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「アクシズ/ネオ・ジオン」はなぜ地球圏に侵攻したのか ハマーンとその周囲の思惑は

マグミクス / 2024年6月24日 6時25分

「アクシズ/ネオ・ジオン」はなぜ地球圏に侵攻したのか ハマーンとその周囲の思惑は

■連邦も見放している!?

 ニュータイプのカリスマ女性指導者「ハマーン・カーン」が率いる「アクシズ/ネオ・ジオン」は、『機動戦士ガンダム』で敗れたジオン軍の残党であり、アニメ『機動戦士Zガンダム』より登場する勢力です。一年戦争後、彼らは火星と木星の間にあるアステロイドベルト帯の宇宙要塞「アクシズ」に逃げ込み、そこを拠点として活動してきました。

 アクシズは宇宙世紀0072年、当時すでにザビ家の独裁体制下にあったサイド3の共和国(ないし公国。資料により諸説あり)が、アストロイドベルトの小惑星を資源採掘用に徴用し、その内部に巨大なプラントを設置したことに始まります。その工業力により、木星向けのヘリウム輸送船団の基地となったり、宇宙要塞「ソロモン」や「ア・バオア・クー」となる小惑星を地球圏に移動させる拠点となったりしました。

 そして宇宙世紀0081年、一年戦争で敗戦したジオン艦隊は、アクシズに到着します。3万人もの人員を乗せた逃亡艦隊の到着は、アクシズの収容力を越えており、一部の将兵は宇宙艦艇での生活を続けることになります。

 マンガ『機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像』によれば、宇宙世紀0081年から0082年に地球連邦艦隊がアクシズを攻撃したものの、アクシズはこれを撃退しました。0083年には、内乱や指導者「マハラジャ・カーン」の死去もあり、マハラジャの娘ハマーンが、「ミネバ・ザビ」の摂政として実権を掌握します。

 一部戦力は同年のデラーズ紛争で、ジオン残党軍「デラーズ・フリート」を支援するものの、自艦隊は中立を守り、連邦軍側もこれを認めました。そして0086年、アクシズ自体が地球圏に移動し、0087年からの地球連邦内乱であるエゥーゴ対ティターンズのグリプス戦役に第三勢力として参戦します。

 勝者となったエゥーゴが疲弊しきったのを見たアクシズは「ネオ・ジオン」を名乗り、サイド3を制圧し、さらに各コロニーをも制圧した上で地球降下作戦を開始、地球連邦本部ダカールを制圧しました。さらにダブリンにコロニー落としが行われたことで、連邦政府はネオ・ジオンに降伏するような内容の停戦条約を結び、サイド3はネオ・ジオンに譲渡されます。

 しかし、目的を達成したことでネオ・ジオンが内部分裂してしまいました。「グレミー・トト」がハマーンに反旗を翻し一大勢力を形成、両軍は激突し、そして相打ちとなります。機をほぼ同じくしてエゥーゴのネェル・アーガマ隊がハマーンを戦死させ、ネオ・ジオンは一旦消滅したのでした。

 勢力としてのアクシズはこれで滅びますが、筆者は不思議に感じます。なぜアクシズは地球圏に帰還したのでしょうか。

■どこでハマーンは「勝てる」と踏んだのか

角川スニーカー文庫「機動戦士Zガンダム 第四部 ザビ家再臨」(著:富野由悠季/KADOKAWA)より、ハマーンとその乗機「キュベレイ」

 アクシズは0081年に討伐を受けたとはいえ、『機動戦士ガンダム0083』では中立を認められており、かつ本拠地は移動可能でもあります。

 実際、アクシズの指導者マハラジャは、アクシズに居住施設「モウサ」を建設し、永住を視野に入れていたところを、ハマーンに代替わりして方針転換したのです。

 摂政となったハマーンは、マンガ『機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像』(著:北爪宏幸/KADOKAWA)のでなかで「将来地球圏への帰還を果たすと共に、地球連邦に対して過去の雪辱を遂げ、ザビ家再興とジオン公国独立を必ず勝ち取る」と宣言しています。これはとてつもない発言です。小惑星基地でしかないアクシズの国力は、連邦の30分の1どころではありません。

 アクシズは大きく見積もっても数十km程度の大きさで、その居住区は3万人を収容できる規模です。逃亡艦隊の将兵とその家族3万人はすべてを収容しきれず、一部は2年間も艦艇で生活させています。要塞と艦隊を合計しても人口6万人、埼玉県秩父市がアメリカと戦うようなものです。

 食料や工業プラントはあるにせよ、アクシズに資金力があるとは思えず、有能な軍人であるシャアも、0084年にアクシズを離れます。ジオン再興どころか、現状維持ですら困難な状況にも思えてきます。

 そのようなアクシズを支える資金源は、恐らくは木星船団でしょう。サイド3やアナハイムエレクトロニクスなど、親ジオン系の勢力に木星のヘリウムを供給し、代価として物資や技術、情報を得ていたということです。

 当時、連邦のスペースノイド弾圧部隊「ティターンズ」が巨大化しつつありました。アナハイムにとってこれはデメリットしかなく、反地球連邦組織「エゥーゴ」を事実上、組織して、連邦との対決も視野に入れていた時期です。

 アクシズは、国力はともかく有力な軍事力を保有し、アナハイムが入手したいジオン系技術も持っていますから、提携先として魅力があり、秘密裏に支援していたに違いありません(実際、アナハイムはネオ・ジオンの主要モビルスーツ設計図を提供され、勝利後は生産する契約もしています)。一年戦争後に成立したジオン共和国も加わっていた可能性が高いです。

 こうしたアクシズの支援者は、ハマーンに物資と情報を提供した上で「エゥーゴとティターンズの対立で連邦が内戦状態であり、この期に立ち上がらなければジオン再興はあり得ない」と、焚きつけたのでしょう。

 ハマーンとシャアの個人的な感情のもつれもあり、何度か対立はしたものの、アクシズとエゥーゴの同盟的な提携は支援者にとって既定路線であり、だからこそアナハイム幹部がハマーンとの交渉に同席していたということです。

 国力を考えれば、強いはずがないアクシズ/ネオ・ジオンでありながら、ハマーンは『ZZ』で地球連邦を事実上、降伏させ、サイド3の独立を勝ち取り、有言実行していますから、とてつもない実力を持つ指導者といえます。指図されたがらないシャアが逃げるのも、無理はないかもしれません。

(安藤昌季)

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