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「物を破壊」以外でどう表現された? 漫画家が到達した「最強」の頂点

マグミクス / 2024年5月30日 20時25分

「物を破壊」以外でどう表現された? 漫画家が到達した「最強」の頂点

■破壊力はシンプルで分かりやすい強さ表現

 主人公が次々と現れる強敵を打ち倒して成長していくバトルマンガやバトルアニメは長年にわたって多くの人に愛されてきました。しかしインフレしていく強さの表現には限界があります。どこまでも強くなっていくライバルを表現するため、作家たちがたどり着いた結論について考えてみます。

●『ドラゴンボール』

『ドラゴンボール』は強さのインフレという問題を最もよく表している作品だといえるでしょう。最初はパンチで岩を砕く程度だった孫悟空が、やがて「かめはめ波」で大地にクレーターを作り、星をも破壊する戦闘力を身につけます。

 戦場は地球からナメック星、界王神界にまで拡大し、次から次へと登場するライバルたちも強くなっていく一方です。「スカウター」により戦闘力を数値化したアイデアも新鮮でした。

 しかしフリーザ戦以降は、どの戦闘表現が強いのか分かりづらく感じます。キャラクターの強さが底上げされたことで、素早く動いたり、エネルギー波を発射したり、地形を破壊したりすることで強さを表現するのは、困難になったように見えるのです。

 そこで鳥山明先生が考案した『ドラゴンボール』のラスボスは、「魔神ブウ」でした。魔神ブウは格闘も強いのですが、殴ったり蹴ったりするバトルの枠を拡張し、有無を言わさず相手をお菓子に変えてしまう特殊能力を使いこなします。ベジータ戦の時点ですでに星を破壊できる戦闘力に達していましたから、物理的な破壊という物差しだけでそれ以上を描くのは、徐々に難しくなっていったのかも知れません。

●『天元突破グレンラガン』

 おそらく日本のアニメ、マンガ史上、究極の宇宙的スケールに到達したと思われるのがアニメ『天元突破グレンラガン』です。同作では主人公「シモン」が光るドリルと人間の頭部のようなメカ「ラガン」を見つけたことから、宇宙的スケールの戦いへと発展します。そして二重螺旋のDNAを持つ生命体に秘められた「螺旋力」の高まりによって、ついには「銀河を放り投げる」ほどの戦いにまで到達しました。

 シモンが最後に搭乗した人型兵器は、メカの枠を超えた宇宙的スケールの巨人「超天元突破グレンラガン」です。螺旋力で形成された燃え盛る青い肉体の全長は銀河の3倍といわれており、その全長は52.8光年(約501兆km)とされています。

 この戦いは極限の世界から急激に収縮し、最終的に生身の殴り合いで決着をつけることになりますが、物理的な強さ表現の極地が描かれたといえるでしょう。

■『ジョジョ』『ONE PIECE』では?

『ジョジョの奇妙な冒険』ビジュアル (C)荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・ジョジョの奇妙な冒険THE ANIMATION PROJECT

●『ジョジョの奇妙な冒険』

「スタープラチナ」に代表される「スタンド能力」で知られる『ジョジョの奇妙な冒険』ですが、実はスタンドが登場したのは第三部からです。それまでのジョジョは「波紋」という能力でゾンビや吸血鬼などと戦っており、その強さ表現は主に人体や建築物の破壊によるものでした。『ドラゴンボール』的な破壊力が強さとして表現されていたのです。

 しかし作者の荒木飛呂彦先生が「スタンド」を発明することで表現の幅が広がり、物を破壊すること以外で強さを表現するようになります。例えばミクロサイズのスタンド「ラバーズ」は「髪の毛一本さえ動かすことの出来ない、史上最弱のスタンド」ですが、人体に侵入して重要な神経や臓器を攻撃できますし、「デス・サーティーン」は夢の世界に引きずり込みます。

 これらはサイズや破壊力とはまったく別の物差しで強さを表現しています。そしてその究極ともいえる能力は「時間を止める、時間を吹き飛ばす」というものでした。大地にクレーターを穿ち、星を砕き、銀河を放り投げることはできなくても「強い」のです。

 スタンドの発明は強さのベクトルを変えることだといえるでしょう。能力という軸によって破壊以外の表現方法が再発見されたのです。この方向性は『HUNTER×HUNTER』の「念能力」や『呪術廻戦』の「呪術」など、多くのマンガで見られます。

●ONE PIECE

『ONE PIECE』のバトル表現には3つの軸があります。ひとつは「覇気」によるもので物理的な防御力や破壊力に特化しています。『ドラゴンボール』的でシンプルな強さだといえるでしょう。

 ふたつ目の軸は「悪魔の実の能力」です。スタンド能力や念能力などと同じように、様々な能力で強さを表現しています。レーザーを使いこなす光人間や周囲を凍らせる氷人間などがその代表です。

 そして最後の表現の軸はルフィ個人です。当初はゴムの特性を持つ「ゴムゴムの実」の能力者だと思われていたルフィは、のちに「ヒトヒトの実」の幻獣種モデル「ニカ」の能力者であることが判明し、その力を使いこなせるようになります。ニカの能力は、とらえどころのないマンガ表現そのものです。

 覇気のバトルは『ドラゴンボール』のバトルと同じように、より強い覇気の持ち主が勝ちますし、悪魔の実の能力はいかに相手の能力をハックして戦うかの機転が求められます。しかしニカの能力にはまるで理屈がないように見えます。

 例えば『ONE PIECE』の表現の解像度なら、拳がまるごと相手の頭部にめり込んで変形させたら致命傷を意味します。しかしニカが殴ると、まるで『トムとジェリー』などのカートゥーンのように拳がめり込んだ分、逆側が膨らむのです。この表現はバトルマンガにギャグマンガが乱入したようなもので、本来は異物です。マンガ表現としか言いようのない自由さがルフィの強さだと言えるでしょう。

 作品テーマと表現は密接にリンクしています。自由を求める物語である『ONE PIECE』に自由なマンガ的強さで戦うルフィはぴったりです。今後の強さ表現もテーマと合わせて様々なものが発明されていくでしょう。

(レトロ@長谷部 耕平)

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