「このトラウマは一生の傷」あまりにも救われない主人公の死

■いいですか、落ち着いて聞いてください「主人公は助かりません」

　魅力的な主人公であればあるほど、「主人公の死」は受け入れがたいものです。それが展開上必要な「死」であったとしても、立ち直るまでに時間がかかった視聴者もいるのではないでしょうか。この記事ではネット上で「誰か助けてください」「悲しすぎて号泣した」と評判の、「主人公死亡アニメ」を3作品、みてみましょう。

※この記事は、『BANANA FISH（バナナフィッシュ）』『バジリスク～甲賀忍法帖～』『コードギアス 反逆のルルーシュR2』のネタバレを含みます。

●『BANANA FISH（バナナフィッシュ）』

　ずば抜けた戦闘力と美しい容姿を持つ少年「アッシュ・リンクス（CV：内田雄馬）」は、ニューヨークのストリートギャングのボスです。彼は、カメラマンの助手としてやってきた日本の少年「奥村英二（CV：野島健児）」と、謎の言葉「バナナフィッシュ」の真相を追います。

　強い反面、幼少期から性的暴行を受けてきた孤独なアッシュと、彼を特別扱いしない英二は、唯一無二の絆を育みます。しかしすべてが終わった後、英二からの手紙を読んでいたアッシュは、ギャングのひとり「ラオ・イェン・タイ（CV：斉藤壮馬）」に刺され死んでしまいます。

　どんなに強い敵でも倒してきたアッシュが、大切な英二の手紙が隙となり殺されてしまう、皮肉で切ないラストを迎えます。「僕の魂はいつも君と共にある」という一文を読みながら、アッシュは英二と行った図書館で静かに事切れました。彼の人生は、救われたのでしょうか。

●『バジリスク～甲賀忍法帖～』

　慶長19年の春、徳川家の世継ぎ問題を決着させるため、400年の宿怨を持つ伊賀と甲賀の忍者たちが再び争うことになりました。伊賀の「朧（おぼろ／CV：水樹奈々）」と甲賀の「弦之介（げんのすけ／CV：鳥海浩輔）」は、愛し合っていながら、この忍法殺戮合戦に巻き込まれます。

　壮絶な戦いを生き抜いたふたりは、ついに最後の決闘を行います。朧は弦之介に刃を向けますが、「大好きです、弦之介さま」とその刃を自分に向けて自害してしまいます。弦之介は朧から刃を抜いて抱き上げ、そのまま一緒に川へ入って自害するのでした。

　愛し合うがゆえにお互いが自害してしまう、悲痛な最終回です。叶わないと分かっていながら、朧が決闘前に「弦之介との祝言」を想像するシーンも、胸が痛くなります。最終24話のサブタイトル「来世邂逅」は、そのようなふたりの願いが込められているのかもしれません。

●『コードギアス 反逆のルルーシュR2』

　ブリタニア帝国に占領された日本で、ブリタニア人の青年「ルルーシュ・ランペルージ（CV：福山潤）」は、「ギアス」の力を手に入れます。ブリタニア帝国を憎み壊そうとするルルーシュに対し、彼の旧友である「枢木スザク（CV：櫻井孝宏）」は、ブリタニアを守る軍人でした。

　ルルーシュはさまざまな知略を駆使して世界を統一し、ブリタニア第99代皇帝になります。しかし、黒の騎士団「ゼロ」に変装したスザクに胸を刺され、死亡してしまいます。「憎しみの連鎖を断ち切るため」と、あえて独裁体制を作ったうえで、スザクに自分を殺させたのです。

　世界を憎み、壊そうとしていたルルーシュが、自分を犠牲にして新しい世界を作る衝撃の展開でした。ただし、彼の死の本当の意味を知る者は多くありません。「撃っていいのは、撃たれる覚悟のある奴だけだ」という名言を、みずからの死で体現する結果となりました。

＊　＊　＊

　主人公が死んでしまうアニメはどれも、愛する人のためにその命を捧げているように思えます。代償が大きいからこそ救えるものもあるのでしょうが、「主人公が生きていたら……」と思わずにはいられません。多少の闇堕ちは覚悟の上でご視聴ください。

（新美友那）