なぜ「恋愛シミュレーションゲーム」の新作がなかなか出ない? 美少女たちはどこへ行ったのか
マグミクス / 2024年6月24日 21時25分
![なぜ「恋愛シミュレーションゲーム」の新作がなかなか出ない? 美少女たちはどこへ行ったのか](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_239262_0-small.jpg)
■1990年代は恋愛&育成ゲームが人気を博した
1990年代、『ときめきメモリアル』(以下、ときメモ)に代表される「恋愛シミューレ―ションゲーム」が大流行しました。2000年代以降も各社から新作タイトルが発売されてきましたが、2010年代からはスマホアプリと入れ替わるような形で完全に勢いを失ってしまいます。現在、特に男性向けの恋愛シミュレーションゲームの最新作がなかなか出てこない状況です。なぜなのでしょうか。
つい先日、2024年5月18日から19日にかけて、東京の立川ステージガーデンでPCエンジン版『ときメモ』発売から30周年を記念した「ときめきメモリアル 30th ANNIVERSARY LIVE エモーショナル presented by TOKYO MX」が開催されました。当時のキャスト14人が初めて勢ぞろいしたイベントで、30年という時を超え、多くの「メモラー」たちが集結。感動と熱気に包まれた夢のようなイベントは、大盛況のうちに幕を閉じました。
この『ときメモ』が生み出したのが、「恋愛シミュレーション」というゲームジャンルでした。
『ときメモ』に先行したタイトルとしては、ガイナックスの『プリンセスメーカー』やジャパンホームビデオの『卒業 ~Graduation~』、といったPC版のソフトもありますが、100%恋愛を目的とした内容ではありません。
エルフが発売した『同級生』は恋愛シミュレーションの元祖といっても過言ではありませんが、「ビジュアルノベル」としての性格の方がより強いタイトルでもあります。そして18禁タイトルはコンシューマーゲームと比較すると規模が小さい問題もあり、1995年のPlayStation版発売により人気を「爆発」させた『ときメモ』こそが、ジャンルを確立させたタイトルといって良いと考えます。
さて、『ときメモ』の大ヒットを受けて、当時はさまざまなタイトルが発売されました。『ときメモ』と同じKONAMIからは『みつめてナイト』。女性向けとしてはKOEIの「アンジェリーク」シリーズが人気を博し、1998年にNECから発売された『センチメンタルグラフィティ』は、なぜか発売前からグッズ類が飛ぶように売れる、異常現象を引き起こしていました。あの現象は今考えても理由がまったく分かりません。
1999年には『ときめきメモリアル2』も発売され、恋愛シミュレーションの人気はまだまだ続くと思われていました。しかし、2000年を過ぎたあたりから、急速に勢いが衰えていきました。
その理由のひとつが、「ビジュアルノベル」の台頭です。
■ビジュアルノベルの傑作が次々と登場した
TVアニメ化され、「CLANNADは人生」という名言も生まれたKEYの『CLANNAD』 画像はコンパクト・コレクション Blu-ray(ポニーキャニオン)
ビジュアルノベルとは絵と文章を組み合わせた、「見る小説」といえるタイトルです。1990年代半ばからPCで人気を獲得し始め、特にLeafの『雫』『痕』『To Heart』、KEYの『Kanon』『AIR』『CLANNAD』は絶大な人気を有し、両ブランドを合わせて「葉鍵」と呼ぶ文化まで生まれました。
特にこの時期のビジュアルノベルで顕著だったのは、日本最高ランクの文筆家たちが、こぞって参入していた点です。当時はまだ「小説家になろう」などの投稿サイトがない、もしくは立ち上がったばかりの時期でした。そのため、文章で身を立てようと考えた場合、出版社で賞をとり小説家になるか、脚本家スクールなどに通って人脈を作る必要がありました。
しかしビジュアルノベルの台頭により、「文章で生計を立てつつ名を売れる」世界が登場し、多くの若者が身を投じました。そのなかから、「Fate」シリーズの奈須きのこ氏や、『斬魔大聖デモンベイン』の虚淵玄氏など、現在も日本のクリエイティブの世界で第一線を張り続ける才能が登場したのです。笑い、喜び、泣かせ、怒る。感情を揺さぶる傑作の数々は家庭用ゲーム機にも移植され、高い人気を獲得しました。
また、恋愛シミュレーションにとっては、2001年に発売されたPlayStation 2用ソフト『ときめきメモリアル3~約束のあの場所で~』が、「失敗」とみなされたのも痛手となりました。日本で初めてファンド投資を募り、かわいらしいキャラクターの3D演出、プレイヤーの名前を呼んでもらえる「EVS」など野心的な試みが詰め込まれたタイトルでした。しかし当時の主力メディアだった雑誌では写真の紹介となり、最大の魅力であるキャラクターの動きを伝えられないという問題もありました。もし今のように動画を当たり前に使える時代であれば、違った結果が待っていたかもしれません。
恋愛そのものを主題としたシミュレーションは2000年代後半にかけて、その後も『ときめきメモリアル4』や「ラブプラス」シリーズ、Konami以外ではエンターブレインの『キスミス』『アマガミ』や、「オトメイト」ブランドなどの女性向け作品として命脈を保っていいきました。また、2008から2009年ごろからはスマホやブラウザのアプリとして、歌やダンスとからめたタイトルが見られるようにもなりました。
現在、「恋愛シミュレーション」として大いに売り出されるゲームは少なくなったかもしれませんが、まだまだ現役のジャンルとして、今も私たちを楽しませてくれているのです。
(早川清一朗)
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