ザクをフル活用せよ! ジオン側の貴重な戦力は戦中戦後を通しどう使われたのか?
マグミクス / 2024年5月22日 6時25分
■最後のあだ花を咲かせた「旧ザク」!
『機動戦士ガンダム』に登場したザクは、史上初のモビルスーツ(MS)として一年戦争序盤で大きな成功を収めますが、地球連邦軍の巻き返しにより徐々に性能不足が明らかとなって行きます。しかし物資に乏しいジオン公国および、戦後のその勢力にとっては貴重な戦力であり、これをなんとか使いこなそうと、さまざまな取り組みが行われました。
●ザクI・スナイパーカスタム
『機動戦士ガンダムUC』に登場した「ザクI・スナイパータイプ」は、ザクの改装型でもっとも戦果を挙げた機体候補に数えられるほどの奮闘を見せました。
改造元となった「ザクI」は、当初からジェネレーター出力の低さと、動力パイプを内蔵式にしたための排熱問題を抱えており、運動性も低い機体とされてきました。地球連邦軍もジオン軍も次々と新型モビルスーツを投入する戦況で、劣勢となったジオン軍が残されたザクIを有効活用するために開発したのがザクI・スナイパータイプであり、運動性が低い機体を戦力化する最適解といえる存在でしょう。
専用のジェネレーターと冷却装置を搭載した大型のバックパックを装備し、長射程の「ビーム・スナイパー・ライフル」の運用を可能とした機体で、頭部は狙撃の精度を高めるために「ザク強行偵察型」のカメラアイを使用しています。右膝には特殊なギアが装備されており、機体の安定性を高めるためにひと役買っていますが、運動性は劣悪で、部隊後方からの狙撃を主任務とした機体となりました。
映像作品への登場としては、OVA『機動戦士ガンダムUC』episode 4にて獅子奮迅の働きぶりを見せ、世代的にはるか格上のMS「ネモIII」の撃破にすら成功しています。旧式兵器でも運用次第では戦えることを示した偉大な機体といえるでしょう。
●ザクタンク
「ザクタンク」は、破壊されたザクの上半身と「マゼラ・アタック」の「マゼラベース」側を組み合わせたリサイクル兵器です。元々は『コミックボンボン』(講談社)の企画記事から生み出された機体で、後に「MSV」に組み込まれて正式な機体となりました。
おもに「ザクII」の上半身が使われたなか、『機動戦士ガンダム第08小隊』に登場した機体にはザクIが使用されており、両腕が油圧アームに改装されるなど重機としての性格が強い機体となっていました。現地改修のためその場で使用できる機材を組み込んでおり、バリエーション豊かな機体でもあります。
武装としてはマゼラベース側の3連装機銃がメインとなりますが、戦闘に投入された機体の中にはミサイルポッドや180mmキャノン砲など重武装を施されたものも存在しています。機体ごとに性能や役割が異なるのもザクタンクの興味深いポイントです。
映像作品への初登場は『機動戦士Zガンダム』の12話となりますが、新世代の機体を相手に見せ場を作る機会は訪れませんでした。
■戦闘爆撃機とのニコイチも…!
いわゆる「直線番長(まっすぐだけめちゃはやい)」という「HG 1/144 ドラッツェ」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ
●ドラッツェ
「MS-21C ドラッツェ」は、深刻な物資不足に悩む「デラーズ・フリート」(『機動戦士ガンダム0083』)が損傷、もしくは製造途中の段階で持ち出されたF2型ザクIIの胴体をベースに、「ガトル」戦闘爆撃機の胴体をバックパックとして取り付けた簡易型MSです。脚部はガトルのパーツを加工したスラスターモジュールとプロペラントタンク、ザクIIの盾を加工したスラスターポッドで構成されており、高速機動に適した形状となっています。
直線の加速性能だけは非常に高く、「リック・ドムII」にも匹敵するといわれていますが、AMBAC機動(機体の手足を活用する機動)ができないため運動性は低く、直線的な行動を余儀なくされる弱点を抱えています。
武装は右腕に3連装の40mmバルカン、左腕シールド裏に「ビーム・サーベル」を装備しただけであり、戦闘力は同時代のMSと比較すると極めて低い機体です。なお、ビーム・サーベルの運用については専用の小型ジェネレーターと冷却装置を組み込むことで対応しています。
全30機ほどが生産され、移動の速さと戦闘力の低さからおもに偵察や陽動、哨戒任務に使用されましたが、時には戦闘に投入されることもありました。
多くはデラーズ紛争で破壊されたものの少数が生き残り、「ラプラス事変(『機動戦士ガンダムUC』)」でも「袖付き」のカラーリングを施した機体の存在が確認されています。
(早川清一朗)
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