作画崩壊に「笑った」 「事故った」回が長年語り継がれるアニメ
マグミクス / 2024年6月6日 19時5分
■「作画崩壊」で一躍有名に
アニメ史に歴史を残した作品のなかには、いわゆる「作画崩壊」で伝説になったアニメも少なくありません。制作に携わった人たちにとっては笑いごとではないかもしれませんが、作画ミスの内容によっては視聴者がお祭りのように盛り上がることがあります。
その代表的な例として、まず「トランスフォーマー」シリーズのアニメ第1弾『戦え! 超ロボット生命体トランスフォーマー』が挙げられるのではないでしょうか。同作は日米合作のアニメ作品として制作され、のちに数多くの続編が作られた変形ロボットアニメの金字塔です。しかし初代TVシリーズは明らかな作画ミスと捉えられるシーンも多く、今もネタとしてアニメファンの間で語り継がれています。
まず有名なのが、キャラクターの彩色ミスによる数々の迷シーンです。つまり登場するロボットたちの色を塗り間違えてしまっているシーンが数多く存在するのですが、これによって本来は1体であるはずのキャラが突然分身するといった作画崩壊が頻繁に起こっていました。
他にも「デストロン」であるはずのロボットのエンブレムが「サイバトロン」になっていたり、武器の砲身がいきなりふたつに増えたり、そこにいるはずのないキャラが混ざっていたりなど、ありとあらゆるパターンの作画ミスが見受けられます。そういったツッコミどころを探すために、同作を見るアニメファンも意外といるようです。
とはいえ当時としてはかなり手の込んだ作画シーンも多いうえ、ストーリーそのものも全体的に分かりやすく面白いので、「笑える作画崩壊アニメ」として愛される不思議な魅力があります。
事実として同アニメは世界的に大ヒットしており、初代TVシリーズの後に作られた劇場版は、アメリカが莫大な予算を出資してくれた結果、とんでもないクオリティの神作画アニメに仕上がりました。現代のアニメでもなかなか見られないレベルのアニメーションとなっており、作画ファン必見の作品として知られています。
■作画崩壊を超えた「ダイナミック作画」
画像は「DYNAMIC CHORD Cover Compilation」CD(honeybee black)
作画崩壊アニメを語るうえで、やはり『DYNAMIC CHORD(ダイナミックコード)』は外せません。同作は音楽事務所兼レコード制作会社「DYNAMIC CHORD」に所属するバンドメンバーたちの苦悩と友情、そして夢への軌跡を描いたアニメ作品です。作中には車内の天井から生えるシートベルトや、歩道にせり出したあり得ない構造のカフェ、部屋のTVより小さくなってしまったキャラクターたちなど、ダイナミックで笑えるタイプの作画崩壊が随所に散りばめられていました。
イケメンなキャラクターやシリアスなストーリーとのギャップも相まって、下手なギャグ作品よりも笑えると話題を集め、「見る抗うつ剤」と称する人もいるようです。また作画崩壊以外にもダイナミックすぎるストーリー展開や、「追いピアノ」に代表される独特なSEの使い方など、見どころは盛りだくさんでした。ちなみに、この作画は作画崩壊を超えた「ダイナミック作画」とも言われており、ちょっとしたミームとして広まりました。
そして最後は、のちのアニメ史に「とある基準」を作ってしまったほど有名な作画崩壊アニメ『夜明け前より瑠璃色な Crescent Love』です。同作は「オーガスト」の大人気美少女ゲームをアニメ化した作品で、2006年の秋クールアニメとして放送されました。
このアニメはたったひとつのとある作画崩壊が、今もなお語り継がれるほどの伝説になっています。というのも第3話の料理対決シーンで、まるでゴム毬のような形のキャベツが登場し、多くのアニメファンに衝撃を与えました。
特筆すべきはのちのアニメ業界への影響で、この「伝説のキャベツ回」が放送されて以降、アニメファンは他のアニメでもキャベツの作画に注目するようになりました。「キャベツの作画が良いアニメは神アニメ」といった風潮まで生まれ、キャベツの作画を吟味することを「キャベツ検定」などと言うネットスラングまで誕生しています。
さらには『ハヤテのごとく!』や『ハッカドール THE あにめ~しょん』、『モンスター娘のいる日常』といった数々のアニメ作品で、キャベツ回のパロディシーンが登場します。また2011年放送のアニメ『THE IDOLM@STER』を筆頭に、キャベツの作画にやたらとこだわる作品が増えた印象です。
とはいえ『コードギアス 反逆のルルーシュ』や『涼宮ハルヒの憂鬱』といった名作ぞろいの2006年に『夜明け前より瑠璃色な』が爪痕を残せたのは、キャベツ回があったからともいえるのではないでしょうか。ネガティブな意味で使われがちな「作画崩壊」ですが、何も悪いことばかりでもないのかもしれません。
(ハララ書房)
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