『鬼滅の刃』他の柱から見た無一郎とは? 毒舌の天才剣士が炭治郎にだけ優しい理由
マグミクス / 2024年5月31日 18時25分
■厳しい態度は余裕のなさの現れ
2024年春アニメとして放送中の『鬼滅の刃 柱稽古編』、第4話は「霞柱」の「時透無一郎」による稽古から物語が始まります。無一郎は最年少の「柱」で、わずか14歳という年齢にもかかわらず、刀を握ってわずか2か月で柱へと昇格しました。同僚の柱や一般隊士は、この天才剣士についてどう思っているのでしょうか。
※この記事にはアニメ『鬼滅の刃』放送前の内容を含みます。未視聴の人はネタバレにご注意ください。
●過去の記憶を持たない剣士
霞の呼吸を使いこなす無一郎は、まるで霞のようにとらえどころのない人物に見えます。とつとつとした抑揚に欠ける口調も相まって、戦闘マシンのような冷酷な印象を持つ人も多いでしょう。
しかし「刀鍛冶の里」編で記憶喪失だったことが明らかになり、炭治郎とのやり取りをきっかけに少しずつ失われた記憶を取り戻します。そしてついに上弦の伍「玉壺(ぎょっこ)」との戦闘中に忘れていた過去を完全に思い出して覚醒しました。
記憶を取り戻した無一郎は感情も取り戻して年相応のエモーショナルな人物になるかと思いきや、基本的なパーソナリティに変化は見られません。「柱稽古編」の第3話では、道場で一般隊員を叩きのめし、淡々とした声でその至らなさを指摘していました。
「もう無理です!」と弱音を吐く隊員に対して、「何言ってるの、こんなのもできないならすぐ鬼に食われちゃうよ」「君、本当ならもう3回は死んでるよ」という無一郎の言葉は完全な正論であり、熱量を持って叱咤激励すれば隊員のやる気を刺激できたでしょう。しかし淡々とした声で投げかけられると、「失望」されたかのような絶望感があります。この様子だと一般隊員からは恐れられているのではないでしょうか。
●柱との関係性
鬼を斬ることに力を注ぐ無一郎に対して、ほかの柱はどう思っているのでしょうか。『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録・弐』(集英社)収録の「柱相関言行録」によれば、「水柱」の「富岡義勇」、「蛇柱」の「伊黒小芭内」、「風柱」の「不死川実弥」は無一郎と関係が薄く、ほとんど話したことがないとのことです。
また、「恋柱」の「甘露寺蜜璃」は無一郎の態度を「悟り開いてる系で素敵」、「音柱」の「宇髄天元」は「ぼーっとしている、地味」と評価しており、前述の3名と合わせて彼の内面への理解に乏しいといえるでしょう。
しかし「蟲柱」の「胡蝶しのぶ」は記憶喪失の診察をしていたこともあってか、無一郎を「言葉を選べないことがあるが根は良い子」と理解しており、「岩柱」の「悲鳴嶼行冥」も「言うべきことは言える。精神が成熟している」と評価しています。「炎柱」の「煉獄杏寿郎」もまた無一郎の努力を認めており、この3名は内面にまで踏み込んだ理解に至っているといえるでしょう。こうしてみると、一枚板のように見える柱たちにも、その関係性の密度にグラデーションがあることが分かります。
●炭治郎は特別?
無一郎が記憶を取り戻すきっかけとなったのは炭治郎が放った「人のためにすることは巡り巡って自分のためになっているもの」という何気ないひと言でした。この言葉はかつて無一郎の父親が口にしたものです。そして無一郎の父と炭治郎は同じ赤い色の瞳をしていました。
このことから炭治郎と無一郎は遠い血縁関係かと思われましたが、真実は異なります。実は、無一郎の祖先は「継国巌勝」、後の「黒死牟」なのです。彼は、かつて「鬼舞辻無惨」に瀕死の重傷を負わせた「継国縁壱」の、実兄にあたる人物でもあります。
炭治郎の祖先「竈門炭吉」は「継国縁壱」と深い親交があり、日の呼吸と花札の耳飾りを受け継いでいます。炭治郎の瞳と言葉が無一郎の記憶復活のきっかけになったのは、炭吉を通じて子孫の炭治郎にまで伝わった継国縁壱の眼差しとあり方に、無一郎に流れる継国の血が反応したのでしょう。
自他ともに厳しい態度を貫く無一郎ですが、炭治郎に対してのみ態度を軟化させるのは、先祖から受け継いだ関係性にあるのかもしれません。
※煉獄の「煉」は「火+東」が正しい表記
(レトロ@長谷部 耕平)
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