【漫画】「相方潰し」と呼ばれるお笑い芸人がドン底に いい加減そうな新相方のひと言に「ハッ！」【作者インタビュー】

■情熱が強く、完璧主義…「相方潰し」と呼ばれてくすぶるお笑い芸人

　芸人の真島は、お笑いへの情熱や完璧主義の性格が災いして、コンビ解消を繰り返していました。そのため、「相方潰し」の異名を付けられてしまいます。今年の漫才グランプリにかける真島でしたが、楽観主義の現在の相方とも、やはり温度差があります。しっかりとしたネタ合わせもできないまま、準々決勝の当日を迎えて……？

　山原 中さん（@yamahara_naka）による創作マンガ『崖っぷち芸人が再起する話』がX（旧：Twitter）上で公開されました。今作は、『余白の世界』として「モーニング」に掲載された読み切りマンガで、「2021年前期・第79回ちばてつや賞一般部門」で大賞を受賞した作品です。

　いいね数は8500を超えており、読者からは「涙があふれてきました。魅せ方がとてもうまい……！」「いい加減なやつだと思っていたのにまるで違った。視野を広げるって大事ですね」「自分はお笑い芸人ではないけどいまの心境と重なる。前向きになれました」などの声があがっています。

　作者の山原 中さんにお話を聞きました。

ーー今作『崖っぷち芸人が再起する話』が生まれたきっかけや、芸人の世界を物語に選んだ理由を教えて下さい。

　漫画家を目指し、さまざまな題材の企画を作っては没というのを繰り返していたのですが、そのなかに「高校生が文化祭でお笑いをやる青春ラブストーリー」があり、その主人公を高校生から社会人に変えて、いまの話になりました。

　編集さんからの提言で変えたのですが、そのもくろみとして、当時から私が商業漫画家を目指して何年もうまくいかない状態だったので、いまの自分に近い主人公だと感情がのせやすいのではないか、というのがあったようです。

ーー前向きになれる素敵な作品でした。今作を描くうえで工夫した点や、お気に入りのシーンなどはありますか？

　工夫した点は、なるべく読みやすくすることです。これも編集さんに言われて初めて自覚したのですが、人の名前が多すぎると読む人が混乱してしまいます。そのため、例えば、元相方と再会するときに、最初のネームでは名前を呼んでいた箇所を、「グランプリ王者だ！」などと変えて、斜め読みしても誰が誰だか分かるように意識しました。

　お気に入りのシーンは、グランプリ準々決勝の最中の主人公のモノローグシーンです。自分自身こういう時期があったので、共感してくれる人がいてうれしかったです。

追い詰められた男性はいまの相方にも厳しくあたってしまう（山原 中さん提供）

ーー物語の中心にいる主人公の真島と、現在の相方がとても印象に残りました。キャラクター制作でこだわった点などはありますか？

　最初に作ったのは話の起承転結とテーマなのですが、話の起伏をより大きく、テーマをより分かりやすくするために、完璧主義でプライドが高くうえを目指す主人公像と、今が楽しい相方像、というふうに、物語をうまく機能させるように編集さんとキャラを固めていった気がします。

　また、以前読んだ『マインドセット「やればできる！」の研究』という本に私がとても影響を受けたのですが、本のなかに「硬直マインドセット」と「しなやかマインドセット」という心の持ち方があり、この作品のふたりの性格や行動を考える際に、この本を読み返しながら作りました。

ーー苦悩しながらも前に進んでいく主人公の真島に共感する読者の方も多いかと思います。今作に込めた思いや、伝えたいことなどがあれば教えて下さい。

　誰でもうまく進めなくなってしまうことがあると思うので、そういう気持ちが少し楽になったらいいなと思って描きました。

ーーたくさんの感想が寄せられています。特にうれしかった感想の声、印象に残った読者のコメントはありましたか？

　商業作家として土俵にも立てないし個人でマンガをアップしてもまったく反応がない時期が長かったため、すべての感想がありがたいです。ありがとうございます。

ーー山原さんがマンガを描き始めたきっかけを教えて下さい。

　本当にただの落描き程度ですが、子供の頃から絵を描くのもマンガを読むのも好きだったため、ノートにポケモンのマンガなどを描いていたのは覚えています。

ーー今後、X（旧：Twitter）で発表される作品については、どのように活動していきたいとお考えでしょうか？

　X（旧：Twitter）にアップしているのはすべて読み切りとして描いているので、特に編集さんの提言などなければ、また別で連載用の企画を作っていけたらいいかなと考えております。

（マグミクス編集部）