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『ガンダム』随一のやられ役? 地球連邦軍はなぜ「ボール」を実戦投入したのか

マグミクス / 2024年6月21日 6時25分

『ガンダム』随一のやられ役? 地球連邦軍はなぜ「ボール」を実戦投入したのか

■支援用なのにジムよりセンサーが弱い…なぜ?

 アニメ『機動戦士ガンダム』に登場した「ボール」は、地球連邦軍が一年戦争末期に投入した支援用兵器です。マニピュレーターを備えた円形のスペースポッドの上部に、低反動キャノン(口径は90mm、120mm、180mm説があります)を装備しただけの簡易的な兵器で、連邦軍は一応「モビルスーツ(MS)」に分類していますが、「モビルポッド」と呼ばれることもあります。

 量産型MS「ジム」の支援機とされ、一年戦争終戦までに約1200機も生産されました。民間用のスペースポッドを元として、最低限の推力、装甲を与えた兵器であり、決して高性能ではありません。

 マニピュレーターはあくまで作業用で、武器の保持はできないため、ミノフスキー粒子下の接近戦では無力でした。装甲が追加されていますが、申し訳程度のもので、「ザクII」に蹴り飛ばされて破壊された劇中描写が印象的です。蹴ったザクの脚部は壊れていませんので、ボールの装甲や機体強度が脆弱だった証明でもあります。小説『機動戦士ガンダム第08MS小隊』(原案:矢立肇/著:大河内一楼/KADOKAWA)では、地球連邦軍の将兵より「丸い棺桶」「一つ目のマト」などと陰口を叩かれていました。

 地球連邦軍はなぜ、そのようなボールを作ったのでしょうか。主力戦闘機「セイバーフィッシュ」ですらザクには通用しないのですから、ボールがジオン軍のMSと渡り合えるはずがありません。

 ボールは支援用MSとのことですが、数字が高いほど機動性が高いことを示す「推力重量比」は、ボールが0.48、ジムが1.06です。これはつまり、MSどうしの白兵戦を主な戦闘スタイルとする「ガンダム」を基にしたジムが、率先して突撃し近接戦闘に突入したとしても、ボールはその戦術機動に追従不能であることを示しています。ついでに言うなら、スラスターも全周配備であり、推力効率も悪そうです。

 ちなみに試作機であるガンダムは0.925で、劇中の印象とは違ってジムよりも低い数値です。ガンキャノンは0.74、ガンタンクは1.1ですから、ガンダムが突撃しても、支援用のガンタンクは追従可能で、ガンキャノンもある程度まではついていける程度の差であるため、ジムとボールの関係性とは大きく違います。

 センサー有効範囲は、ジムが6000m、ボールが4000mですので、ジムがデータを後方に転送しない限り、ジムが発見した敵をボールは正確には認識できない場合がありますから、後方支援もしにくいと思われます。なおガンキャノンとガンタンクはセンサー範囲6000mで、ガンダムの5700mを上回っています。

 このような現状から、ボールが「支援機」となったのは、たまたまであり、本来は別の思惑で配備された機体だったのではないでしょうか。

 筆者は、連邦軍の想定した戦術の問題だと考えます。

■そもそも「支援用」ではなかったかも?

シロー・アマダは「ボール」で「高機動試作型ザク」をジャイアント・キリング。「MG 1/100 ボール(第08MS小隊版)」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

 多くの軍隊は「自分の軍隊に配備された兵器は、敵も同様のものを使ってくる」と考えるものです。

 一年戦争末期のこの時期、連邦軍最強の兵器は「MS」ではありません。MSよりも、使用できれば圧倒的に威力がある兵器を連邦軍は保有しています。すなわち「ソーラ・システム」です。大型ミラーにより太陽光を集め、その熱量で広範囲の敵を燃焼させるという恐ろしい兵器で、使用された宇宙要塞「ソロモン」は、宇宙艦艇やMSだけでなく、要塞も深刻なダメージを受けています。

 原理も簡単ですから、連邦軍は「ジオンも同様の兵器を投入してくる」という考えがあったのではないでしょうか。

 ちなみに、連邦軍はこの時期「パブリク突撃艇」を実戦投入しています。宇宙船に、「ビーム攪乱幕」を展開する大型ミサイルを搭載した機体です。つまり「ジオン軍のビーム攻撃を無力化」したかったわけです。しかし、一年戦争末期でもジオン軍は、ビーム兵器を主兵装とする「ゲルググ」は少数配備で、主力機である「リックドム」や、多数生産された「ザクII」は実弾兵装です。

 艦艇数でも連邦軍が圧倒しているのですから、連邦は味方戦艦の長距離ビームが無力化され、ビームスプレーガンを主兵装とするジムが戦いにくくなっただけかもしれません。つまり「自軍がビーム兵器をMSに搭載しているのだから、ジオンも搭載している(くる)だろう。だからビーム攪乱幕が必要」という誤判断で、パブリクを大量生産し、むしろ自軍戦力を低下させたとも考えられるわけです。

 さて、ジオン軍がソーラ・システムを使用してくると想定したとして、「ジオン軍もビーム攪乱幕を使ってくるはずだから」、そのソーラ・システムを長距離ビームで破壊するのは困難と、連邦は感じたのでしょう。

 そのような時に、大口径砲を搭載したボールが多数あれば、「実体弾の弾幕でソーラシステムを展開前に破壊できる。ソーラ・システムは広範囲に展開するもので、それに命中弾を与えることは容易だから、ジムを上回る長距離センサーなど必要ない。また、民生用の作業用スペースボッドと同じ作業能力を備えたボールは、味方の『ソーラ・システム』展開時の作業用としても有効に使えるはず」と、連邦は考えたのではないでしょうか。そう考えるなら、ボールの持たされた性能は合理的に感じられます。

 こうしたことから、敵のソーラ・システム対策としてボールを大量生産したものの、ジオンが開発したソーラ・システムは連邦のミラー式ではなく、スペースコロニー自体をレーザー砲にする「ソーラ・レイ」だったので、ボールを配備してもあまり意味がなく、仕方なくジムの支援用として使うことにした、ということだと思われます。

 そしてジオン残党が「ソーラ・システム」を使わないことが判明した戦後は、モビルポッドの存在を誰も顧みなくなったということではないでしょうか。

(安藤昌季)

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