『ZZ』のラスボス「ハマーン・カーン」はどのように生き死んだのか? 劇的なその人生
マグミクス / 2024年5月13日 6時25分
■生き急ぎすぎ? 「ハマーン・カーン」の短くも劇的な人生
『機動戦士Zガンダム』『機動戦士ガンダムZZ』にレギュラーキャラクターとして、および1シーンのみながら『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』にも登場したハマーン・カーンは、作中屈指のカリスマ性と美貌に加え、高いニュータイプ能力を持つ腕利きのパイロットとして非常に大きな存在感を示したキャラクターです。声優を務めた榊原良子さんの声質と力量もあり人気は高く、初登場となった『Z』第32話の放送から40年近くが経過した今なお、ハマーンのファンを公言する方は大勢おられる様子がうかがえます。『アラサーOLハマーン様』(マンガ:いわさきまさかず/原案:矢立肇、富野由悠季/KADOKAWA)と題するスピンオフマンガ作品も連載中です。
普段は指導者として厳格かつ狡猾な立ち回りを見せますが、かつての想い人である「シャア・アズナブル」が絡んだ際には感情的な行動に出ることもあり、このとき見せる女性としての人間臭さも大きな魅力のひとつでしょう。
初登場時、若干20歳の女性にして、主に敗残兵とその家族で構成された「アクシズ」の指導者であったハマーンは、後に「ネオ・ジオン」の総帥となっていきます。もちろん、そこに至るまでには紆余曲折がありました。
宇宙世紀0067年1月10日、「デギン・ソド・ザビ」(のちのジオン公国公王)の側近である「マハラジャ・カーン」の次女として生まれたハマーンは、少女時代にはニュータイプの素養が発露しており、マンガ『機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像』(著:北爪宏幸/KADOKAWA)ではニュータイプ研究機関で調査を受けていたことが明らかにされています。
このときのハマーンは、自分の体を調べられるのを嫌がり研究を拒絶するなど、後にネオ・ジオンの総帥として君臨する姿をまったく想像できない、年頃の少女らしい反応を見せていました。
そのようなハマーンの運命が大きく変わったのが宇宙世紀0079年末の、一年戦争におけるジオン公国の敗北でした。降伏を良しとしない高官や軍人は、家族をともないアステロイド・ベルトに存在する小惑星基地「アクシズ」へと逃げ込み、その中に当時12歳だったハマーンの姿もあったのです。
■父親の死後「ミネバ・ザビ」の摂政に就任
アクシズをネオ・ジオンに改称してからはザビ家を意識したような装束に。「RAH DX ガンダム・アーカイブス ハマーン・カーン」(メガハウス) (C)創通・サンライズ
アクシズの総括責任者マハラジャ・カーンの下、ジオン残党軍は一応の安寧の場を得ることとなります。ハマーンもシャア・アズナブルに影響を受けて再びニュータイプ研究に協力するようになりました。シャアに対しては恋心を抱いており、ふたりで撮影した写真も残されています。
アクシズにおいて、モビルスーツ(MS)の技術や新型の開発、モビルアーマー(MA)の設計製造、人材育成などが行われる中、その勢力は宇宙世紀0083年2月、地球圏に潜むジオン公国残党組織「デラーズ・フリート」と接触するために先遣艦隊を派遣し、これにハマーンも同行します。デラーズ・フリートに対し新型MA「ノイエ・ジール」を提供し、残存兵力を収容するなど、わずかながらの協力を終えてアクシズへと帰還したハマーンを待ち受けていたのは、父マハラジャの死でした。
シャアの推挙によりすでにミネバの摂政に就任していたハマーンは、シャアが偵察任務を帯びて地球圏へと潜入して以降、アクシズの実権を掌握します。積極的な再軍備を行ない、宇宙世紀0086年2月にはアクシズに取り付けた核パルスエンジンに点火し、地球圏を目指し出発しました。
やがて宇宙世紀0087年10月12日に地球圏へ到達したアクシズは、エゥーゴとティターンズの戦闘、いわゆる「グリプス戦役」に介入し、第3勢力として重要なポジションを占めるようになります。エゥーゴとティターンズの最後の戦いとなった「グリプス2」を巡る戦闘ではハマーンもMS「キュベレイ」に搭乗して参戦し、因縁深いシャアと交戦、自らの元に戻るよう迫りますが拒まれ、ならばと殺害を試みますが失敗し、大きな精神的損失を抱えることとなりました。
『機動戦士ガンダムZZ』では、勢力としての「アクシズ」を「ネオ・ジオン」と改称、地球圏制覇に乗り出しますが、「ジュドー・アーシタ」たち「ガンダムチーム」による抵抗や、配下である「グレミー・トト」の反乱といった要因により果たせず、最後はジュドーと戦い戦死を遂げました。
なお、『ZZ』では非常に出番が多く、派手な装飾の軍服をメインにドレス姿や水着姿、金髪に変装した姿など、さまざまなハマーンを見ることができます。ネオ・ジオンの指導者という重責を担っていたハマーンにとって、普段と違う姿になることは、適度な息抜きになっていたのかもしれません。
(早川清一朗)
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