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この父親がヤバい!? 主人公を超える存在感の父親4選 時代を映すその描かれ方

マグミクス / 2024年4月30日 19時25分

この父親がヤバい!? 主人公を超える存在感の父親4選 時代を映すその描かれ方

■主人公を喰いかねない「強烈なオヤジ」たち!

 アニメやマンガの中の父親像は多種多様で、その役割や描かれ方は時代と共に変化してきました。「この父親がヤバい」と聞いて、あなたは誰を思い浮かべたでしょうか。特に記憶に残る父親たちと、そのあり方を見ていきます。

●星一徹 『巨人の星』

 1966年に「週刊少年マガジン」(講談社)にて原作マンガ(原作:梶原一騎/作画:川崎のぼる)の連載が始まり、その後アニメ化された『巨人の星』の「星一徹」といえば、ちゃぶ台返しや体罰などで知られる、昭和の頑固親父の代表のようなキャラクターです。

 戦争での負傷が原因で巨人軍を退団した一徹は、自分の夢を息子の「飛雄馬(ひゅうま)」に託し、「大リーグボール養成ギブス」の着用を強制するなど虐待のようなスパルタ教育を施します。飛雄馬は一徹に反発しながらも指導を受け入れ、遂に巨人軍入団を果たしました。

 その後、飛雄馬が独り立ちすると、一徹は中日ドラゴンズのコーチになって飛雄馬を超える選手を目標に、「オズマ」や「伴宙太(ばん ちゅうた)」を鍛え上げます。師匠の立場から降りて、息子とライバルの関係になったのです。

 星一徹と星飛雄馬の親子関係は極めて濃厚です。たとえ衝突しても、両者には優れた野球選手になるという共通目的があるため、人間関係が途絶えることはありません。父親が息子に夢を託して厳しく教育し、息子もそれに応えて成功する姿は、戦争から復興する力強い時代を反映しているようです。

●ジン・フリークス 『HUNTER×HUNTER』

 1998年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)にて連載が始まり、その後アニメ化された『HUNTER×HUNTER』(原作:冨樫義博)の凄腕ハンター「ジン=フリークス」は、星一徹とは正反対の父親でしょう。ジンは息子「ゴン」の教育や人格形成に全く関わっていないからです。

 その原因は主にジンの従妹(いとこ)でゴンの母親代わりの「ミトさん」にあります。彼女は裁判で物心つく前のゴンの養育権を奪い取り、ジンのことを一切、教えませんでした。それどころか、ジンのことを「息子を捨てた男」と刷り込んでいたくらいです。それほどまでにジンの後を追ってほしくなかったのでしょう。一切語られていませんが、ジンとミトとの間には何らかの軋轢(あつれき)があったと思われます。

 しかしゴンは偶然出会ったハンターの「カイト」に父親のことを教えてもらい、「子供を捨ててまで続けたい」ハンターという職業に強い憧れを抱きます。こうして父親を知らない子供がまだ見ぬ父親に会うため冒険へ出発しました。

 そのようなゴンがジンを見つけだしたのは、幾多の冒険を乗り越えて一人前のハンターになってからのことです。ジンはカイトを通じて間接的にゴンの人格形成に寄与したといえますが、これは偶然の産物に過ぎません。もしもゴンがカイトと出会っていなければ、ジンの存在感は皆無だったはずです。

 養育権の問題があったにせよ、自分の目的(仕事)に集中し、息子の教育に全く関わろうとしないジンには、平成世代の父親像が反映されているようです。

 また、息子には父親のようになってほしくない、という母親(ミト)の思いを消極的に肯定してしまっている父親(ジン)の構図には考えさせられます。『巨人の星』から約30年が過ぎ、父親の影響力が弱まった時代を反映しているようです。

■刃牙はヤングケアラーかも?

●碇ゲンドウ 「エヴェンゲリオン」シリーズ

『【愛蔵版】新世紀エヴァンゲリオン』第7巻(漫画:貞本義行/原作:カラー/KADOKAWA)

 1995年に放送開始されたTVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の「碇ゲンドウ」は、妻の「ユイ」を事故で失ってから息子の「シンジ」を他所に預けて放置しました。しかしジンのように一切関わらないわけではありません。自分の目的のために必要になると突然、呼び出して、汎用人型決戦兵器「エヴァンゲリオン」のパイロットになるよう強制します。シンジからしてみれば、全く状況が理解できず混乱するのも当然です。

 そのようなゲンドウの本心はずっと謎に包まれていましたが、2021年に公開された最終作『シン・エヴァンゲリオン劇場版』で遂に真実が明らかになりました。なんとゲンドウは、ひとり息子のシンジが怖かったので距離を取っていた、というのです。

 子供が怖いから突き放す、本心を隠すために組織を盾にしてコミュニケーションを制限するという姿勢は、「自分から会いに行かないが条件をクリアすれば会ってやる」という態度のジンと比べて、あまりにも情けないと言わざるを得ません。

『エヴァンゲリオン』はシンジが大人になる物語であると同時に、内向的でコミュニケーションが苦手なゲンドウが「愛妻ユイの死」を受容し、息子に亡き妻の面影を見出す物語でもあります。

 育児に関わらなかった点においてゲンドウはジンと似ているようですが、事情がだいぶ異なりますし、積極的に息子(シンジ)を避けている点は全く似ていません。シンジはそのようなゲンドウを理解し、自分の道を選びました。

●範馬勇次郎 「刃牙」シリーズ

「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)にて1991年からタイトルを変えつつ断続的に連載が続くマンガ「刃牙(バキ)」シリーズ(著:板垣恵介)を原作とする一連のアニメ作品の、レギュラーキャラクターである「地上最強の生物」こと「範馬勇次郎」は、国家を転覆させるほどの腕力家で、アメリカ大統領をも従える暴力の化身です。「ヤバい父親」といえば彼のことを思い浮かべる人も多いでしょう。

 そのような勇次郎と息子「刃牙」の親子関係は複雑です。勇次郎は幼少期の刃牙に拳の作り方などを教えると、早々に教育から手を引いてしまいます。母の「江珠(えみ)」は夫の気を惹くため、刃牙を徹底的に鍛え、意にそぐわない時はヒステリックに虐待しました。

 しかし状況は一転します。刃牙をかばって勇次郎に歯向かった江珠が殺されてしまうのです。刃牙は母を殺した父よりも強くなることを決意し、数々の試練を乗り越えてついに勇次郎に挑みます。

 ところが戦いを通じて父親の満たされぬ思いを知った刃牙は、勇次郎に強烈なボディーブローをぶちかましながら「親父の面倒は俺が見る」と決心してしまいます。あまりの強さゆえに人生を持て余している父親を満足させられるのは、同じ範馬の血を引く自分だけであり、その役目を引き受けるということです。

 刃牙は強さを求めて戦い続けるうちに、その頂点に君臨する父親を深く尊敬するようになっていたのでした。母を殺した憎い相手でありながら同時に尊敬の対象である父親、自分を持て余す暴力の化身の面倒を見るというのですから、刃牙と勇次郎の親子関係は相互理解や共感、歩み寄りといった枠を超越した、もはや介護に近いように思えます。

●乗り越えるべき壁としての父親

 以上、マンガやアニメで有名な4人のヤバい父親を振り返ってみたところ、星一徹以外はほとんど息子を指導、教育していない点は驚きでした。きっと社会構造の変化によって、家庭から「権威的な父親」の姿が消えたせいでしょう。

 しかしどの作品、どんなにヤバい父親であっても、息子が父親を理解し超越しようとしている点は共通しています。たとえ親子の関係性が希薄になっても、男子が乗り越えるべき対象としての父親という役割は健在のようです。

(レトロ@長谷部 耕平)

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