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『バンゲリングベイ』ウソ技の記憶を被害者が語る 「コントローラーを投げたい」

マグミクス / 2020年2月22日 7時10分

『バンゲリングベイ』ウソ技の記憶を被害者が語る 「コントローラーを投げたい」

■興味をかきたてた「コロコロコミック」の特集

 1985年2月22日にハドソンから発売されたファミリーコンピュータ用ソフト『バンゲリングベイ』は、「コロコロコミック」の特集やマンガ『ファミコンロッキー』に登場した「最終兵器」などが話題となり、子供たち注目の作品となりました。しかし実際のゲーム性はマニア向けで、多くの子供たちが投げ出す羽目に。友達の家で遊ばせてもらい買わずに済んだライターの早川清一朗さんが、当時の記憶を語ります。
 
 * * *

 当時の少年の愛読書と言えば、「コロコロコミック」でした。なにせマンガだけではなく、ファミコンの特集記事もたくさん載っていたからです。月刊誌だったので、週刊誌に比べれば親にねだるのも楽でした。

 ちょうど1984年の年末から1985年の頭にかけての時期でしょうか。「コロコロコミック」のファミコン特集で、『バンゲリングベイ』というゲームが扱われるようになりました。ジャンルはシューティングゲームで、『ヘリコプター版ゼビウス』との触れ込みだったのを覚えています。

『ゼビウス』とはシューティングゲーム黎明期に一世を風靡したアーケードの縦スクロールシューティングゲームで、ファミコンにも移植され、やはり大人気となりました。

 筆者も『ゼビウス』をかなり遊んでおりその面白さはよく分かっていたので、当然『バンゲリングベイ』にも強い興味を持ちました。とはいえファミコンのカセットは高級品なので、そう簡単には買えません。それにこの時期は『バルーンファイト』や『アイスクライマー』などファミコン初期の傑作が発売されたばかりで、友だちとの対戦や協力プレイに夢中だったため、『バンゲリングベイ』は見送ることになりました。

 ところがある日、「コロコロコミック」に連載されていたファミコンマンガ『ファミコンロッキー』(箸:あさいもとゆき)に、『バンゲリングベイ』が登場します。その内容はバンゲリング帝国の南にあるバミューダトライアングルから最終兵器が現れるというものでした。

 帝国!? バミューダトライアングル!? 最終兵器!? 少年の心をくすぐる要素満載のこのマンガに、筆者は色めきたちました。現代では簡単に情報を検証できますが、当時その情報が本当なのか試す方法はひとつしかありません。そう、実際にプレイするしかないのです。

 そこで筆者は『バンゲリングベイ』を持っている同級生を探し出し、彼の家にお邪魔することにしたのです。

■開始数分で、コントローラーを投げ出したくなる

『ファミリーコンピュータ ゲーム必勝法シリーズ バンゲリングベイ』(勁文社)

 さあ、いよいよ『バンゲリングベイ』をプレイできる。最終兵器を見てみたい。そもそも一体どんなゲームなんだろう……期待に胸を膨らませていた筆者ですが、開始数分でコントローラーをぶん投げたくなりました。

 自機のヘリコプターがまともに動いてくれないのです。コントローラーの右を押したら右に行く、左を押したら左に行く。それが当たり前だと思っていたのですが、『バンゲリングベイ』は上を押したら前進、左右のキーは自機の方向を変えるために使用する、ラジコンカーと同じような形式でした。

 後に当時ハドソンの社員だった高橋名人が語った話では、ラジコンの操縦がうまくなりたい社員がこのようなプログラミングをしたそうです。とにかく操作がしづらく、その場でぐるぐる回転してしまうこともしばしば。帝国どころかどこに目標の工場があるのかすら分からず、やみくもに動き回ってはあっさりやられ、どうにか工場の爆撃に成功しても次は補給に戻らなければならないなど、小学生にはあまりにも難易度が高いゲームでした。

 傍らで見守っていた同級生には「すごくつまらないだろ?」という感じのことを言われたのを覚えています。いわゆる「クソゲー」をつかまされた悔しさを、筆者にも味合わせたかったんでしょうねえ……。

 それでもどうにか操縦にも慣れた頃、同級生がおもむろに「面白い裏技があるんだよ」と言い、コントローラーII(以下、2コン)をつかみ、マイクに口を近づけ……「ハドソンハドソンハドソンハドソン!」と叫び始めました。

 その時筆者は、確かTVCMで、『バンゲリングベイ』では「ハドソンと叫ぶとなにかが起こる」と言っていたのを不意に思い出したのです。

 そういえばそうだった。何が起こるんだろう? そう考えていた筆者の自機に、不意に攻撃が命中します。何が起こっているのか理解する間もなく、あっという間にやられてしまいました。実は2コンのマイクに対してハドソン以外でもなんでもいいのでとにかく叫ぶと、敵を呼ぶギミックが仕込まれていたのです。

 もう最終兵器もへったくれもありません、完全にやる気をなくし、『バンゲリングベイ』を投げ出すことになりました。『ファミコンロッキー』の内容も嘘だったと後に分かりました。2019年にあさい先生が語ったところによると、「一番反響があったウソ技が『バンゲリングベイ』」だったそうです。

 先生、被害者がここにいます。

 まだインターネットが存在しない頃の、悔しくも懐かしい思い出です。

(早川清一朗)

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