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『Zガンダム』なぜ「ゼータ」と読む? ギリシア文字つきガンダムはどれだけいるのか

マグミクス / 2024年5月20日 6時25分

『Zガンダム』なぜ「ゼータ」と読む? ギリシア文字つきガンダムはどれだけいるのか

■「Z」が「ゼット」ではなく「ゼータ」である理由

 おそらく、ほとんどの「ガンダム」ファンは『機動戦士Zガンダム』の「Z」を、「ゼット」ではなく「ゼータ」と正しく読むことができると思います。しかし、どうしてアルファベットのゼットではなく、ギリシア文字のゼータを使うことになったのでしょうか。

 もともと『Zガンダム』の企画立ち上げ時、さまざまなパターンでの『機動戦士ガンダム』の続編が考えられていました。そのなかには過去の宇宙世紀を舞台とした『アルファガンダム』や、逆にU.C.0111(宇宙世紀トリプルワン)という未来を舞台にした作品もあったそうです。

 こうした紆余曲折を経て『Zガンダム』は制作されます。このZにはゼータである意味も込められており、それは「前作から6年後に制作」という意味でした。「Z」はアルファベットでは26番目にして最後の文字ですが、ギリシア文字では6番目です。それゆえにギリシア文字読みが採用となったのでしょう。

 もうひとつ考察されるのが、Zが数字の「2」に似ていることです。すなわちガンダムの続編、第2作であることを意味している点でした。こちらは放送当時の噂話ではありますが、富野由悠季総監督ならばあり得るだろうダブルミーニングだと思います。

 こうしてギリシア文字がタイトルに使われることになった『Zガンダム』、それが起点となって、本編ではギリシア文字が効果的に使われることになりました。その最たる例がMS(モビルスーツ)の装甲材質「ガンダリウムγ(ガンマ)」です。

 このガンダリウムγを使用したMS第1号だったことから、「γガンダム」と名付けられる予定だったのが「MSA099 リック・ディアス」でした。もっとも、このくだりはアニメ本編で語られたものではなく、小説版や後の設定で補完された話です。

 こうしてギリシア文字を使ったガンダムの歴史が始まりました。そのなかには公式設定というには不確定なものもありますが、順を追って解説していきましょう。

 ちなみに前述した通り、ガンダリウムγを使ったからγガンダムであって、「α(アルファ)ガンダム」や「β(ベータ)ガンダム」が存在するというわけではありません。しかし、この2機に関しては考察に基づいた仮説があります。

 まず初代である「RX-78 ガンダム」がαガンダムという説。これに関しては大方の人が納得できることでしょう。一方のβガンダムは諸説あり、リック・ディアスと酷似している「RX-78GP02A ガンダム試作2号機(サイサリス)」を挙げる人がいます。確かに系列的には理解できる話でしょうか。

 このほかにも「ガンダム開発計画」で開発されたGPシリーズすべてがβガンダムであるという説、直接の関係がない「RX-178 ガンダムMk-II」を挙げる人もいます。つまり考察の域を出ない話なので、映像といった形で登場しない限りは永遠に答えのない話ということでしょうか。

 その代わりγの次、δ(デルタ)以降のギリシア文字を使ったガンダムは明確に設定されたものが多くありました。こちらは「『アナハイム・エレクトロニクス』が開発したMS」が前提となっています。

■実はギリシア文字の半分は既にガンダムの名前に使われていた

コードネーム「δ(デルタ)ガンダム」、いわゆる「ガンダム顔」ではありますよね。「MG 1/100 百式 Ver.2.0」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

「δ(デルタ)ガンダム」とは、おなじみの「MSN-00100 (MSN-100) 百式」のコードネームです。正確に言えば、当初の予定だった可変機構を持っていたのがδガンダム、技術的な問題からそれをオミットして非変形型MSにしたのが百式でした。

 それゆえに技術的な進歩で可変機構に問題がなくなり、量産化を可能にしたMSが「MSN-001A1 デルタプラス」となります。これをさらに進化させたMSに「MSN-001X ガンダムデルタカイ」がいました。実はこのMSの名前にも深い意味があるので後述します。

「ε(イプシロン)ガンダム」のコードネームを持つのは、「エプシィガンダム」と呼ばれるMSでした。もともとは『Zガンダム』の企画当初に名前があったMSで、「ガンダリウムε」を使用しており、企画段階では「ガンダムMk-II(デルタガンダム)の技術と統合してZガンダムを生み出した」とあります。

 企画当初から関わっていた永野護さんによると、1986年に講談社から刊行された小説『機動戦士Zガンダム 第一部カミーユ・ビダン』の表紙にあったガンダムが「εガンダム」であるとのことです。現在の公式設定では、技術的な問題から実現不可能な部分があり、試作には至らずに計画は破棄されたとなっています。

 これに続くのが主役機の「ζ(ゼータ)ガンダム」である「MSZ-006 Zガンダム」、その後には「η(エータ)ガンダム」のコードネームで開発された「MSZ-007 レイピア」が続きます。模型雑誌である「月刊モデルグラフィックス」別冊「GUNDAM WARS PROJECT Ζ」が初出でした。

「ηガンダム」は可変MSながら、リック・ディアスの開発チームが製作したことで重量感あふれる外見をしており、スマートなZガンダムとは異なった印象を受けます。「ZレイピアI」や「ガンダム・レイピア」という表記もあり、名称が不確定なものとなっていました。

 続く「θ(シータ)ガンダム」はおなじみ「MSZ-010 ZZガンダム」、「ι(イオタ)ガンダム」は「MSA-0011 S(スペリオル)ガンダム」となっています。この2機は同時開発されたMSで、共にコア・ブロック・システムを搭載する可変MSであり、3機の航空機に分離できる仕様でした。

 この後の「κ(カッパ)ガンダム」は複雑な設定を持っています。何しろκでありながら、ギリシア文字18番目の「∑」を冠した「シグマガンダム」という名前を持っていました。しかもシグマガンダムは、異なる設定で複数の雑誌に掲載されたという経緯があり、設定が整頓されていないMSになっています。

 続いて「MSA-0012 λ(ラムダ)ガンダム」は、後に「MSA-007 ネロ」の上半身に設計が生かされました。「RX-90 μ(ミュー)ガンダム」はサイコフレーム試験機だそうです。共に「ガンダム・センチネル」で文字設定が出てきたガンダムでした。

 その後に続くのが「RX-93 ν(ニュー)ガンダム」、ご存じの通りアムロ・レイ専用機であり、その最後の機体です。この名前を引き継いだのが映画『閃光のハサウェイ』に登場する「RX-105 ξ(クスィー)ガンダム」でした。この空白期間を考えれば、アナハイムは十年近くもギリシア文字のガンダム製造には関わっていなかったことになるかもしれません。

しかし前述のκ(カッパ)ガンダムがシグマの名前を冠していたり、ガンダムデルタカイの「カイ」がギリシア文字22番目の「χ(カイ)」を意味するのではないか、との考察もあったりします。右手のしていることを左手は知らないほどの大企業であるアナハイムのこと、実は複数の計画が極秘裏に進んでいたこともあり得ます。こういった考察がガンダムシリーズの醍醐味でしょうか。

 今後も生まれるかもしれないギリシア文字のガンダムたち。最後の文字である「Ω(オメガ)」が現れたとしても、それで終わりとは限りません。宇宙世紀の歴史が新たに語られるたび、新たなガンダムは生まれるのでしょうから。

(加々美利治)

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