴というわけではありません。
そうした時代から半世紀余りが過ぎて、TV録画は当たり前、観逃してもネット配信でいつでも観られるという、夢のような環境が整いました。。上述したような昔話は、ビデオデッキ普及後の世代にはピンと来ないかもしれません。
しかし、いつでも観られると思ってしまうと、ついつい先延ばしにしてしまうものです。そこで大型連休の時にこそ、昔は観ることができなかった子供向け番組、いわゆる「テレビまんが」を一気に観ませんか。
まだ「アニメ」と「特撮」という呼び方が一般的ではなかった古き良き時代、裏番組との取捨選択を迫られたテレビまんが作品をピックアップして見ていきましょう。以下、「同じ放送時間帯に3つの作品がカブった作品」を厳選しました。もちろん、当時の時間枠でのお話です。
※基本的にキー局での放送時間帯で選んでいるため、一部の地域の時間帯とは違う可能性があることはご容赦ください。
●月曜日19時台
月曜日の19時台は、週明けのゴールデンタイムから激しい視聴率争いをしていたといえる時間帯でした。数多くの対決があったなかで、今回は1976年くらいを注目します。
この時間枠は、日本テレビ系列の『元祖天才バカボン』(1975年10月6日放送開始、1977年9月26日終了)が人気番組でした。『天才バカボン』のアニメ化作品としては2作目にあたり、歴代シリーズでもっとも放送期間が長かった人気作です。
これに対抗してフジテレビ系列では、当時の流行だったロボットアニメとなる『ブロッカー軍団IV マシーンブラスター』(1976年7月5日放送開始、1977年3月28日終了)、NET(現在のテレビ朝日)系列では特撮ヒーロー作品『ザ・カゲスター』(1976年4月5日放送開始、同年11月29日終了)が放送されていました。当時のお子様であるみなさんも記憶を辿ればわかるでしょうが、これらのうちいずれかの作品しか本放送は観られなかったわけです。
ちなみに、この時間枠で長期に渡って君臨することになるTBS系列の『クイズ 100人に聞きました』は、1979年4月2日からの放送で、1976年前後は『YKKアワー キックボクシング中継』という番組が放映されていました。
■週末にもあった激しい視聴率争い
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●金曜日19時台
金曜日の19時台は、さまざまなテレビまんがの視聴率争いが繰り広げられた時間枠です。なかでも特筆したいのが1975年のことでしょうか。この時はTBS系列で『わんぱく大昔クムクム』(1975年10月3日放送開始、1976年3月26日終了)、フジテレビ系列では『ラ・セーヌの星』(1975年4月4日放送開始、同年12月26日終了)、NET系列では『勇者ライディーン』(1975年4月4日放送開始、1976年3月26日終了)が放送されていました。
このラインナップでピンと来た人も少なくないと思います。それは、この3作品はスタッフの一部が被っているからでしょう。『勇者ライディーン』の26話までの監督は富野喜幸(当時。現在は富野由悠季)さん、キャラクターデザインは安彦良和さんです。後に『機動戦士ガンダム』を作ることになる黄金コンビでした。
ところが、裏番組となった『わんぱく大昔クムクム』の企画原作ならびにキャラクターデザインは安彦さんで、『ラ・セーヌの星』の27話以降の監督は富野さんでした。さらにいえば、3作品共に制作は創映社(後のサンライズ)という被りようです。
このなかで2024年4月現在、『勇者ライディーン』は配信サービスで観られますが、『わんぱく大昔クムクム』と『ラ・セーヌの星』は配信がありません。今後、配信されることを心待ちにしたい作品です。
●土曜日19時台
土曜といえば翌日が日曜日ということで、子供が夜更かししてもいい日でした。そのため、遅い時間帯でも子供向け番組があったわけです。そういった意味では、その始まりを告げるのが19時からの時間帯でした。
1971年から1972年を見ていくと、日本テレビ系列は大ヒット作となった『巨人の星』(1968年3月30日放送開始、1971年9月18日終了)および『天才バカボン』(1971年9月25日放送開始、1972年6月24日終了)が放送されています。
これに対抗したのがフジテレビ系列の『宇宙猿人ゴリ(後に『スペクトルマン』へ改題)』(1971年1月2日放送開始、1972年3月25日終了)、その後番組として『快傑ライオン丸』(1972年4月1日放送開始、1973年4月7日終了)がありました。
TBS系列では『原始少年リュウ』(1971年10月30日放送開始、1972年3月25日終了)、『海のトリトン』(1972年4月1日放送開始、同年9月30日終了)が放送されています。この時間枠での視聴率争いは激しく、一般向けの番組も交えて視聴率争いが行われていました。もっとも2024年現在では、20年以上も子供向け番組がない状態となっています。
●日曜日19時半台
日曜日の19時半といえば、筆者と同世代であれば記憶に残っている人も多い時間帯でしょうか。特に印象的だったのが1974年、今から半世紀前のことです。
不動の人気番組だった「カルピスまんが劇場」の第6作目『アルプスの少女ハイジ』(1974年1月6日放送開始、同年12月29日終了)、これに挑んだのが日本テレビ系列の『宇宙戦艦ヤマト』(1974年10月6日放送開始、1975年3月30日終了)と、TBS系列の『SFドラマ 猿の軍団』(1974年10月6日放送開始、1975年3月30日終了)でした。
当時の視聴率的には『アルプスの少女ハイジ』の圧勝で、「カルピスまんが劇場」はその後20年近くに渡って時間枠を維持します。逆に日本テレビとTBSは、その後、この時間枠での子供向け番組の放送をしなくなりました。
もっとも、この時に視聴率争いに敗れたものの、『宇宙戦艦ヤマト』のクオリティの高さは再放送で評価され、後の劇場版による大ヒット、「アニメ」という言葉の認知度を一気に一般にも浸透させるという功績を残すことになります。
こういった当時の空気感を思い出しながら、当時の名作を楽しむ大型連休というのもいいかもしれません。なお、上述したテレビまんが作品のなかで下記については、配信サービス「Amazonプライム・ビデオ」で視聴可能となっています(2024年4月現在)。
『元祖天才バカボン』
『ブロッカー軍団IV マシーンブラスター』
『ザ・カゲスター』
『勇者ライディーン』
『巨人の星』
『天才バカボン』
『快傑ライオン丸』
『原始少年リュウ』
『海のトリトン』
『アルプスの少女ハイジ』
『宇宙戦艦ヤマト』
(加々美利治)
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