登録抹消された「ガンダム」のその後 グレート合体を各陣営がトライアルしたワケは?
マグミクス / 2024年6月12日 6時25分
■登録抹消になった「ガンダム」たちがその後のMSに与えた影響
OVA『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』で、物語の重要なポイントとなった「ガンダム開発計画」は、最終的には計画凍結となり歴史の闇に葬り去られました。ところが、その後継機と思えるMS(モビルスーツ)がいくつか、後の世に秘かに生まれているのです。
ガンダム開発計画とは、「一年戦争」終結後の地球連邦軍が次世代の高性能MSを生み出すため、「アナハイム・エレクトロニクス」に外部発注した計画でした。その理由として、アナハイムがジオン公国最大の軍事メーカー「ジオニック」を戦後に吸収合併するなど、連邦とジオンの技術を融合させるのに最適だったからといわれています。
高性能MSとひと口にいっても、なにをもって高性能とするのか、さまざまな要素がありました。そこでアナハイムは、あらゆる局面に適応できるよう、複数の異なる「ガンダム」を試作することになります。それがガンダム開発計画の名を取った「GPシリーズ」でした。
初代ガンダムである「RX-78」の純粋な後継機で、汎用型の「RX-78GP01 ガンダム試作1号機ゼフィランサス」、核攻撃を主眼に置いた「RX-78GP02A ガンダム試作2号機サイサリス」、宇宙空間の拠点防衛用に開発した「RX-78GP03 ガンダム試作3号機デンドロビウム」、この3機がGPシリーズとしてロールアウトします。
このほかにもトライアル用として開発され、後のGPシリーズの原型機となった「RX-78GP00 ガンダム試作0号機ブロッサム」、対MS戦を主眼に置きながら別のMSに改修された「RX-78GP04G ガンダム試作4号機ガーベラ」が存在しました。いずれも花の名前がコードネームに使われています。
しかし、ガンダム開発計画は思わぬ事態に巻き込まれてしまいました。それがジオン残党組織「デラーズ・フリート」による「星の屑作戦」です。この作戦を遂行させるためにGP02はデラーズ・フリートに奪われ、よりにもよって連邦軍の艦隊に核弾頭を発射するという、連邦にとっては最悪な事態を引き起こしました。
この作戦の裏では、後にジオン残党狩りを目的とした組織「ティターンズ」を結成する「ジャミトフ・ハイマン」の思惑もあり、意図的な策略によってガンダム開発計画は「登録抹消」となってしまいます。ちなみに、これによって浮いた予算は、そのままティターンズ創設の資金となりました。
こうして、ガンダム開発計画で生まれた技術は封印されることとなります。しかし、そこは「死の商人」といわれているアナハイムだけに、後の世においてその技術を秘かに流用したと思われるMSが開発されています。
たとえば「MSZ-006 Zガンダム」には、GP01の改修機である「ガンダム試作1号機 フルバーニアン」と、カラーリングや脚部の構成などに類似点が見受けられました。さらに「RMS-009 リック・ディアス」は、GP02の影響を受けたと考えられます。共にティターンズと敵対する反地球連邦組織「エゥーゴ」に供与されている点が因縁かもしれません。
もっとも巨大MA(モビルアーマー)のコアとしてMSをドッキングさせるというコンセプトを持つGP03は、特異な存在であるがゆえ、後継機と思える機体はそれほど多くありません。しかしそれら後継機と見られる機体は、その突出した能力ゆえに、いくつかの戦場で驚異の戦闘力を披露することになるのでした。
■MSが巨大MAのコアになる「グレート合体」を開発した各陣営
なるほどこれはデンドロビウムの系譜。「MG 1/100 PLAN303E ディープストライカー」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ
「MSとMAの合体」というコンセプト自体は、一年戦争でも「Gアーマー」という例がありました。しかし、巨大MAという点を考えると、GP03が始祖の扱いといえるのではないでしょうか。
そのGP03が直接、影響を与えたかは不明ですが、皮肉にも地球連邦軍各陣営でMSをMA化する計画は存在しました。そのひとつが模型企画「ガンダム・センチネル」に登場した、アナハイムの開発による「MSA-0011[Bst]PLAN 303E S(スペリオル)ガンダム ディープ・ストライカー」です。もっとも机上プランのみで、試作されることもなく計画は終わりました。
ティターンズ側もコンセプトを練り込み、コアとなるMSにさまざまな強化パーツをドッキングさせて汎用化させるというプランを立てます。それが雑誌企画「ADVANCE OF Z ティターンズの旗のもとに」などに登場する「RX-124 ガンダムTR-6[ウーンドウォート]」でした。
このTR-6は「MRX-009 サイコ・ガンダム」の両手両足を接続させた「ガンダムTR-6[ウーンドウォート]サイコ・ガンダムII ギガンティック・アーム・ユニット形態」ほか、その名もズバリ「デンドロビウムII」と呼ばれる可能性もあった「ガンダムTR-6[クインリィ]」という仕様もあります。
そして宇宙世紀0089年が舞台のマンガ『機動戦士ガンダム ヴァルプルギス』(脚本:海冬レイジ/著:葛木ヒヨン/原案:矢立肇、富野由悠季/KADOKAWA)に登場した「TRX-007 デルフィニウム」という機体は、デンドロビウムに酷似した外観を持ち、作中で「封印された機体をもとにした模造品」といわれていました。
さらに宇宙世紀0096年を舞台にしたアニメ『機動戦士ガンダム Twilight AXIS』でも、「RX-78AN-01 ガンダムAN-01トリスタン」とドッキングする巨大アームドベース「RX-78KU-01 クレヴェナール」という機体が見られます。
その詳細な開発経緯は不明ですが、後にクロスボーン・バンガードの母体となる「ブッホ・ジャンク社」の私兵武装集団「バーナム」で運用されたという機動兵器であり、さらにトリスタンが、一年戦争中に破損した「RX-78NT-1 ガンダムNT-1アレックス」を改修したMSである、といった点からも、謎の多い機体でした。
このように、表向き登録抹消になったはずのアームドベースは、各陣営で秘かに開発が行われました。さすがにジオン側へのデータの漏洩はなかったのかもしれませんが、MSを巨大MAのコアにするというアイディアは別の形で生かされました。それがアニメ『機動戦士ガンダムUC』に登場した「NZ-999 ネオ・ジオング」と、アニメ『機動戦士ガンダムNT』に登場した「NZ-999 II(セカンド)ネオ・ジオング」です。
共に「MSN-06S シナンジュ」と「MSN-06S シナンジュ・スタイン」というMSをコアとしており、人型に近い形をしていました。その名前の通り、一年戦争最終盤に投入された「MSN-02 ジオング」の系列機で、さらに型式番号からもジオン系大型機動兵器の系譜だと考えられます。
これらの機体と所属組織を考えると、どの陣営もGP-03の系譜の機体を開発していたのかもしれません。なにせ、もともとの製造元があのアナハイムですから、情報漏洩もあえて見逃していた可能性すらあります。各陣営がこぞって開発するほど、ガンダム開発計画で生み出された技術は高いものだったのでしょう。
(加々美利治)
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