なぜ今? 伊で発表『ジーグ対グレンダイザー』 実は半世紀前にも「幻の企画」が!
マグミクス / 2024年5月17日 7時25分
■海外で「グレンダイザー」と「鋼鉄ジーグ」が熱いワケ
日本では1975年にTV放送が始まったロボットアニメの『UFOロボ グレンダイザー』と『鋼鉄ジーグ』は、国内でも人気のあった作品でしたが、海外での評価はともに日本以上のものでした。放送から約半世紀の2024年現在、この2作品に熱い注目が集まっています。
なぜならば先日、イタリアで『鋼鉄ジーグ対UFOロボ グレンダイザー(原題は『JEEG CONTRO GOLDRAKE』)』というタイトルのアニメコミック作品(アニメのグラフィックで描くマンガスタイルのコンテンツ)が、本年2024年に永井豪先生とダイナミック企画の承認のもと、制作されるという発表があったからでした。
日本のファンには「なぜ今?」と思う人も少なくないでしょう。これは海外での両作品の人気が日本人の考えている以上のものだからです。そのことについて順を追って説明しましょう。
『グレンダイザー』の海外での人気は知っている人も多いことと思います。フランスでは『Goldorak(ゴルドラック)』というタイトルで放送され、視聴率100%を記録し、世界のテレビを変えた50作品のひとつとして選ばれたこともありました。
その人気は中東にも広がり、サウジアラビアではほぼ設定と同じ全高(33.7m)で造られた「グレンダイザー」の立像が建造され、世界最大の架空キャラクターの金属製彫刻としてギネス世界記録に認定されています。
こうした人気から、海外資本の後押しもあって、リブート作品となるTVアニメ『グレンダイザーU』が本年2024年7月から国内で放送予定となりました。こういった海外からの熱い注目から比べると、日本国内での評判はそれほど高くないのかもしれません。
一方の『鋼鉄ジーグ』も海外では人気の高い作品です。特にイタリアでは、日本版オープニングテーマが、自動車会社であるイタリア・ルノーのCMに使われたそうです。
さらに2016年には『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』という、『鋼鉄ジーグ』が物語の重要な要素となった映画が公開されました。この映画はイタリアのアカデミー賞ともいえる「ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞」で新人監督賞、主演/助演男女優賞など合計でその年最多の7部門を受賞しています。
このイタリアでは『グレンダイザー』も人気だったことから、『鋼鉄ジーグ』とのクロスオーバー作品が企画されたのでしょう。発表されたポスターは当時のアニメそのままで、制作者側のアニメ作品に対する高いリスペクトと愛を感じざるを得ません。
これほどの作品が半世紀近く経った2024年に観られることになるとは、海外の人たちの熱意には感服します。筆者と同じ「東映まんがまつり」で、「マジンガー」や「ゲッターロボ」のクロスオーバー作品を観た世代には感激もひとしおのことでしょう。
もっとも、実はこの『グレンダイザー』と『鋼鉄ジーグ』の共演は、当時の東映まんがまつりで企画されていたことがありました。『UFOロボ グレンダイザー対鋼鉄ジーグ』という幻の企画があったのです。おそらく今度のイタリア版とは関係ないと思いますが、その内容について触れていきましょう。
■気になる劇場版の内容は「東映まんがまつり」の「黄金パターン」!
こちらはオリジナル。『UFOロボ グレンダイザー Vol.2』(東映ビデオ)
幻の企画である『UFOロボ グレンダイザー対鋼鉄ジーグ』での敵は「ダムドム星人」、TV版『グレンダイザー』の敵である「ベガ星連合軍」と敵対している宇宙人です。この設定を生かしたマンガ『ダイナミックヒーローズ』(原作:永井豪/著:越智一裕とダイナミックプロ)では、東映まんがまつりでおなじみの「ギルギルガン」や「ピクドロン」を操っていた宇宙人とされていました。
このダムドム星人が、ベガ星連合軍さえ苦戦させるグレンダイザーの奪取をもくろみ、地球へとやって来るところから物語は始まります。そのころ、『グレンダイザー』主人公、「宇門大介」こと「デュークフリード」が働くシラカバ牧場の近くでは、一大自動車レースが開催されようとしていました。このレースに参加していたのが、『鋼鉄ジーグ』の主人公「司馬宙(しばひろし)」です。
レースの開催を快く思っていなかった大介は、宙と対立しました。その間に牧場の娘「牧葉ひかる」はダムドム星人に誘拐され、争いは中断、大介はダムドム星人の指定された場所に単独で向かいます。
大介を亡き者にしてグレンダイザーを奪おうとするダムドム星人、この危機に駆けつけたのが、大介をタダ者でないと思って後を付けていた宙でした。宙は「ビッグシューター」を呼んで「鋼鉄ジーグ」になると、ダムドム星人の中型ロボット軍団と戦いを開始します。
一方の大介はひかる救出をジーグに任せ、ダムドム星人の送り込んだ大型宇宙獣に襲われていた宇宙科学研究所を救うべく、奪われかけていたグレンダイザーに飛び乗って反撃に出ました。この二大スーパーロボットの奮闘でダムドム星人は全滅、ラストはレースに出場する宙を応援する大介、となっています。
初めて会った主人公同士の争いから共闘に結び付くという、東映まんがまつり黄金パターンの企画でした。このクロスオーバーが何らかの形で中止となり、代わって『UFOロボ グレンダイザー対グレートマジンガー』が公開されたようです。こちらの作品もそれまでになかったパターンの作品だっただけに、どちらが良かったかは甲乙つけがたいといえるでしょう。
ちなみに、この後の東映まんがまつりで公開された『グレンダイザー ゲッターロボG グレートマジンガー 決戦! 大海獣』の企画段階では、『デビルマン』『ドロロンえん魔くん』『キューティーハニー』との共演も企画されていたという証言があります。
もしも実現されていれば、まさに「スーパーダイナミック大戦」というべき作品になっていたことでしょう。この話から推測すれば、本編に登場した敵「古代海獣ドラゴノザウルス」が、どこか妖怪や化物的なテイストを持っていた点も腑に落ちます。
このほかにも、企画段階で終わった東映まんがまつりのクロスオーバー作品はいくつかありました。筆者が知る限りでも『SF西遊記スタージンガー対惑星ロボ ダンガードA』『ジャッカー電撃隊対大鉄人17』といった作品があったそうです。タイトルを聞いただけでも夢が膨らむ展開が予想できるでしょう。
そう考えれば今回、イタリアで発表された『鋼鉄ジーグ対UFOロボ グレンダイザー』には期待しかありません。子供の頃に夢見たヒーローの共闘が、半世紀の時を経て観られるのは、往年のファンにとっては幸せというものです。
(加々美利治)
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