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【金ロー】初放送の『リメンバー・ミー』は、家族にかけられた「呪い」を解く感動作

マグミクス / 2020年2月21日 18時20分

【金ロー】初放送の『リメンバー・ミー』は、家族にかけられた「呪い」を解く感動作

■マリーゴールドに包まれた華やかな「死者」の祭り

 アカデミー賞長編アニメ賞、主題歌賞を受賞したディズニー=ピクサーによるアニメ『リメンバー・ミー』(2017年)が、2020年2月21日(金)の「金曜ロードSHOW!」(日本テレビ系)にて、初めてテレビ放送されます。『トイ・ストーリー3』(2010年)を大ヒットさせたリー・アンクリッチ監督だけに、期待を裏切らない面白さです。

 メキシコの田舎町を舞台にした『リメンバー・ミー』は、死者の世界をポップでカラフルに描いた、とてもユニークな作品です。メキシコには「死者の日」と呼ばれるお祭りがあり、町全体がマリーゴールドの花で飾られ、花の香りでいっぱいになるそうです。物語の主人公であるミゲル少年は、うっかり死者の世界へと足を踏み入れてしまい、ミゲルが生まれる前に亡くなったご先祖さまたちと遭遇することになります。

 オレンジ色を基調にした明るい「あの世」で暮らすご先祖さまたちは、見た目は不気味なガイコツですが、性格はみんな陽気で個性的。そんなご先祖さまたちと一夜の交流を経て、ミゲルは「自分が本当にやりたいことは何か」に気づくのです。

■夢を持つことが「呪い」になる?

 世界各国で人気を博した『リメンバー・ミー』は、日本でも興収50億円の大ヒットを記録しています。日本にも、お盆には「あの世」から帰ってくるご先祖さまを迎え入れる風習があります。そんな日本人の感性ともぴったりマッチしたようですが、もうひとつ現代人の心に訴えるキーポイントがあったように思います。

 現代人にとって気になるキーポイント、それは『リメンバー・ミー』が「呪い」を解くリアルな人間ドラマだということです。主人公のミゲルはミュージシャンになることを夢見ていますが、ミゲルの一家は代々靴づくりの職人であり、ミゲルが音楽を聴くことも、楽器を演奏することも禁じています。

 実は、ミゲルの曾祖母にあたるママ・ココの父親は「音楽家になる」と言って家を出てしまい、一度も帰ってきませんでした。それ以来、ママ・ココの母親であるママ・イメルダは靴職人として家族を養い、音楽を憎むようになってしまったのです。

 ミゲルは家族の愛情を浴びて育ちましたが、家族はミゲルがミュージシャンになることには反対し、家業である靴づくりを手伝うことを望んでいます。ミゲルたち一家にとって、音楽は家族の絆をほどいてしまう「呪い」となっていたのです。

■現代人を悩ませる、さまざまな「呪い」

『リメンバー・ミー』主人公のミゲルは、「あの世」で自分のアイデンティティを見つける (C)2018 Disney/Pixar

「呪い」と聞くと中世のおどろおどろしい呪術を思い浮かべがちですが、現代社会でも呪いを気にする人は少なくないと思います。お正月やお盆に実家へ帰省する際に、家族や親戚から「就職は決めた?」「結婚はしないの?」「子どもはどうするの?」と尋ねられるのを快く感じられない人もいるのではないでしょうか。

 家族や親戚は心配して尋ねているのでしょうが、尋ねられた側にとっては「就職」「結婚」「出産」などのおめでたい言葉が「呪い」として重くのしかかることになります。幸せを願う家族の「祈り」が、逆に当人にとっては「呪い」となってしまうのです。家庭によっては、ほかにも大小さまざまな「呪い」があるかもしれません。

「ミュージシャンになる」という夢を家族に反対されたミゲルは、あの世で初めて会ったご先祖さまと触れ合い、自分自身の隠されたアイデンティティを見つけることになります。歌うことの楽しさ、歌に込められた想いを知ったミゲルは、長年にわたって一家にかけられていた呪いを解くことができるのでしょうか。呪いからの解放は、『リメンバー・ミー』の裏テーマといえるでしょう。

■クリエイターの人生観が投影された「死後の世界」

『ティム・バートンのコープスブライド』DVD(ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント)

 映画の世界では、これまでにもいろんな作品で「あの世」が描かれてきました。3Dアニメ『ティム・バートンのコープスブライド』(2005年)の主人公は、現実世界よりも死者の世界に居心地のよさを感じます。オタク少年として孤独な青春を送ったティム・バートン監督らしい、ユーモラスな世界観です。

 クリント・イーストウッド監督が撮った『ヒア アフター』(2010年)は、「臨死体験」を真面目に描いた異色作です。津波に襲われて九死に一生を得た女性キャスター、死者の声が聞こえる霊能者、双子の兄を失った喪失感に悩む少年が、それぞれ不思議な運命に導かれます。臨死体験者たちは、「明るい光に包まれた」「懐かしい人たちに再会した」など共通した記憶を持っているそうです。本当にあの世(ヒア アフター)はあるのか、考えてみたくなります。

 最後に山崎貴監督が撮った『DESTINY 鎌倉ものがたり』(2017年)を紹介しましょう。西岸良平氏のロングセラーコミック『鎌倉ものがたり』を実写映画化したもので、鎌倉で暮らすミステリー作家(堺雅人)が黄泉の国に旅立った妻(高畑充希)を連れ戻そうとするファンタジーになっています。山崎監督は黄泉の国を恐ろしい世界としては描かず、初めて訪れるのにどこか懐かしさを感じさせる空間にしています。

「死ぬ瞬間に、その人が何を思っているかによって死後の世界は変わってくるんじゃないかと僕は思うんです。『良かった、満足した、人生をやり切った』と幸せな気持ちで最期を過ごせば、そういう世界に行くんじゃないかと。逆にそれまでの人生で隠し事が多く、自分の良心に咎めるようなことをいっぱいしていると、傷ついた魂とともに暗い世界に行くことになるんじゃないかな」と、山崎監督は『DESTINY』劇場公開時のインタビューで語っています。

「あの世」の描写には、クリエイターたちの人生観が投影されており、とても興味深いものがあります。人間は誰しも「死」から逃れることはできませんが、今回『リメンバー・ミー』とともに紹介した映画は、それぞれ「死」という呪縛や運命にどう向き合うかのヒントが隠されているといえるかもしれません。

(長野辰次)

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