「これもザクの子孫?」ジオン軍の顔「ザクII」の系譜はどのように紡がれていったのか
マグミクス / 2024年6月4日 6時25分
■「ザクII」が誕生したからこそ後継機も生まれるに至った
「ガンダム」シリーズの魅力を語ろうとすれば、バリエーション豊かな「モビルスーツ(MS)」と、その洗練されたビジュアルは必ず挙がるでしょう。ファンであれば、思い入れのある機体がきっとあるはずです。また『機動戦士ガンダム』から始まり、続編や派生作品へとつながる歴史を踏まえることで、作品をより楽しめる点も同シリーズの醍醐味といえるでしょう。
そうしたひとつであるMSの開発史を振り返ると、「ジオン公国軍」が開発した傑作機「ザクII」の存在は、陣営を問わず全体を俯瞰しても、とても大きいことがうかがえます。ザクIIは「ジオン軍の顏」といっていいほどの機体であり、その汎用性の高さから「一年戦争」のあらゆる場面で運用され、そしてその後のMS開発において大きな影響を与えることになるのです。
OVA作品である『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』に登場した突撃専用MS「ドラッツェ」は、ザクIIのパーツが流用された機体です。ブルーを基調とした全身、脚部に長いスラスターといった見た目をしており、ザクIIの面影はありませんが、胴体には「ザクII F2型」のパーツが利用されています。
ドラッツェは、ジオン公国軍の残党である「デラーズ・フリート」が独自に開発した機体で、兵力や資材が乏しかったために、胴体にザクII、脚部に戦闘爆撃機「ガトル」のスラスターを流用するという寄せ集めによって完成しました。簡易的なMSではあるものの、高い機動性によって偵察任務や陽動作戦に投入されるなど重要な役割を果たしています。
戦いによってほとんどの機体を失うことになりますが、「グリプス戦役」「第二次ネオ・ジオン戦争」以後も運用されました。たまたま流用できただけかも知れませんが、ザクIIの存在があったからこそ、誕生したMSともいえるでしょう。
また、ザクの後継機といわれているのが映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』で描かれた「ギラ・ドーガ」です。
ネオ・ジオンは、MSの開発技術が進化する過程において方針が定まらないなか、改めて原点に戻って「ザクIIの系譜」を再評価するに至り、その結果、ザクの設計思想を受け継いだギラ・ドーガが開発され、後に「ネオ・ジオン」の主力機となります。旧ジオン系のMS開発技術が反映されていることもあり、いかにザクIIの設計思想が洗練されたものかがうかがえる機体となりました。
■脈々と受け継がれていく「ザクII」の系譜
ザクIIの系譜を受け継いで開発された「ギラ・ドーガ」の後継機。「HG 1/144 ギラ・ズール」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ
さらにその思想は受け継がれ、ギラ・ドーガの後継機として「ギラ・ズール」が『機動戦士ガンダムUC』に登場します。そして、ギラ・ズール親衛隊機をベースに、ネオ・ジオンの残党である「袖付き」の技術試験用試作機として開発されたのが「クラーケ・ズール」で、これは旧ジオン軍の「高速機動型ザク」のコンセプトを再現した機体になります。
高速機動型ザクとは、ジオン軍がニュータイプ専用機開発プロジェクト「ビショップ計画」によって開発した試験用の機体で、「ジオング」のテストベッド機ともいわれています。時を経て、かつての技術を取り入れるという流れは、「ガンダム」シリーズの歴史を感じられるため、ファンであれば、胸が熱くなる展開ではないでしょうか。
さらに『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』にも、ザクIIを連想させるビジュアルの「メッサーF01型」という機体が登場します。本機は、反地球連邦政府運動組織「マフティー」の主力機であり、上述したギラ・ドーガや、最後のシャア専用機「サザビー」といったネオ・ジオン系MSを彷彿とさせるビジュアルに加え、肩にスパイクを備えます。
開発はアナハイム・エレクトロニクス(AE)社で、ガンプラ「HG 1/144 メッサーF01型」(BANDAI SPIRITS)の説明書によると、AE社のマフティーへの関与をカモフラージュするために、ネオ・ジオン系MSの外見にしたと考えられるとか。胸のあたりは連邦系MSの意匠にも見え、本機にザクIIの設計思想がどの程度、引き継がれているかは分かりませんが、逆にいえば肩のスパイクひとつとってもザクIIやギラ・ドーガの系譜と見なされる(カモフラージュできる)ということであり、そうした意味で「血脈は受け継がれている」といえるかもしれません。
ほか、「物語世界における歴史的、直接的なつながり」はないながらも、『機動戦士ガンダム00』の「ティエレン」や、『新機動戦記ガンダムW』の「リーオー」、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の「ザクウォーリア」といった「ザク的な存在」であるところの機体が描かれています。メタ的な視点という意味でも、「ザクII」の存在の大きさがうかがえるといえるでしょう。
改めて多岐に渡る「ガンダム」シリーズを視聴する際、「ザクの子孫」たちに注目すれば、より深く「物語内外の歴史」を感じられるかもしれません。
(LUIS FIELD)
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