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問題の『ブラック・ジャック』はどうなる? 実写化の打率高い城定秀夫監督への期待

マグミクス / 2024年6月30日 9時25分

問題の『ブラック・ジャック』はどうなる? 実写化の打率高い城定秀夫監督への期待

■「普通からはみ出た人」に優しく寄り添う作家性がある

 2024年6月30日に放送予定の、手塚治虫先生のマンガを原作としたドラマ『ブラック・ジャック』は、人気キャラクターである「ドクター・キリコ」の「女性化」が放送前から物議を醸しています。大きな改変はもちろん、見た目の「コスプレ感」という、実写化で特に批判されやすい要素が前面に出てしまったのは残念という他ありません。

 朝日新聞で掲載された、プロデューサーの飯田サヤカさんへのインタビューでは、「海外で安楽死をサポートする団体には、なぜか女性の姿が多い印象があった。脚本の森下佳子さんと相談しているうち、『優しい女神』のような存在が、苦しむ人のそばにいて死へと導くのかもしれない、と想像するようになった」という、改変の理由が語られています。

 ただ、それにも原作の「元軍医で死ねないケガ人をウンザリするほど見た」「安楽死を選択肢には入れているが『命が助かるに越したことはない』考えを持つ」キャラクターである、ドクター・キリコにそぐわない、ケアの役割を女性に背負わせる社会のジェンダーバイアスを感じさせて乱暴であるなどと、批判が出ているようです。

 しかし、映像化作品において、事前に批判を浴びたポイントがあったものの、実際に本編が公開されれば一転して好評を得たケースは少なくありません。ドクター・キリコを演じる石橋静河さんが、その演技力や存在感で、事前の不評を覆す可能性もあるでしょう。

 そして、実写ドラマ『ブラック・ジャック』にはとても期待できるポイントがあります。それは、監督を務めたのが城定秀夫さんであることです。彼は近年『女子高生に殺されたい』『ビリーバーズ』『セフレの品格(プライド)』など、コアな人気のあるマンガを原作とした実写映画化作品が、いずれも高い評価を得ています。

 今回の『ブラック・ジャック』で脚本を手がけるのは、ドラマ『JIN-仁-』などで知られる森下佳子さんですが、城定監督は多くの作品で脚本も兼任しています。そして、原作のある作品では特に「原作を大切にしながらも、娯楽としての面白さを優先する」気概が、本人の言葉からもうかがえるのです。

●「作家性を押し出すよりも職人的」な姿勢

 たとえば、毎日新聞運営のサイト「ひとシネマ」の『女子高生に殺されたい』のインタビューでは、城定監督の「作家性を押し出すよりも職人的な作家」としての姿勢が見て取れます。彼は「枠をはみ出してどうやるかでなく、枠組み内で面白くやろうと。毎回求められるものが違う中で、少しでも自分らしいことをする。作家性なんか、見てる人には迷惑かもしれないんで」とまで語っていました。

 その言葉を証明するかのように、城定監督によるマンガの実写映画化作品では、「原作からはなるべくは変えない」「改変するにしても、それは映画として面白くするための工夫」「作品の『核』といえる要素はしっかりと描く」といった、理想的なアプローチができていると感じられるのです。

●『ブラック・ジャック』と相性がいい確かな作家性もある

「作家性よりも職人優先」 な城定監督ですが、一方でその作家性が薄いということはまったくありません。「少しでも自分らしいことをする」とも語っている通り、限られた枠組みのなかで職人に徹しつつ、自分の作家性も打ち出して、映像作品としての面白さや豊かさも生み出すタイプといっていいでしょう。

 筆者個人の思う城定監督の作家性は、「普通からはみ出た人に優しく寄り添う」ことです。原作のある作品でも、オリジナルの作品でも、世間からは「変」と言われてしまうような性質を持つ人や、予想外の出来事に遭遇した人を主人公することが多く、そこから何かをきっかけに人間関係や人生が変わる尊さを、物語や俳優それぞれへの演出から見事に引き出しています。

 その作家性は、『ブラック・ジャック』という作品とも間違いなく相性がいいはずです。無免許で法外な手術代を請求する「ブラック・ジャック」、見た目は幼児ながら中身は18歳の「ピノコ」、そして理不尽な難病や事故のために、違法でも手術を依頼する患者たち……いずれもまさに「普通からはみ出た人」といえます。

 余談ながら、城定監督はいわゆる「ピンク映画」も多く手がけており、R15+またはR18+指定となった作品に限らず、どこか「性の匂い」や、上品なセクシーさを感じさせることも多くありました。今回の『ブラック・ジャック』では、原作の耽美的な魅力や、主演の高橋一生さんの「色気」を引き出すことにも期待できるでしょう。

●「厳しい目線で観ていただきたい」高橋一生のコメント

 もうひとつ期待できるのは、主演の高橋一生さんが、実写ドラマ化決定のニュースの時点で「厳しく観ていただきたい」とコメントしていることです。他にも「『うん、アリだわ』と言っていただかないと、失敗だと思っています」「何よりも自分が思うBJ像を一瞬でも溢(こぼ)してしまいたくありません」と語っており、原作ファンの期待に応えるべく、自身に重い責任があると、覚悟を持って役に挑んでいることが伝わるでしょう。

 だからこそ、その「アリ」のハードルを下回ってしまったようにも見える、ドクター・キリコの女性化への反応が、より残念にも思えてしまうのも事実です。しかし、それでもやはり本編を観てみるまでは、まだ分かりません。

 6月30日の本放送を鑑賞し、高橋一生の言葉通りに「厳しい目線で観て」評価をするべきでしょう。忌憚のない意見や批判を含めた評価もまた、今後のマンガの実写化作品の成功につながるのかもしれないのですから。

(ヒナタカ)

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